第139章:やはり君だったのか
2000年3月23日(木曜日、先勝)。
この日、茂は、ふたたび『パラダイス キャンパス2号店』へ。
食糧事務所退職の日を8日後に控えた彼は、『みずき』に会うべく、勤務終了後、いそいそと店に向かった。
店内は、そこそこ混んでいた。
・・・多くもなく、少なくもない・・・といったところか。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
いつものように、みずきに『生尺・精飲』してもらい、満足げな表情で、ぐったりとシートにもたれかかる茂。
しばらくするとみずきが別のシートの指名客に呼ばれ・・・茂のシートには、別のホステスがつくことになった。
「あれ・・・?」
暗がりにたたずむ女性を見た彼は・・・思わず、そう言った。
ヘルプで茂のシートに来た、その女性・・・。
「あれ・・・?」
彼女も、茂と同じ文言を繰り返す。
「・・・しげちゃん!?」
「えっ・・・よっ・・・葉子ちゃん!?」
目の前にいるのは・・・4年ぶりに見る、葉子の姿。
いや・・・正確には、3年5ヶ月ぶりになるのか。
茂は、この間、一度だけ『葉子』に会っているのだから・・・。
しかし彼女は、そのことには触れずに、茂に語りかける。
「・・・しげちゃん、元気だった・・・? ね、元気だった?」
「ああ。元気だったさ。葉子ちゃんも、元気そうでよかった・・・。また、こうして会えたのが、うそみたいだよ。」
「ほんとにそうね・・・。あ・・・しげちゃん、みずきちゃん指名してるんでしょ・・・いまは。」
「うん。他に呼べる人いなかったからね・・・ずっと彼女だけを指名して通ってた。」
茂の脳裏にこのとき浮かんだのは・・・まゆみ。
柳原まゆみとの、3年の『蜜月の日々』だった。
しかし彼は、もちろんそのことは、葉子にひと言も告げなかった。
・・・そんな野暮で都合の悪いことなど、こうして3年以上のときを経て、やっと再会・・・いや、『再々会』できた、めでたい日に、言えるわけがない。
茂はそのことを、死ぬまで葉子には黙っていようと決心していた・・・この『たからものⅡ』で、ナレーターを任されている私が書くまでは・・・。




