第3話 チョロイン属性
「わぁ〜!」
(すっげえ!本当にゲームに出て来た魔法学園そのものだ!)
いや試験の時にも来てたけど、まだ前世の記憶が戻ってない時だったし、こうして実際に見てみると感動するな。
「ふふっリリアったら、前にも来てたでしょ?」
「すみません、ここで本当に学べると思うと感激してしまって」
記憶が戻ってから半年、今日はいよいよ魔法学園の入学式だ。
(正門にもある学園の紋章『恋ハピ』のパッケージやゲームの中で何回も見かけてたし、記憶が戻るキーだったんだろうな)
憶測だけどゲームのストーリーが始まる半年前に前世を思い出すって出来過ぎてるもんな、まぁあのアホ女神の事だから真意は分からんけど。
「それじゃあリリア私たちはここまでだ、頑張るんだぞ」
「体に気をつけて、落ち着いたら手紙を送ってね?」
「はい!お父様お母様、行って参ります」
寮に入る生徒の親は一緒に帰れないから、入学式を見届けた後はそのまま帰路に就く。
なので両親とはここでお別れだ。
(いよいよか…なるべく主人公には近付かないでおこう)
同じクラスだから全く関わらないってのは無理だけど、万が一主人公がリリアに興味を持ってルートに入るのは勘弁願いたい。
(そう言えば創造されて現実になったこの世界でルートって存在するのか?)
会話中に選択肢のウィンドウなんて出てこないし、ステータス表示だってない。
もしかしたら恋愛イベントなんて起こらないで、ただただ学園生活を送るだけかもしれない。
(でも避けれるだけ避けておこう、君子危うきに近寄らずってな)
うんうんと考えながら式が執り行われる講堂へと歩いていく、と「クスクス」とこちらを笑う声が聞こえてギクリとする。
「ねぇローズお姉様、薬草臭い田舎者が由緒正しき学び舎に何の用かしら?」
「あらあらマリー制服を着ているのだから、ここの生徒になったって事でしょう?場違いだとは思うけれど」
クスクスクスクスと嘲笑う双子の姉妹。
(リリアに絡む双子のローズ&マリー!)
リリアの産まれたサルヴィーニ伯爵家が治めるティエラ領は薬草の産地で有名で、自生してる薬草の栽培化に成功しポーションの生産の安定化に尽力した家系だ。
リリア自身も魔法の勉強は勿論のこと、色んな分野に特化したこの学園で、まだ栽培化に成功していない薬草やポーションの研究をする為に入学したんだけど…。
(昔からお父様の仕事繋がりのパーティーとかで、ティエラ領は田舎だとか薬草の勉強をしているリリアを薬草臭いって馬鹿にしてたよなってか)
クスクス嘲笑うのを止めてくれ!前世の嫌な記憶を思い出す!
――クスクスクスクス――
『やだ下沢君ったら気付かなかったの?』
『ウケる、アンタなんか好きになる訳ないじゃん』
どんどん思考が前世を遡る、双子の声が彼女達と重なって動けない。
(やだ…嫌だ誰か…!)
「ちょっとリリア!私達が話しかけているのに無視とは失礼でしょう!?」
「同じ伯爵家でも田舎者だと品位が知れますわね」
俯いて動けなくなった俺に、妹のマリーが掴みかかろうと手を伸ばすのが見えた。
(あっマズい)
しかしマリーの手が俺に届く前に、一人の人物が遮ってくれた。
「レディ達の会話に立ち入って申し訳ない、けどそろそろ講堂に向かわないと式に間に合わなくなるよ?」
(この声!)
プレイ中にいつも聞いていた馴染みのある声、バッと顔を上げて確認する。
(間違いない!『恋ハピ』の主人公、ヴィルティス・バールナー!!)
「それにさっきの会話、とても品位がある内容とは思えないけど?」
(だよなぁ、ってかこの会話!リリアとの出会いイベントじゃね!?)
嫌な記憶に捕らわれかけて失念してたけど、双子に絡まれている所を助けられるこの状況、間違いない!
(近付かないって決めた途端に出会いイベント発生させてどうするんだ!?
双子に絡まれても自分で直ぐ対象すれば良かっただろ!)
しかし助けてもらっているこの状況で、一人だけさっと去る訳には行かない。
内心慌てふためきながら行方を見守っていると、何とか言い逃れた双子が去って行って、ヴィルティスがこちらを振り向いた。
少しクセのある黒髪に、この国では珍しいとされる銀色の瞳に整った顔、恋愛ゲームの主人公なのにキャラ立ってるよな。
(あっ助けてもらったんだから、お礼は言わなきゃ)
「助けて頂いてありがとうございます」
「いや大した事はしてないよ、かなり失礼な事を言われてたみたいだけど大丈夫?」
早く立ち去りたいけど会話を続けられてしまう。
まぁ動揺はしてしまったけど、リリアのイベント回収で何回も見た光景だったし。
「さっきは久し振りに会ってびっくりしただけで、彼女達はいつもあんな感じなので大丈夫ですよ?」
「……君は強いね」
「えっ?」
あんなの何でもないと答えたら、感心した様な笑顔でそう言われてドキリとする。
(ん?何だ今の)
「えっと…?」
「いや何でもないよ、それより講堂まで一緒に行こう、また絡まれたらいけないからね」
その優しさにまた胸が高鳴るのを感じて焦ってしまう。
(何で?何で俺がヴィルティスにときめいてるんだ!?)
俺は女の子が好きなのに!
これはあれか!? 身体の性別に心が引き寄せられるってやつか?
(でもこの半年で男にときめいたりしてなかったぞ!?
もしかして…)
俺が転生したリリアは好感度が上がりやすいチョロインで有名だ。
俺が知る限りでは最速で一年の終業式には恋人になれる。
その簡単さから『恋ハピ』のシステムや世界観を掴みやすくする為のチュートリアル的な存在で、ファンからチョロイン『チュートリリア』って親しまれる程だ、つまり…。
(ヴィルティスに対してリリアのチョロイン属性が発動してるのか!?)
可能性があるならそれしかない!
「そう言えばまだ名乗ってなかったね
バールナー辺境伯家のヴィルティス、これからよろしく」
「サルヴィーニ伯爵家のリリアです、こちらこそよろしくお願いします」
出来るだけ関わらないようにしようとしたのに、自己紹介しあって握手までしたらそうはいかなくなってしまった。
楽しみだった学園生活、波乱の幕開けである。
いつも読んで頂きありがとうございます!
次回は少し夏向の過去に触れてからのスタート予定です。




