第100章:ナレーターが語る、さかのぼったエピソード(3)
「・・・しげちゃん?」
あや・・・いや、今は新・源氏名の『レミー』が話しかける。
なつかしい姿。
・・・しかし、以前より、少しやつれた感じも受ける。
「あやちゃん・・・。」
「ひさしぶり、しげちゃん。元気だった・・・?」
「うん。元気だよ。・・・あや・・・いや、『レミー』ちゃんは?」
「・・・なんか、その呼び名、しっくりこないね。いままでどおり、『あや』でいいよ。ところで・・・どうして、あたしを指名できたの・・・? しげちゃんには、まだ教えてなかったのに・・・。」
「うん。実はね、あやちゃん。店長の深沢さんが教えてくれたんだよ。ここにいるからって。」
「そうだったんだ。でも・・・元気そうでよかった。」
「いきなり指名で来ちゃって、ごめんね。・・・ねぇ、あやちゃん。また僕と、仲良くしてくれるかい? いろいろあったけどさ・・・。」
「・・・なんかあったっけ? あたし、なんにも覚えてないけど?? しげちゃん、悪い夢でも見てたんだよ、きっと。しげちゃんとあたしの想い出の中には・・・悪いことなんて、何もなかったよ。だから・・・。」
(・・・やっぱり、あやちゃんは、美絵子ちゃんと何か関係があるな。昔、お盆に再会したときに、まったく同じフレーズのことを、美絵子ちゃんが言ってくれてたっけ・・・。これは・・・ただの偶然じゃないぞ、きっと。何かわけがありそうだ。)
「ね~え、しげちゃん。さっそくだけど、あたし、はりきって『する』から。口に出したら、またいつものように全部飲んであげるからネ。これ・・・しげちゃんだけにしてることなの。・・・ほんとよ。」
「えっ・・・そうなの?」
「うん。ちゃんと言ってなかったけれど・・・あたし・・・しげちゃん以外に、『ナマ』でしたことなんか、一度だってないよ。まして・・・飲んだりしないし・・・。」
(・・・そうだったのか、あやちゃん。ごめんよ、そこまで僕を大切に想ってくれてたのに、あの日、詰め寄ってしまって・・・。本当に、ごめん、あやちゃん。)
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
(・・・あぁ、気持ちよかった。あやちゃんの唇も舌の感触も、やわらかくて・・・そして、あたたかくて。手は相変わらずひんやりとしてたけど・・・それがかえって気持ちよかった。ありがとう、あやちゃん。)
「・・・どう、しげちゃん。気持ちよかった?」
「うん。あんがとね、あやちゃん。」
「でも・・・しげちゃんの『味』・・・なんか、変わっちゃったね。、昔より、ずっと苦い感じ。すごく『濃い』し。疲れてるみたいね・・・。」
「そうだね。とても疲れる環境に毎日いるからね・・・。でも、あやちゃん、また来てもいい・・・?」
「・・・葉子です。」
「え・・・?」
「『中岡葉子』。・・・それがあたしの本名よ。誰にも言わないでね、しげちゃん・・・。」
「もちろん! あたりまえじゃないか。大事なあやちゃん・・・いや、葉子ちゃんに迷惑なんかかけるものか。」
「ありがとう、しげちゃん。信用してるからね。じゃなかったら、『ナマ』でなんかやらないわ。また来てね。」
「・・・うん。来週、また来る。今日は、本当にありがとう。なんか・・・ほっとして涙が出てきちゃった。」
「あたしも。じゃ、お見送りするから、ちょっと待っててね。」
・・・こうして茂は、またあや・・・いやさ、『中岡葉子』という、かけがえのないパートナーと、無事、再会することが出来・・・一年半前のあの甘い日々が、よみがえったのであった。




