第14話 お茶会って意外と楽しい
「大丈夫かな?変じゃないよな?」
今日はアイリスが部屋を訪ねて来る日だから、おかしな点がないか確認をする。
部屋の清掃や洗濯物は、学園寮専用のメイドさん達がしてくれていて、綺麗に保たれており匂いとかも問題はない筈なんだけど…。
(この部屋に人が来るの初めてだし、女の子と二人っきりになるんだから、ちょっと緊張するなぁ)
ソワソワと待っていると、扉がノックされた後に「リリア様、アイリスです」と声がかかったので、扉を開けてアイリスを迎え入れる。
「いらっしゃいアイリス、来てくれて嬉しいわ」
「お邪魔致します、少ないですけど焼き菓子をお持ちしました」
おぉ~!流石アイリス、しっかりしている。
今回はお茶会と言う名目だけど、友達二人だけだし私室で行うからキッチリとした感じではなく、ゆる〜くしようとは言ってたんだけどね。
焼き菓子を受け取って部屋の中に案内すると、アイリスもソワソワしながら部屋を見渡している。
(うん分かるよ、同じ間取りでも人の部屋って不思議な感じするよなぁ…でも)
「アイリス、そんなに見られたら恥ずかしいわ」
「わわっ!申し訳ございません!ここでリリア様が生活なさってると思うと感慨深くて」
「ふふっ、怒ってる訳じゃないのよ?」
またペコペコしそうになるアイリスを制して、窓際に置いてある二人用のテーブルセットの椅子に座らせて、お茶の準備を開始するとアイリスが慌てて立ち上がった。
「リリア様!お茶なら私が!」
「駄目よ、今日のアイリスはお客様なんだから座っててちょうだい、それに…」
「…それに?」
「今度ヴィル様にもお茶をお淹れする約束をしたから、味を見てもらいたくて」
ここまで言えばアイリスも諦めざるを得ないだろうと思って言ったけど、何で顔が赤くなってらっしゃるのかな?
「えっ?リリア様がヴィルティス様に?」
「そうなの、アイリスとお茶会するって話しをしたら、俺もリリアの淹れたお茶を飲みたいって…アイリス?顔が赤いけれど大丈夫?」
「そそそ…それって、もしかしなくてもヤキモチなのでは!?」
ひゃ〜!と頬に手を当てて盛り上がっているアイリスに、やっぱりそう取るよなと軽く息をつく。
「ヤキモチと言うより、友達が他の人と仲良くなって拗ねてるって感じだったわよ?」
「でもそんなヴィルティス様の為に、お茶の練習をするリリア様、何て尊い…分かりました!不肖アイリス、リリア様のお茶の味見という大役、しっかりと務めさせて頂きます」
もう大袈裟だなぁ、後何か尊いって言ってなかった?
最初の緊張感は何処へやら、二人分のお茶とアイリスが持ってきてくれた焼き菓子をお皿に盛り付けて、味見をしてもらいながら会話に花を咲かせる。
「リリア様が淹れて下さったハーブティー、爽やかで美味しいです!」
「レモングラスのハーブティーよ、家のメイドに教えて貰っていたのだけど、上手く出来て良かったわ
アイリスの持ってきてくれたクッキーも、とっても美味しい!」
(サクサクとした甘さ控え目のクッキーがハーブティーに良く合うわぁ)
「ありがとうございます!学園の売店で購入した物ですが、お口に合ったようで何よりです」
「売店のお菓子ってどれも美味しいわね、でも学園の外…王都の街のお店も見てみたいけど、アイリスは行った事はあるかしら?」
ぶっちゃけリリアは小さい頃に両親と観光ついでに少し回ったのと、試験の時しか来た記憶がないから街がどんな感じなのかほぼ知らない状態である。
その事を伝えた後、アイリスに聞いてみるとシュンとしながらほぼ俺と同じだと返事が来た。
「私も街歩きとか憧れているのですが、王都とは言え女一人で見知らぬ街をウロウロするのは危険だと思いまして」
「そうよね、せめて街に詳しいとまでは言わないけど、慣れている人と行った方が良いと思うわ」
我々は貴族だから、そのご令嬢が慣れない土地で彷徨っていては格好の獲物だ。
誘拐して身代金とか、奴隷商に売り飛ばすとかあり得ない話しではない。
(だから『恋ハピ』では主人公と一緒に行く事になるんだよな……あっそうか!)
「ヴィル様なら街に詳しいかも知れないから、案内をお願いするのはどうかしら?」
男と一緒なら変なのに絡まれずに済むし、安全に街歩きが出来そうだと提案すれば、アイリスが手と首をブンブン振って断って来た。
「そんな!私がお二人のデートの邪魔をする訳にはいきません!!」
「デッ!? 違うわよ!あくまで街を案内してもらう為だから、デートではないわ!」
確かに『恋ハピ』でも街歩きはデート回が多かったけど、今回は俺とアイリスの案内を頼むだけだから!
(でもこれってアイリスを俺達の噂に巻き込んじゃわないか?)
恋仲の噂が立っている二人にもう一人女の子が加われば、今度は三角関係の噂が出て来てアイリスが大変な目に合うのでは?
(でもヴィルティスと二人で行けば、デートをしたとして恋仲の噂が加速してしまう!)
結局良い案が浮かばず、街歩きの話しはまた今度と言う流れになった。
「そう言えば、明日から選択クラスが始まるのね」
話題を変えようと選択クラスの話しを出すと、アイリスも乗ってきてくれた。
「『剣術クラス』は基礎を学んでらっしゃる方々が殆んどなので、希望者は早い段階から実戦練習に参加出来るそうなんです」
「それって王都の外の森に居る魔物を退治するのよね?アイリスは希望するの?」
「勿論です!父や祖父に鍛えられて来ましたから!」
そう言い切るアイリスは凛々しく見えて頼もしいが、見送る側はやっぱり心配なんだよな。
魔物と言っても基本は恋愛ゲームのステータス上げの為に倒すだけで、言う程脅威ではないけど…。
(もうここはリセットの効かない現実の世界なんだから、もしもの事があってもやり直しなんて出来ない)
でも俺にはアイリスを止める資格なんてないから、彼女の無事を願うしか無いんだよな。
「分かったわ、でも必ず無事で帰って来てね」
「はい!実戦練習の日までに、更に剣技に磨きをかけますね!」
それから『薬学クラス』の話しに話題が切り替わり、おかわり数回目のお茶を飲み終え、窓の外が夕焼けになっている事に気が付くまで、俺達のお茶会は続いたのだった。
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お盆明けから生活スタイルが変わり、更新が少し遅れ気味になると思いますが、作品が出来次第アップして行くので、これからもよろしくお願い致します。




