第199章:『S看護専門学校』(7)
バス旅行が終わり、また通常の授業体系に戻った茂たち。
本格的な『看護学』全般の、いわば概論を習得すべく、細かくカリキュラムが決められ・・・一年時には、必要科目をすべて履修する必要がある。
定期的に試験も実施され・・・規定点数に満たないものには、「赤点」として、「優・良・可」のうち、「可」の判定が付されてしまう。
これらの試験は、夏休みのあとの9月に実施されるため、茂や『熊田君』『前田さん』以外の学生たちは、何の試験対策もせずに、日々遊びほうけ、本当に・・・ただ「授業を聞いている」状態だったのであった。
この看護学校では、専門の「看護学」のほかにも、音楽・英語といった、いわば一般教養の科目も、必修となっていた。
英語に関して言えば、学生時代にみっちり鍛えてきた『前田さん』と、やり直し学習で、これまたガッツリ鍛えてきた茂の2名を除き・・・正直言って、中学レベルの英語もあやしい学生ばかりなのだった。
英語の教師は、アメリカ人の「ジョシュア先生」。
当時、たぶん、すでに50歳くらいの、長身のハンサムな男性教師。
日本語も堪能で、少しアメリカ訛りがあるが・・・非常に話せ、しかも、教え方が非常にうまい先生だった。
授業で扱う英文は・・・すべて、医療や看護に関するものばかり。
たとえば、体の各部位の語彙や、病院での、外国人患者に対する質問への受け答えや、典型的なやり取りに関する会話など。
『前田さん』も茂も、英語での日常会話はすでにお手のもの、といったレベルだったので、授業の前や終わりには、先生を交えた3人で普通に英語での雑談を楽しんでいた。
二人とも、それに加えて、よく事前予習もしてきていたので、すっかり先生に気に入られていた。
自分と母語で流暢に、よどみなく話せて、しかも、寝ている不真面目な学生たちを尻目に、まじめに授業も聞く・・・そんな学生を、『ジョシュア先生』がかわいく思わぬわけがない。
当然授業中でも、先生に指されるのは、この二人がいつも中心だった。
しかし・・・『前田さん』はともかく、そんな茂を、遠巻きに見て、面白く思わぬ者も・・・。
(こいつ・・・『前科者』の変態のクセに生意気な。ちょっとばかし英語が出来るからって、ジョシュア先生のお気に入りになりやがって・・・。)




