第143章:退職直後の茂、復帰の葉子・・・それぞれの動向
退職してからの茂は・・・手持ちの、最後に出た給料を頼りに、連日のように葉子に会い続けた。
やがて、食糧事務所時代の『退職金』が、100万円余り、茂の足銀の口座に振り込まれた。
・・・たった7年の勤務では、そのくらいの金額が妥当なところなのだろう。
彼はその金のうち、半分を家に入れ、半分を、次の仕事が見つかるまでの、当座の運転資金と日々の小遣い、そしてなにより、葉子に会うための「入場料」にあてた。
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茂が葉子に、新たな趣味として『波乗り』を始めたことを告げると、彼女はうれしそうにこう言ったものだ。
「そっか・・・。いい趣味じゃん、しげちゃん。あとで、あたしにも教えて。もしかしたら・・・ジョニーズの『木村タッキー』と、『久宝静香』みたいになるかもネ。でもね、おっきい波が来たら、あたし、こわいなぁ・・・。きっと、『きゃー!』とか言っちゃって。うふふ・・・。」
こうして、何度か会ったのちに、葉子は茂に、ようやく『連絡先』を教えてくれた。
これまで私生活にかかる部分では、いっさい自分の情報をくれなかった彼女が、少しだけ・・・やっと少しだけ、その扉を茂に開いてくれたのだった。
それは・・・とても心のこもった手紙に書かれていた。
茂は、令和4年11月現在、彼女と別れたのちの今日、この日においても、葉子がしたためてくれた、あたたかいメッセージの書かれたその手紙を、亡くなった峯岸美絵子同様、『たからもの』として、いまもずっと大切に保管し、守っている。
次の章で、初めて読者の皆様に公開するが・・・きっと葉子さんも、そうした私の本当の今の心境、いまだ冷めない『愛』というものを汲み取ってくださり、快く許可してくださるものと信じている。




