第128章:今宵、ダブルの再会(2)
茂が呆然と、その女性の談笑する様子を眺めていると・・・店内に一匹の白ネコが、どこからともなく現れた。
そのネコは、とてもひとなつこく、茂の足元に寄ると、彼の脚に、スリスリしてきた。
(・・・そっか、このネコちゃん、この店で飼われてるようだな。かわいいなぁ。うちにもいま、『ミーたん』がいるけどね、うふふ。 あ・・・帰ったら、ご飯あげないと・・・。)
茂が、自分の家でいま飼っている、オスネコの『ミー』のことを、ふと思い出していると・・・例の『女性』の笑い声が、ひときわ大きくなった。
・・・茂がその様子を、じーっと凝視していても、それには気づいていないように、無邪気に大声で笑い転げている。
(・・・そんなにあいつらの会話って、楽しいのか、葉子ちゃん・・・いや、『葉子ちゃんによく似た人』。僕のギャグの方が、きっと君には面白いはずだよ。でも、まさか、あの輪の中に、見知らぬ僕が割り込むようなキXXイじみたマネも出来ないしなぁ・・・。)
そんな、とりとめもないことを考えながら、足元でじゃれつく白ネコを茂が抱っこすると・・・ネコは、突然、嫌がって暴れだした。
「あぁ・・・ごめんね。僕じゃ、嫌だったか。ほら、おろしてあげるからね・・・。」
そう言いながら、茂がネコを床におろそうと身をかがめると・・・
「すみませーーん。」
例の女性が、突然、座敷の奥から声をかけながら、立ち上がって茂のもとへ、ゆっくりと近づいてきた。
ラフな私服姿で、下にはGパンを履いている。
「ネコ・・・いいですか・・・?」
女性はそう言って、茂からネコを譲り受けて抱っこした。
白ネコは、女性の胸に抱かれると・・・ウソのようにおとなしくなり、女性に抱かれながら、いっしょに奥座敷に戻っていった。
(葉子ちゃん・・・君がどうして、ここに・・・。それに、その人たちは、君の何なの!? そっか・・・会社の同僚・・・きっと、そうだ。葉子ちゃん、民間の会社で働き始めたんだね・・・よかった。 ・・・もう、僕の出る幕じゃないようだな。)
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
座敷に戻った葉子は、そのあとは、何事も無かったように、茂のほうを一度も見ず、ネコを抱いたまま、『同僚たち』と談笑していた。
そうしているうちに、茂が注文しておいたネタがそろい・・・料金を払い、もう一度、葉子のいる座敷の方を見る。
「し・・・しあわせになって・・・葉子ちゃん!!」
茂は、今度は座敷の方を見ずに、いきなり、脈絡もない葉子への『メッセージ』を、店内に響き渡るような大声でそう告げると・・・店をあとにした。
(葉子ちゃん・・・幸せになってね。僕、陰ながら応援してるから・・・。まゆちゃん、いま、お寿司もってくからね。待ってて。)
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
・・・それから数分後。
宮本店長に、まゆみへの『夕飯』を渡して、駐車場の車に乗り込もうとし、ふと暗い路上を見ると・・・さっき、葉子と座敷にいた団体のメンバーとおぼしき、数人の若い男性が、あわてふためいた様子で、何かを・・・いや、『誰か』を探しているように、大声を上げて騒ぎながら右往左往しているのが見えた。
(彼らの『お目当て』は・・・間違いなく、僕だ。ごめんよ、葉子ちゃん。大切な飲み会なのに、変な掛け声で、水を差すようなことしちゃって・・・。でもね、僕は君に、感謝の『エール』を送ってあげたかっただけなんだ。わかってほしい。さようなら、葉子ちゃん。元気でね・・・。)




