第109章:ナレーターが語る、さかのぼったエピソード(12)
武村と礒は、イベント会場の東側のブースにいた。
ご両名とも、実に気色の悪い、卑屈な「作り笑い」を浮かべながら、パンフレットを客に配り、何か解説しているようだ。
そこへ、大野氏が接近する。
何か武村に話しかけている。
そして・・・大野氏が右手を高く天に向かってあげると・・・それを合図に茂が駆け寄り、「使い捨てカメラ」のレンズを武村に向け、夢中でシャッターを切った。
カシャッ!!
・・・作戦は、大成功だった。
あとはコレを、事務所近くの写真屋で現像してもらうだけである。
大野と茂は、作戦遂行の喜びに沸き・・・憤怒の形相でにらむ武村と礒を尻目に、イベント会場から抜け出した。
さいわい、連中が追いかけてくる気配は無い。
「・・・やりましたね、杉山さんっ! これでもう、安心ですよ!!」
大野氏が、息をはずませながら、興奮気味に茂に言う。
「いや・・・大野君。ここからが勝負だ。まず、この写真を確実に現像してもらって、それを『確保』しないといけないからな・・・。」
「えっ・・・? 『確保』って、どういう意味ですか??」
「いいかい、大野君。あの連中の執念深さと、悪知恵の回転のよさを忘れちゃいけない。このネガは・・・入手するまで、けっしてやつらに横取りされないようにするんだ。」
「横取り・・・?」
「とにかく、写真屋へ行こう。さ・・・早く!」
茂は、自分の言ったことの内容がいまひとつ飲み込めない様子の大野を連れ、写真屋の若い女性店員に、こう釘を刺した。
「・・・すみませんが、このネガ・・・そして、現像が終わった写真は、僕本人が取りにくるまで、たとえどんな人間が来ようと、絶対に渡さないでくださいね。そいつが『杉山の使いの者だ』といってお金を払ったとしても、です。」
「え・・・? あ、はい、分かりました。たった一枚ですので、すぐに出来ますから、夕方にでも取りに来ていただければ、まちがいなく・・・。」
「ありがとう。・・・じゃ、夕方、また来ますね。」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
夕方、茂は、大野といっしょに写真をもらいに行ったとき、念のため店員に尋ねてみた。
「・・・誰か、この写真を取りに来た人はいませんでしたか?」
「あ、はい。見えましたよ。」
「中年の男ふたりでしたか・・・?」
「ええ。よく分かりましたね! お知り合いなんですか?」
「うん・・・いや、まったく知らないね、そんな人たち。そうだよね、大野君?」
「はい。僕も、そんな怪しげな人たちなんて、これっぽっちもかかわりはありませんよ。きっと・・・店員さん、悪い夢でも見たんじゃないですか・・・?」
「またぁ、お客さんったら、あたしをからかって、もう。」
「はははは。ごめんなさい。では・・・間違いなく、ネガと写真はもらって行きますね。お世話になりました。」
こうして茂は、いまわしい「魔物」の姿を写した『武器』を手に入れ・・・大野氏の激励をもらい、一路、『パラダイス キャンパス2号店』へと向かったのだった・・・。




