第181章:『S看護専門学校』(3)
面接室に入った茂の目に飛び込んできたものは・・・横長の机に、並んで座り待ち構える、この看護学校の教員だった。
『面接官』は、3人。
いずれも、当時現役の女性看護師。
もう、この最初の時点で名前を記す。
面接の様子は・・・以下の通りであった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
(コンコン)
杉山茂:「・・・失礼します・」
千葉先生:「どうぞ。」
益子先生:「・・・受験番号と氏名をどうぞ。」
杉山茂:「はい。XX番、杉山茂です。」
副校長:「はじめまして、杉山さん。えー、さっそく伺いますが・・・この看護学校を志望された理由は・・・?」
杉山茂:「はい。私は、国家公務員、工場の派遣社員として働いてきましたが・・・最近、医療・福祉の分野に関心を持つようになりまして・・・。」
千葉先生:「・・・具体的には、医療・福祉のどの部分に『関心』を持たれたのですか?」
杉山茂:「えー、それにつきましては・・・。」
(茂、しばしの沈黙。)
益子先生:「では、質問を変えます。あなたは、もし、この学校にご入学されて、無事卒業されたのちに、どのような『看護師』になりたいとお思いでしょうか・・・?」
杉山茂:「はい。患者さんに寄り添い、優しく、あたたかい看護師になりたいです。」
副校長:「寄り添い、優しく・・・。なるほど。それは、あなたの口から説明されるとしたら、どのような言動のことを指すのでしょうか?」
杉山茂:「はい。たとえば、患者さんが、お食事の際、なにか『そそう』をしたり、食べ物をこぼしたりしたときに、『何やってるの、あなたはッ!』などと、意地悪く怒鳴りつけたりせず、優しく言葉をかけ、決して患者さんを責めたりしないこと。そして、トイレに行こうとして、間に合わず『失禁』されてしまったときにも、同様に、患者さんを責めたりして、気まずい思い、恥ずかしい思いををさせてはならないと考えます。オムツなど交換して差し上げるときにも、『仕方ないなぁ、交換してあげるから・・・』などという、上から目線ではなく、『私といっしょに交換しましょう。』という、そんな優しい気持ちが、一番大切なのではないか・・・このように、私は思います。」
ぶっつけ本番の『即興』とはいえ、茂が、この時点で考えうる、精一杯のこのような、今後の「抱負」ともいうべき長い口上を述べると・・・面接官の3人は、しばらくお互いの顔を見合わせ・・・無事、茂の面接試験は終了となった。
(・・・結果はどうなるか、それはわからない。でも、俺は、精一杯やったよ、母さん。里香ちゃん・・・。)




