第172章:獄中の茂(7)
勾留4日目。
・・・この日、茂の母が、面会にやってきた。
「接見室」で、数日振りに見る、母の姿。
いくぶん、やつれた印象を受ける。
「・・・母さん。」
「茂・・・元気だったかい・・・?」
「心配かけて、本当にごめんよ。俺・・・。」
「何も言わなくていいよ。しっかりとね、罪を償って、それからうちに帰っておいで・・・。」
「ごめん・・・ごめんよ、母さん・・・!」
号泣する茂。
わずか、数分の『接見』であった・・・。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
この日の午後・・・取調べで、茂はこんな質問を、尋問官から受けた。
「杉山さん・・・あんた、今現在、『借金』はあるのか・・・?」
「え・・・? 借金ですか??」
「これも実はなぁ・・・とても重要な取り調べの項目なんだよ。もし君に、返済期限付きの借金があって、その状態で『刑務所』に入ってしまったとしたら・・・その『延滞金』っていうのか、『利子』が雪だるま式に増えていくばかりだからね・・・。」
「借金はありません。ただ・・・」
「ただ・・・?」
「うちの母には、ここのところ、かなりの金を借りてまして・・・。」
「・・・それ、ちなみに、『いくら』ぐらいなんだい?」
「80・・・80万円です。」
「そりゃまた、どうして・・・?」
「・・・・・・。」
「杉山さん・・・どうやら、何か深刻な事情があるようだね。私でよかったら、話してくれないか・・・? なにか、チカラになれるかもしれんからね。」
茂は、小考のあと・・・尋問官に、話すことに決めた。
「・・・実は、私には、『恋人』がおりまして・・・。」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
茂の話をまじめに聞いた尋問官は・・・長考の後、彼にこう告げた。
「・・・杉山さん。はっきりと言ってしまうが・・・私のいままでの人生での経験上、君にとっては、とても『残酷な宣告』をしよう。」
「宣告・・・?」
「その、『中岡葉子さん』とやら・・・その人はね、すでに君には興味も関心もないよ。あるのは・・・」
「あるのは・・・?」
「君を、『指名客の一人』として、確保しておこうという、みにくい『欲望』だな。私に言わせれば・・・実に不愉快で、さもしい『了見』としか、言いようがないね。」
「そんな・・・まさか、彼女が・・・。」
「ウソだと思うんなら、このあと君に会いに来る、『面会客』に注目するんだね。はたして、どうなるかな・・・?」
「面会客・・・ですか・・・。」
茂は、尋問官が語ってくれた内容を、半分理解し・・・半分は聞き流していた。
(面会客・・・面会・・・。)




