第222章:『黄泉の世界』へといざなわれて・・・(3)
駅構内の売店でパンなどを買い、茂はフラフラと『JR中央線』のホームへ。
そして、上野発高尾経由大月行きの電車に乗る。
その行き先は・・・
まだ彼自身にもわからない。
電車が発車し、上野駅構内を出て、西へ向けて走る。
都会の町並みが、だんだんと地方都市のそれに変化してゆき・・・まただんだんと茂の住む矢板市の風景に似たような田園まじりのものに変わっていった。
『高尾駅』。
・・・まだ茂は下車しない。
(もう、病院実習ははじまっているだろうな・・・。いまごろ、Aさんの病棟では・・・ナースステーションあたりでは、俺がこないんで、パニックになっているかもな。いや・・・俺なんかいなくたって、看護師さんがいるし、ちゃんとAさんのケアはやってくれるさ。家にも連絡行ってるころだな・・・。)
ふと、そんなことを考えながら、『高尾駅』のホームに目をやると、リュックを背負った若い男女や、高齢者の団体が移動するのが視界に入ってきた。
「高尾山」への登山客たちだろう。
みんなにこにこして、実に楽しそうな笑顔だ。
(彼らは・・・本当に幸せそうだな。俺は、こんなに暗く、沈んでいるというのに・・・。さて、ここからどうしたものかな。)
列車が動きだした。
いまだ、茂の「目的地」は定まらない。
電車の振動が、小刻みに彼の体を揺らす。
・・・少々、眠くなってきた。
しばしの仮眠をとる茂。
そして彼がつぎに目をさましたとき・・・いつのまにか電車は、終点の山梨県『大月駅』に着いていた。




