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第215章:風俗店『ドルフィン』(2)

 茂は、実に一年半ぶりに葉子と会った。


 母に「参考書代」と偽って、なんとか店の入場料を工面(くめん)した。


 ピンクサロン『ドルフィン』は・・・『パラダイス キャンパス』とは、まったくの別系統の店だった。


 非常に地味な店内。


 流れているBGMも、ユーロビート系の激しいものではなく、なぜか昔の日本の歌謡曲。


 実は茂は・・・この店に足を踏み入れた瞬間から、かつて自分が通いつめていた、小山市の『セブンスター』のような空気を感じていた。


 かつて、柳原まゆみに会っていた、あの風俗店だ。


 この日、ひさびさに葉子からサービスを受けた茂だったが・・・『パラダイス キャンパス』のテーブルに常に置かれていた、「コンドーム」がどこにも見当たらなかった。


 (ひょっとして、この店は・・・!)


 茂の、そのときの「悪い予感」は、のちの葉子とのメールでのやり取りで「当たっていた」ことが判明する。


 ☆  ☆  ☆  ☆  ☆


 『葉子ちゃん、今日はひさしぶりに会えて楽しかったよ。ありがとね。でもね・・・僕、ひとつだけ君に訊きたい事がある。お願いだから、正直に答えてくれ。この「ドルフィン」ってお店・・・もしかして、「ナマ」なの・・・? それとも、「パラダイス キャンパス」のときのように、「ゴム」付けるの・・・まさか・・・付けないの・・・?』


 30分後。


 葉子から返信が来た。


 たったひと言。


 『両方です。』


 「え・・・? りょ、りょう・・・ほう・・・。」


 その瞬間、彼の中で「何か」がこわれた。


 何かが、音を立てて崩れていくのを感じた。


 いままでに、例の『武村事件』の衝撃・ショックというものはあったが・・・それでも、あのときには、「ゴム越し」だった。


 あの当時は、武村に指名されていたとはいえ、「ゴム」が、武村のけがらわしい『モノ』に唇や舌を直接触れさせることなく、一種の「バリア」のように、寸止(すんど)めしていてくれた。


 あの「シールド」のような役割を果たしてくれていた、最後の「砦(とりで)」・・・それがこの店では、葉子の清らかな口・・・舌・・・唇を守ってはいなかったのだ・・・。


 (ついに葉子ちゃんが、男ども・・・どこの誰ともわからない男どもの、おぞましく、生臭(なまぐさ)く、きたない『精液』を直接クチに含んでしまった・・・。葉子ちゃんのクチが、けがされてしまったのだ・・・。)

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