第130章:茂・・・本物のサーファーになる(2)
茂が最初にサーフィンに挑戦したビーチ、『河原子海水浴場』は、実は初心者には向かない、上級者向けのサーフスポットだった。
彼は、幼い頃から、毎年のように両親に、この海水浴場に連れてきてもらっていたので、サーフィンをやるとなれば、まず。このなじみのスポットが頭に浮かんだのである。
この海水浴場は、夏場のシーズンともなれば、いわゆる『海の家』や、ヤキソバや焼きトウモロコシなどの露店が立ち並ぶ観光スポットとなっていて、地元の茨城県民のみならず、茂のようなT県民などの、東京をはじめとした関東全域からの海水浴客でにぎわう、典型的な『自然の遊び場』となっているのだ。
茂がこの海岸に来た10月は・・・もちろん、海水浴客などひとりもおらず、ただ、ベテランの地元サーファーたちが、ほそぼそとその技を競い合っていた。
なじみのあるビーチだけに、ここで茂は『サーフィン修行』していきたかったのであるが、あまりにも「速い波」「強い横流れ」「沖出し(=リップカレント)」「急に深くなる海底」の強烈な洗礼にさらされ・・・泣く泣く別のスポットに鞍替えを余儀なくされた。
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彼が2番目に選んだ練習場は・・・同じく茨城県の『阿字ヶ浦海岸』。
ここも茂には思い出があった。
やはり幼い頃・・・彼の祖父が元気だった頃に、真っ暗い中出発し、家族・親戚の大勢で、ここへの日帰り旅行をしたのであった。
このビーチは、以前はとても良質な、初心者向きの優しい波が立つ、絶好の遠浅のポイントだった。
しかし、ある年、環境整備の一環として、いわゆる『テトラポット(= 波消しブロック)』が沖合いに投入された影響で、海水の流れが変わり、海底に砂がつきにくくなったため、遠浅だったビーチが、「ドン深」となり、波がきれいにブレイクしなくなってしまったのだ。
それでも彼は、自分の足が立つ浅い場所を見つけ、そこで数時間練習した後に、なんとか「スタンディング」にこぎつけた。
生まれて初めて、サーフボードに立った茂。
「・・・ワーオ! こりゃすげえ!! 腹ばいになってるときと、立ったときって、こんなに『景色』が変わっちゃうんだ・・・。」
茂は、誰に聞かせるともなしに、大声で独り言を叫んでいた。
(立った瞬間もすげえけど・・・なにより、波にうしろから押されて、すーっと流れるときの、あのなんともいえない気持ちよさと、『浮遊感』・・・コレ、俺、マジでハマりそうだわ。ふふふ。)




