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第157章:葉子からの初めての「誘い」・・・よぎる不安

 ・・・時は流れ、2005年9月某日。


 長らく滞って、まるで進展のなかった、茂と葉子との関係に、この日、ようやく「変化」が訪れた。


 葉子が、実に5年ぶりに茂と電話で会話してくれたのだ。


 実は、その電話も、初期にひんぱんに電話していたのは茂の方からで・・・葉子側からは、いっさい電話してくるということはなかったのだ。


 この日茂は、葉子から連絡を受け、U市にある某回転寿司チェーン店の駐車場内にいた。


 ・・・葉子が誘ってきたのだ。


 彼が葉子と電話で5年以上も会話しなかったことは、前にも書いたとおりだが・・・実は二人はこの間、『電子メール』という形でやり取りしていたのだ。


 たしかにメールなら、お互いの生活を乱すことなく、好きなときに返信できるし、電話連絡のように「言った」「言わない」といった、行き違いもない。


 茂は、葉子からの、『しげちゃんへ』で始まるメールを、毎回、心待ちにしていた。


 彼はまた、逆に、『葉子ちゃんへ・・・茂より』の題名で必ずメールを作り・・・本当に『心』を、『愛』を込めて作り、ドキドキしながら送信していたものだ。


 しかし、この『電子メール』というものは、実は茂にとって、しだいに「足かせ」となってゆく。


 このとき葉子は・・・諸事情から、新たに駅東にオープンした『パラダイス キャンパス3号店』に移っていた。


 それを茂が追う形で、引き続き彼女を指名していたわけである。


 また・・・『1号店・2号店時代』には、直接会話で交わす、「来週、また会おうね。」で済んでいたメッセージが、PCや携帯に残る、文字上での「次は、何月何日何時に会おうね。」という、具体的なものに変化してしまってもいた。


 ・・・電話で話せない分、夢中になってメールに、自分の私生活、仕事のグチ、葉子への、今の自分のありったけの『想い』といったことまで、ひたむきに、まじめに書き綴った茂。


 葉子自身も、そんな茂に誠実に返信してくれてはいたのだったが・・・これは葉子が実質上、茂の首に「鈴を付けていた」ということと同じ意味合いを持つものだった。


 今からして思えば、茂と細かく「スケジュール」の事前打ち合わせをすることで、メールという形でもって、彼の私生活を、ひそかに『監視』『管理』していたのかもしれなかった。


「しげちゃんの心が、他の風俗店に向かったり、他の女に行かないように・・・。」と。


 ただし、これはあくまでも「推測」「憶測(おくそく)」の域を出ず、茂自身が直接、当時の彼女から、その「本心」というものを聞いていたわけではない。


 そしてまた茂は・・・葉子が自分に対して、くどいほど「提示」し、『店外デートは店側から禁止されているから、いっさいできない』という理由・大義名分(たいぎめいぶん)のもと、かたくなに外で自分と会おうとしなかった、いままでの流れを思い起こし、今回初めて葉子から「デート」に誘われたという状況に、うれしく思う半面、心の奥底では、どこかいぶかしんでいたのも、また事実である。


 (・・・葉子ちゃん、いったい今ごろ、僕を店外の寿司屋に誘うなんて、どういう風の吹き回しなんだろう・・・? うれしいっちゃ、うれしいんだけど・・・。なんか、ちょっと引っかかるなぁ・・・。)

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