第4話 夏向の過去
『夏向!どうしてお前は春樹の様に出来ないんだ!?』
『お兄ちゃんはあんなに優秀なのに、お母さんに恥をかかせないでちょうだい』
(あぁ、これは夢だな)
だって今俺は夏向じゃないんだから。
いつも兄と比べて俺を非難する親なんて居るはずないんだ…。
「…めっちゃ目覚め悪いな」
入学式の翌朝、寮のベットの上でげんなりする。
時刻は起きる予定より1時間も前だった。
「うわぁまだ寝れる時間じゃん、でも二度寝する気にならないしなぁ」
人が居れば『リリア』としての言動は取るが、一人の時ぐらい気を抜いたって良いだろうと、ふぁあと欠伸しながら伸びをする。
寝れないならゆっくり身支度をしようとノソノソと動き出した。
この世界には『魔法具』と呼ばれる道具があり、それがあればガス、電気、水道の様なライフラインが前世の頃と差ほど変わらず使えるから不便を感じた事はない。
俺の部屋は一人用だけど、トイレとシャワーと洗面所、それにお湯を沸かせるぐらいだけど簡易キッチンがあってかなり快適だ。
(大学の寮は風呂とトイレは共同だったもんなぁ)
しみじみとしてると、ふと先程の夢を思い出す。
(これ絶対に昨日の双子の嘲笑で前世を思い出したからだろうな)
厳格な父と教育ママ気質な母、そんな二人に育てられた3つ上の兄、春樹は優秀な息子として期待に応えて皆の人気者だった。
でも俺はそんな兄みたいになれなくて期待に応えられなくて、志望校じゃなくて滑り止めで受けた高校に通いだしてから、両親はもう兄ばかりで俺に見向きもしない。
そんな時に心の支えになってくれたのが、クラスでも可愛くて人気の女の子だった。
『厳しい家の中でも頑張ってる姿を見て、支えになってあげたいって思ったの』
その言葉とその子の存在に救われてたのに。
初めて兄じゃなくって、俺を見てくれる人が現れたと思ったのに。
好きだったのに…。
蓋を開けてみたら、ただただ兄とお近づきになりたくて俺に優しくしてくれただけだった。
(そして昨日思い出した台詞を吐かれたんだよなぁ)
友達と一緒に馬鹿にしたように嘲笑われ、俺の心が限界を迎えてしまい、その後の高校生活はがむしゃらにバイトと勉強を両立して、地元から遠い寮付きの大学に進学して、そのまま就職し実家とはほぼ縁切り状態になった。
あの出来事で俺はリアルでの恋愛にトラウマを抱えてしまって恋愛ゲームにのめり込んだ、必要なステータスを上げ、正しい選択肢を選べば傷付く事なく恋愛が出来るから。
(実家の方も特に帰って来いって言わなかったし、本当に兄だけ居たら良かったんだろうな、多分俺が死んだ報告を聞いても悲しまないだろう)
そう言えばあの部屋、異世界転生トラックが突っ込んできたけど、上の階や両隣の人達大丈夫だったのかな?
(何なら死人(俺)も出たし、本当に迷惑しかかけなかったよなアホ女神)
死人言えば、事切れる前に俺『恋ハピ』のパッケージに手を置いてたけど…。
…いや!考えるのはよそう!トラックが突っ込んでも美少女恋愛ゲームを手放さなかった遺体ってインパクトを救急隊の方々に見せてしまったかもしれないとか、考えないでおこう!
あっちこっちに思考を飛ばしている内に身支度も完了し、食堂も開く時間になったので気持ちを切り替え部屋を出る。
因みに記憶が戻った時に、心は男で身体が女の子で風呂とか着替えどうしようとは思ったけど、戸惑ったのは最初だけで『リリアの記憶』のおかげで『自分の身体』だと認識出来たので直ぐに慣れた。
「おはようリリア嬢」
「おはようございますヴィルティス様」
食堂で早めの朝食を食べて教室でゆっくりしてると、俺を見付けたヴィルティスが挨拶しながらやって来る。
「食堂で見かけなかったけど、朝ごはんちゃんと食べた?」
「食べましたよ?実は早く目覚めてしまって、食堂が開いて直ぐに行ったんです」
(おいおい何だよ?俺と一緒に食べたかったってか?
…いや違う違う!探されたぐらいで喜ぶな!!)
一緒に食べたいとも言われてないだろう!
「もしかして何かご用でしたか?」
「いや、用って程じゃないけど…もし会えたなら一緒に食べようかなって」
(食べたかったんかい!! そして喜ぶな俺の心!!)
このチョロイン属性でヴィルティスの言動に反応しちゃうの何とかしてくれ。
しかしヴィルティスも積極的だな、これはやっぱりルートが存在しているのか?
(いや現時点だと何も断定出来ない、ヴィルティスだってもしかしたら入学式に知り合った人と仲良くなりたいとか、そのぐらいの気持ちかも知れないし)
元が恋愛ゲームだから=で何でも恋愛に結び付けるのは良くないよな!
何とか(無理矢理)納得させて「ではお昼は一緒食べようかと」話していると、鐘の音と共に先生が入って各々席に着いた。
「――では来月から始まる選択クラスの希望書は今週までに提出して下さいね」
そう回されてきた用紙に目を落とす。
魔法学園は通常の授業に加え、文字通り魔法の授業が主にだが、他の分野での授業を選択クラスとして受ける事が出来る。
(もちろんリリアである俺は『薬学クラス』だな)
薬草とポーションの勉強、研究をする為に入学したんだから。
今日中に出してしまおうかと考えると、ふと影が落ちる。
「ヴィルティス様」
「リリア嬢、約束通りお昼に行こう!」
キラキラした笑顔で言われたら断れるはずもなく、そのまま俺たちは食堂へ向かう事となった。
いつも読んで頂きありがとうございます!
書きたい事が簡潔に書けなくて中々ストーリーが進まな〜い!
次回からもっと進展させたい!!(希望)




