第141章:かの甘い日々のリスタート(2)
茂が、ふたたび葉子との甘い日々をスタートさせる一方で、食糧事務所大田原支所でも、ちょっとした変化が起きていた。
数日後に退職の日を迎える茂が、ふと「給湯室」に近づいたときのこと。
この支所に、1997年度にアホづらさげて異動してきた「大悪党コンビ」である、武村久夫と鈴本睦雄(← 二重スパイの『うつけもの』)の2匹が、給湯室奥にある、畳の座敷でヒソヒソ話をしているのを耳にしたのだ。
この六畳の座敷は、支所職員のための、昼休みの休憩室になっていたのだ。
「・・・むっちゃんよ、俺、小山支所の小森から聞いたんだけどよぉ・・・『あやちゃん』、戻ってきてるっていうんじゃねえの・・・?」
「ええ、実はそうなんですよ、武村さん。俺もビックリしましたけどねぇ・・・まさか、あの女が戻ってくるとは思いませんでしたからねぇ・・・。」
「だけどよ、むっちゃん。俺よぉ、杉山のヤローに、祭りのときに写真撮られっちったべ・・・? だからよぉ・・・会いに行きたくても、もう行けねえよなぁ・・・。」
「そぉですねえ・・・はじめからあの女が武村さんにフリーでついたわけじゃないんですからねぇ。言ってみれば、横はいりの『反則』だったわけですから。」
「でもよ、むっちゃん。俺よぉ・・・杉山がムカツイてしょうがねえんだよ。『あや』に写真見せられたからにゃあ、俺の『チョンボ』がバレちまったわけだろ・・・? だからよぉ・・・。」
「マジで杉山の野郎、ムカツキますよね! そうだ、武村さん。こうなったら、その腹いせに、あいつの『送別会』で、野郎、ひでえ目に遭わせてやりましょうよ。どうせそのあとは、二度と会うこともないんだし。」
「ははは。それもそうだな。 ・・・さすが、むっちゃん、毎度、悪知恵が働くじゃねえか、なぁ。」
「かかかか。そういう武村さんだって・・・『越後屋、おぬしもワルよのぉ・・・』ってトコじゃないですか?」
それを聞いた茂は・・・あらためて、この「ケダモノども」の会話に戦慄し、その醜い本性に背筋がゾッとし・・・最後の事務所での飲み会・・・すなわち、『送別会』は、当然、ご遠慮させていただくことにした。
(・・・まったく。冗談じゃねえよ、このクソ野郎どもが。もうこれ以上、お前らの好きにはさせねえよ。特に武村・・・てめえにはな!)
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
・・・こんなこともあった。
茂が、大野氏と協力して、武村を「排除」し、あや・・・すなわち葉子に二度と会えないよう対策し、その効果をあげてからの、あるときのこと。
彼が、支所の裏口の重い鉄製の扉を開けようと、取っ手のレバーに手をかけたときのことである。
そのそばにいた例の武村が、なにか物憂げな表情で・・・どこかさびしそうな、悲しそうなうつろな目で茂を見やり・・・いまにも泣きだしそうな、すがるような目で彼を見てきたのだ。
(・・・なんだよ。気色の悪い目で、俺を見やがって。武村め、ざまぁみやがれ! 今度こそ、思い知ったか!! 一度ならず、二度も葉子ちゃんに手を出してけがし、それだけじゃあきたらず・・・コソコソと会うのみならず、チクチクと俺の心をいじめやがって・・・。もう、写真に写った、てめえの『アホづら』を、葉子ちゃんはしっかりと記憶してるんだからな。店にも、二度と来るんじゃねえ! 自宅で、てめえの女房の、『干しイモ』みてえにしなびた乳でも、もみしだいて、まさぐっとれ!!)




