第152章:触れてはならぬ『核心』・・・茂、うっかり「地雷」を踏む
「・・・ねぇ、葉子ちゃん。今日はね、ちょっと君に訊きたいことがあるんだ。」
茂はこの日、ずっと自分が気にかけていた「あのこと」を、葉子に切りだした。
「なぁに、しげちゃん。」
「あのさぁ・・・僕らが会えなかった、あの時期にね・・・一度、どこかで会わなかった・・・?」
「えっ・・・?」
「ほら・・・あそこさ。小山市の『初寿司』っていうお寿司屋さん。あそこで僕たち会ってるよね・・・?」
「・・・・・・。」
「あのとき、葉子ちゃんといっしょにいた人たち・・・あれは、どんな関係の人だったの? 会社の同僚・・・? それとも・・・」
しばし、無言の重苦しい空気が流れる。
やがて、葉子が口を開いた。
「ねえ、しげちゃん。あなた・・・いったい、何の話をしているの・・・? あたし、そんなお寿司屋さんなんて、行ったこともないし、名前だって初めて聞くし・・・。それに、宇都宮に住んでるあたしが、なんで小山市に行くわけ・・・?」
「・・・・・・。」
「しげちゃん、きっと・・・悪い夢でも見たんだよ。勘違い、勘違い。いえ・・・誰か似た人とあたしを間違えているんじゃないのかな・・・?」
茂は思った。
(そうかぁ・・・? だってさ、葉子ちゃん。実際に僕ら、あの寿司屋で会ってるじゃないか。なんで、そうごまかす必要あるのさ?? そんなに触れてほしくない関係の人たちだったのかい、あの連中は・・・?)
彼はまた、柳原まゆみに、夕飯の「マグロの赤身」「甘エビ」「卵焼き」を届けたあと、若い男たち数人が、店で叫んだ茂の行方を追って、暗がりの路地で右往左往している様子を思い出し・・・ますます葉子と、その男たちの関係が気になっていたのだ。
(葉子ちゃん・・・いまだに君の私生活は謎だらけで、僕が知らないことばかりのようだな・・・。でもさ、僕って、もう『彼氏』じゃなかったのかい・・・? 僕ね、君の事、なんでも知りたいんだよ。それなのにさぁ・・・。)
このことがあってから、葉子はまったく電話に出なくなった。
おそらく、触れてほしくない、なにかの『核心部分』に、茂がうっかり触れてしまったのが原因だったのであろう・・・。




