第21話 作戦の成果と保存の実験
(う〜ん、めっちゃ見られてるなぁ)
初デートをした翌日、昨日の内に俺の話しが広まったらしく、寮から出た時から多くの視線を感じてしまう。
(まぁこれは覚悟していた事だけど、皆話しかけずに二の足を踏んでるのは髪飾りがあるからだよな)
先日まで着けていなかった、ヴィルティスがくれた銀細工の蝶々の髪飾りが人避けになってくれている。
「おはようリリア」
「おはようございます、ヴィル様」
そこへヴィルティスが挨拶しながら近付いてくると、分かりやすく周囲がざわめいた。
それもそのはず、彼の制服の襟にハニークオーツのラペルピンが着けられているからだ。
「ちょっと、これってもしかして!?」
「そう言えば昨日のお休みに、お二人で手を繋いで街を歩いているのを見かけましたわ!」
「それってデートじゃない!? じゃああの装飾品ってそう言う事なの!?」
「じゃあ恋仲の噂って本当だったのね!」
ザワザワザワザワと憶測を飛び交わせる生徒達に、デート作戦は大成功だなと安堵する。
(さてここからが大事だぞ、アイリス!)
ざわめく生徒達をすり抜けて、アイリスが皆の憶測を確信へと変えるため、タイミングを見計らって俺達の元へやって来た。
「リリア様、ヴィルティス様、ご婚約おめでとうございます!!」
朝の挨拶を交わした後に、満面の笑顔でぶちかました『婚約』の言葉が周囲を硬直させる。
「ありがとうアイリス、でもそんな大きな声だと周りに聞こえて恥ずかしいわ」
「すみません、お二人がご婚約されたのが嬉しくて」
「まぁまぁ、遅かれ早かれ周知されると思うから、そんなに気にしなくて良いんじゃないかな?」
昨日のデートの後にエリザベート達と考えた台詞を交わしながら、硬直したままの生徒達を置いて食堂へと向かう。
「それでご実家の方にはお手紙で報告されたんですよね?」
「えぇ、夏季休暇にはお互いの実家に行って、ご挨拶する予定よ」
食堂でも俺達は注目の的だが、婚約を交えた話しをして信憑性を更に上げていく。
実際に昨日、寮に帰った後に実家に手紙を出した。
自分が加護持ちだと判明した事、色んな所から声がかかったり厄介事を回避する為にヴィルティスに協力してもらって婚約した事、夏季休暇で帰った時に詳しく話すから、それまでに俺に関する訪問者は拒否して欲しい事を書いて送っておいた。
(前回と言い、本当に心配ばかりかけてしまってるよなぁ)
いや今回は俺は全く悪くないんだけね!
でも心配かけている事には違いないからと、エリザベートからキャンベル公爵家が全面的に協力すると言う手紙を添えてくれたのは有り難い。
(婚約の話し、これで寮生達にはだいぶ知れ渡ったと思うから次は通学組だな、エリザベートからの指示の時間ももう直ぐだから、動いた方が良さそうだ)
ヴィルティスとアイリスも同じ事を思っていたみたいで、最後の仕上げをする為に三人で頷き合って席を立った。
(おっ!来た来た!)
約束の時間ピッタリにエリザベート、ジェニーそしてゲイルが校門から入って来るのが見えたから、俺達も偶然を装って近付く。
「おはようございますエリザベート様、先日はお招き頂きありがとうございました」
「おはようございますリリアさん、こちらこそ充実した時間を過ごせて楽しかったわ、またいつでも遊びにいらしてね」
うむ、流れる様な素晴らしいやり取りだ。
周囲も関係性がなさそうな俺とエリザベートが仲良さそうに挨拶を交わし、尚且つエリザベートが自宅へ招いた事実に驚いている。
「あぁそうそう!」
エリザベートがぱむっと軽く手を叩いて、今思い出したかの様に少し声を大きくして注目を更に集める。
「リリアさん、ヴィルティス、ご婚約おめでとう!
