第102章:ナレーターが語る、さかのぼったエピソード(5)
一年半ぶりに葉子と再会した茂だったが・・・心中、奥底に「不安」の二文字があったのも事実である。
この新しい店舗で、源氏名を変えて勤務しているとはいえ、この『レミー』を、かつていた1号店における『あや』だと気づく、食糧事務所職員の「野獣ども」がすでに彼女を指名していないという保証など、どこにもなかったからだ。
葉子は、仕事柄、不特定多数の男たちに、コンドーム越しの『サービス』をし、当然、業務上とはいえ、『キス』もする。
その行為それぞれに「愛情」はないとしても・・・やはり、いくら割り切ってはいても、「性行為」は「性行為」である。
それはしかし、茂にとってはまた、初めて入店し、初めて『サービス』を受けたその日から、すでに了承済みの「当たり前の常識」でもあった。
葉子はまた、店内で出会った男が、誰であろうと、暴力や法外な性的要求・・・たとえば、『ナマで咥えろ』とか、『こっそりSEXさせろ』とか、『出したら、ゴムを外して直接、口で清めろ』といった暴言を吐いたりしない以上、名目上、マニュアルどおりの『サービス』をする義務があった。
ではなぜ、この『サービス』という表現になっているのか・・・?
その理由は、これが「必ず、100%ホステスがやらなくてはならない」わけではなかったからだ。
あくまでもそれは、ホステス自身の「心遣い」という位置づけの行為だったためである。
当然、客のほとんどは、この行為を目当てに来店するわけであるが・・・必ずしも、来る客全員が全員、この『サービス』が目当てで入ってくるわけではなかった。
雑談までで、性行為には及ばずに帰る客。
ホステスに会うだけで幸せな気分になり、プレゼントを渡して、すぐに帰る客。
・・・こうした、さまざまなタイプの客が存在していた。
茂はそのことを、葉子本人から1号店に彼女が在籍していた頃から、たびたび聞かされていた。
葉子が疲れている気配の日には、彼は「今日は、サービスしなくてもいいからね。」と告げていたが・・・彼女は、どんなに疲れていても、必ず茂だけには『ナマ』でしてくれて、彼の放出する『分身』を、いとおしそうに飲み干してくれたのだった。
茂自身も、そんな献身的ともいえる葉子を、美絵子以来の『かけがえのない存在』として認め、愛し・・・いずれは彼女にプロポーズして、共に暮らす覚悟だった。
もしかしたら・・・美絵子と茂がついに果たせなかった夢・・・「ともに暮らし、幸せな家庭を築く」という、もう永遠に叶えられぬ夢の続きを、この『葉子』という、美絵子の生まれ変わりのような女性に彼は、心中ひそかに託していたのかもしれない。
「・・・あの続きがどうなっていたのか、俺は知りたい・・・!」
そんな切実な願望も、心の奥底に秘められていたのかもしれない。
葉子に申し訳ないと思いつつも、いつも彼には、葉子の向こう側に、美絵子・・・かつての最愛の恋人の姿が、かすかではあったが、見えていたのである。
(美絵子ちゃんが生きていたら・・・俺と結婚していたなら、今頃はきっと・・・。)




