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第104章:ナレーターが語る、さかのぼったエピソード(7)

 ・・・茂は、突然現れた「味方」にとまどい、彼に対する自分の「評価」をいまだ下せずにいた。


 いま、大野氏が述べた、「スパイ発言」。


 これはまた、目の前のこの男自身にも当てはまる、当然の疑惑だった。


 かつて、自分の「噂(うわさ)」を垂れ流しつつも、それを「罪」として認識し、最後にはきちんとけじめをつけ、心からの謝罪をしてくれた、桑川。


 改心し、川原美香への手紙を、茂との約束どおり、封を切らずにそのまま渡してくれた、誠実で優しい桑川。


 ・・・そして、後日、その美香から感謝の手紙をもらった茂。


 「もう一度、人を信じてみよう」と思った茂であったが、ほぼ「初対面」ともいえる、この未知の人物からの話を、そのまま素直に「丸呑み」することはできなかった。


 しかし彼は・・・実は、大野孝に、自分との「共通項」があることにも、それとなく気づいていたのだ。


 ☆  ☆  ☆  ☆  ☆


 「・・・大野君。君の話を聞く前に、僕の質問に答えてくれないか。それはね、僕が人を判断するときに、とても重要な『バロメータ』にしているものなんだよ。」


 「ええ。なんなりと訊いて下さい。」


 「君は今まで・・・特に女の子から、『いい匂いがする』って言われたことはないかい・・・?」


 「えっ! なぜそれを杉山さんが知ってるんですか!?」


 「・・・やっぱりね。君もだったのか・・・。大野君、ひょっとして、『新緑の香りがする』って言われたんじゃないのか?」


 すると大野氏は、一瞬びくっとして茂を見・・・すぐに元の表情に戻ると、言った。


 「驚きましたよ・・・。根岸さんと同じこと言うんですもの。」


 「なに? 根岸さんも、だって・・・!?」


 「そうです。根岸さんも、です。女子に、いつもそう言われてた、って。」


 (驚いたなぁ・・・。僕や理沙ちゃん、それに、亡くなった美絵子ちゃんのお父さんの、功さんだけじゃなかったんだ。きっと、これは・・・。)


 「・・・大野君。僕は、君を全面的に信用するよ。どうやら君には、それだけの『資格』があるということが分かった。ぜひ、君の話が聞きたい。話してくれ・・・。」


 「ええ、もちろんですよ。」

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