二人の友人として、そしてキャンベル公爵家として
祝福するわ」
「おめでとうヴィル、リリア嬢」
「ありがとうございます」
「ありがとうゲイル」
(うわぁ!周りが混乱しながら騒いでるのが聞こえるぅ、後俺と親しくなりたかったであろう生徒達からの視線が凄まじいな)
そりゃあそうだろうな、加護持ちと分かった俺と繋がりたかったり婚姻関係を結ぼうと思ってたら、貴族でもトップクラスのキャンベル公爵家が既に親しくなっていたり、ヴィルティスと婚約済みだって知らされて手も足も出せなくされたもんな。
(本当にエリザベートの英断のおかげで、厄介事に巻き込まれずに済みそうだから感謝しかないわ)
それでも構わず接触しようとする人は出てくるだろうし、ティアメル教会もきな臭いから完全に気を抜く訳にはいかないけど、大勢を相手にしないで済むから負担が少なくなったのはマジで有り難い。
(この騒ぎも時間が経てば落ち着くだろうし、後はなるべく一人にならない様に気を付ければ大丈夫だろう)
「さぁ皆さん!もう直ぐホームルームの時間ですので教室に向かいましょう!」
エリザベートの一声で、その場に集まっていた生徒達がゾロゾロと移動を開始するのを見て流石次期生徒会長だなと思った。
ホームルームではアンジー先生からポイズンラビットの調査がまだ終わっていないので、森での実戦練習は暫く禁止される事と、ティアメル教会がリリア・サルヴィーニを正式に加護持ちだと発表する事になったと伝えられた。
(マジかぁ、加護の力を使ったの一昨日なのに早くない?…あっポーションの実習の後に『教会に報告する』って言われてたっけ)
「数百年に一人の存在である加護持ちがクラスメイトに居ると言う事実に、皆さん興奮したり興味を持ってしまうのも仕方ないとは思います
ですが、サルヴィーニさんは皆さんと同じこの学園に通う生徒の一人であり、一人の人間ですので過剰な接触等を控えて、いつも通りの生活を送って下さいね」
(おぉ!アンジー先生ナイスアシスト!)
恐らくだけど、他のクラスでも同じ事が言われてるのかな?
先生達が明確に釘を差してくれた事で、俺への人避けがより一層強固の物になった。
「――サルヴィーニさん少し良いかしら?」
今日の授業を無事に終えた後、アンジー先生に呼び止められた。
「はい、何でしょうか?」
「試しておきたい事があるの」
そう言ってコトリと空の瓶を数本並べていく。
「…これ、ポーションを入れる瓶ですよね?」
「えぇ、サルヴィーニさんの加護の力をこの中に入れてもらえるかしら?」
(加護の力を入れるって、何の為にだ?)
疑問を思ったのが伝わったのか、アンジー先生が慌てて説明し始める。
「あのね、怪しい実験をするとか高価で売り飛ばそうとか思ってる訳じゃなくて、あっでも実験は実験になるのよね…」
「落ち着いて下さい、何に使うのか気になっただけですから」
目的さえ教えてもらったら協力するからと伝えると、落ち着きを取り戻した先生から、内容が伝えられる。
「これはね、サルヴィーニさんの加護の力が身体から出た後、時間が経っても効力が変わらないかを確かめる実験で、学園側からも許可は出ているから安心してね」
「…つまり、私の加護の力が保存出来るかの確認するのですね?」
成る程、確かに保存が出来れば有事の際に俺が居なくても加護の力が使えるもんな。
「そう言う事でしたらご協力致します」
「ありがとう、では早速お願いするわね」
そうして加護の力が保存出来るのかを確かめるべく、ポーションの瓶に入れようとしたけど、杖から出てくる水を飲み口にそのまま注ぐのが難しく、溢れまくったので一度大きな器に溜めてから瓶に入れ替えると言う作業を増やしてしまったのは、俺と先生の秘密である。
いつも読んで頂きありがとうございます!
次回は教会絡みのお話しになる予定です。




