第142章:さらば食糧事務所大田原支所
2000年3月31日(金曜日)。
葉子の誕生日のこの日・・・。
茂が待ちわびた、『退職の日』がやってきた。
あいかわらず、睦雄や小森、そして関谷などのウジムシどもが葉子をコソコソ指名していたようであったが・・・彼は、そんなザコどもの未練たらしい「お遊び」など、実はハナっから、どうでもよかった。
ただ、彼は、しつこくこの『たからものⅡ』の中で触れてきたように、なぜか、『武村』という男を好きになれず・・・あの男はどうしたわけか茂にとっては、、なんともいえない、いやらしい面構えをしていて、見ただけで吐き気がし、同じ空気を吸うのもけがらわしい天敵、まがまがしいケダモノ、いや、彼がこの世で最も忌み嫌う、『魔物』そのものだったのだ。
読者の皆様も、そういったような、自分自身にとって「水と油」のようなヤツが、人生史の中に、一人や二人はいませんでしたか・・・?
「特に理由はないが、とことん自分とは合わず、とにかくムシが好かないヤツ、そばに寄り付かないでほしいヤツ」って人が。
残念ながら武村久夫氏は、悪いが、茂にとっては・・・そして、彼の大親友の私にとっても、そういった存在なんですよ、いま現在でもね・・・。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
・・・退職のこの日。
おざなりの最後の業務を終えた茂は、武村や睦雄も含めた支所の全員でもって、入り口で記念撮影をした。
本当は茂は、その写真が後日、自宅に郵送されてきたときには・・・受け取ったその場で、そのような写真など見ずに封筒ごと破り捨ててしまいたい気持ちだったのだが・・・
(もしかしたら、何十年もたってから、そんな『悪い思い出』さえも、『なつかしい思い出』に変わるかもしれないな・・・)
と考え直し、とりあえず、令和の今も・・・あらためてじっくりと見ることもないが、タンスの引き出しの奥に、ほこりがかぶらないように、大切に保管している。
茂は撮影を終えると、4年間世話になった、支所の全員に頭を下げ・・・事務所をあとにした。
もちろん、夜に予定されていた、自分のための『送別会』は、丁重にご辞退申し上げて・・・。
茂はこうして、この『不浄な地』を離れた。
離れれば離れるほど愉快で・・・先行きはいささか不安であったけれども、ともかくも、自分を7年間苦しめ、心にのしかかっていた重しというものもウソのように取り除かれ・・・新しい人生への第一歩を踏み出したのである。
そして、夕方彼は、葉子へのささやかな誕生日プレゼントと彼女への限りない愛を胸に、また『パラダイス キャンパス2号店』へと向かうのであった・・・。




