第1章
令和4年10月9日(日曜日)。
一人の男が、机のノートパソコンと向き合って、一篇の小説を書いている。
机の右隅では・・・かつて彼が愛し、いまもときどき思い出しては涙する、最愛の恋人の愛らしい姿が、当時の姿のまま、彼に優しく微笑みかける。
その写真・・・机に飾られた一枚の写真。
親友の女の子と並んで写り、まるで天使のような笑顔で彼にあたたかく微笑みかける彼女は・・・いまは、もういない。
彼・・・杉山茂は、今年、51歳。
あと二十日もしないうちに、52歳の誕生日を迎える。
独身の彼には、年老いた母が、家の同居人だ。
父は、彼が33歳になる前に、糖尿病が原因で他界した。
彼自身も糖尿病をわずらい・・・ちかごろは、目の調子も悪くなっていて、パソコンの文字を読むのも、一苦労。
一時期の「暴飲暴食」のツケを、いまごろ払わされているという構図なわけだが、さいわい、いまはなんとか「目の健康のメンテナンス」はできているようだ。
茂は最近また、昔の恋人の夢を見るようになっている。
その恋人は・・・小学校時代の、まだ少年らしい純粋な心の彼と出会い、別れ・・・感動的な再会を果たしたのち、白血病で、わずか15歳の若さで逝った。
・・・あまりにも早い旅立ちだった。
彼女を永久に失った彼が、悲しみと失意から立ち上がり、前を向いて歩き出して、ほどなく・・・別の女性が彼の前に現れ・・・そんな彼と運命を共有してゆく。
彼・・・杉山茂は、そんな過去をも振り返り、いま、こうしてパソコンのキーボードを叩いている。
そして、その画面には、これまで彼が経験してきた数々の思い出・・・そして、いまは亡き、かつての彼の最愛の恋人「峯岸美絵子」・・・そして、彼の新たな「パートナー」への想いが、切々とつづられてゆくのだった。




