第10話 魔法の授業
「儂が今日から君達の魔法の授業を受け持つゴードンじゃ、魔法と言うのは身近でありながら使い方を誤れば危険な物じゃが、しっかりと身に付ける事で……」
(どうしてお年寄りの話しってこう長いんだろうなぁ)
学園の校庭で白くて長い髭を撫でつけながら説明をする先生にそんな感想を抱いてしまう。
(後ゲームプレイ中にも思ったけど、そのビジュで学園長じゃないんだな)
失礼だとは思いつつも白髭のお爺ちゃん先生って、学園長のイメージが強いから。
「それでは各自、手元にある杖に意識を集中するんじゃ」
(おぉ!遂に魔法が使えるんだな!)
ワクワクが顔に出ないようにして、杖を構える。
某ファンタジー映画に出てきそうな指揮棒タイプの杖に意識を集中させる。
(先生の説明だと、自分の属性が身体の中から杖に向かって出て来るイメージって言われてるけど)
この世界の魔法は『火・水・土・風』の4種類の属性に別れていて、一人につき使える属性は一つだけだけど4属性を極めると上位属性を使えるようになる。
『火は光』『水は氷』『風は雷』『土は岩石』に変化する。
(リリアは水属性だから、水が身体の中から杖に行くようなイメージで…)
集中していると身体の中からジワジワと、エネルギーみたいなのが上がってくるのが分かった。
(もしかしてこれが魔力か!? 落ち着け!後はこれを杖から出すように流していけば良いんだ!)
腕から杖を持っている手に、そして杖まで……。
――プシャー!――
「……出来た!」
杖の先から水が出て来て感動する。
(これが魔法!ちょっと見た目が水芸みたいだけど、魔法が使えた!しかも何だか水がキラキラしてて綺麗だ)
「リリアも出来た?」
「あっ!ヴィル様も成功したんですね?」
火属性のヴィルティスは、杖の先から少し小さめの火を出している。
(…何だろう、何か凄く見た事がある気がするけど)
棒状の先から火が出るのって…。
(チャッカマンだ!!)
何かせっかく魔法が使えたのに、前世の記憶にある物に例えてしまって、感動が薄まってしまう。
(いやでも初日だもんな!これから特訓して強力な魔法を修得出来れば、そんな事も思わなくなるって)
初期に行うのは自分の中の魔力を外に出す訓練だし、こんなものだろうと周りを見ると、まだ魔法を出せていない生徒に先生が指南をしている。
「リリアの水魔法、他の人と比べて綺麗だね」
「えっ?そうですか?」
ヴィルティスに言われて、近くで水魔法を出しているクラスメイトを見てみると、俺みたいにキラキラしてない。
(あれ?本当だ、じゃあ俺のこのキラキラって何なんだ?太陽の反射じゃないもんな?)
屋外だから陽の光で反射してるのかと思ったけど、キラキラしてるのは俺だけだ。
「既に魔法を出せている者は一端止めるんじゃ、魔力切れになったらいかんからの」
どうなってるんだと考えてると、先生から魔法を止めるように指示が出たので、体内の魔力の流れと共に魔法を止める。
(止めるのも上手くいって良かったぁ!しっかしあのキラキラは何だったんだろう?)
「ヴィル様、私の魔法だけ何か違うんでしょうか?」
「う〜ん、魔力の質は個人で違うって話しを聞いたことがあるけど、先生に聞いた方が確かだと思うよ?」
あ〜確かに火魔法でも基本は赤い火なのに、青い火を出した魔法使いも居たって話しもあったな。
俺のもただ単にキラキラするだけなのかも知れないし。
(先生にも聞きたいんだけどな)
「今日はご指南でお忙しいでしょうし、次の授業で聞いてみます」
まだ魔法を出せなくて必死に先生に教わっているクラスメイト達の目の前で『私の魔法キラキラしてるんですけど、何かご存知でしょうか?』とは聞きに行けないわ。
ヴィルティスも分かってくれたみたいだから、この質問は次回の授業にする事にした。
(今日こそ図書館へ行くぞ〜!)
今日の授業が終了した放課後、前回行きそびれた図書館へ向かう。
(噂はされてるけど進んで俺に何か聞いてくる生徒もいないんだな)
まぁ悪意がないし害もないから大丈夫だと、ゴリ先に呼ばれて一緒に行けないからと心配するヴィルティスを置いてきた。
(まぁ騒動の後だし心配するのは分かるけど、離れてた方が恋仲の噂が収まるのも早いかもだし)
そんな一縷の望みをかけながら図書館へ向かっていると、ドンッと衝撃音の後ドサッと何か倒れる音が聞こえた。
(何だ!? 誰かぶつかった?)
音がしたのは廊下の曲がり角を曲がった先みたいだから、確認しようと近づいてみる。
「うわっヤバいって!」
「だからふざけるなって言っただろ!」
数人の男子生徒が曲がり角からバタバタと出て来て、俺とは反対方向に走って行った。
(うわ〜あいつ等も貴族だろうに、廊下を走るんじゃないよ)
王立魔法学園は、試験にさえ合格出来れば平民でも通う事は可能だが、入学金と学費が高額なのでここに居るのはほぼ貴族である。
因みに魔力を持った平民は、現代で言う塾みたいな所で魔法の訓練や授業を受けれる。
(ふざけ合ってる内にコケて倒れたのか?)
取り敢えず確認だけしようと、あいつ等が出て来た曲がり角を見てみると一人の女子生徒が座り込んでいた。
「えっ?だっ大丈夫ですか!?」
(あいつ等、この子にぶつかってそのまま逃げたのか!? 何て奴等だ!!)
顔をしっかり見とくんだったと思ったけど、先に目の前の彼女を助けなければ。
怪我の確認の為に近付くと、俺の呼びかけに気付いた彼女が顔を上げた。
(えっ?…えぇ~!?)
赤紫色のポニーテールの髪に青紫色の瞳、覚えのあるこの美少女は…。
(リリアと同じ『恋ハピ』の攻略対象の一人、アイリス・グロロッサ!!)
まさかの出会いに固まりそうになるけど、ぶつかられて座り込んでるんだと思い出して、「立てますか?」と手を差し出す。
「えっ?リリア様!?」
アイリスが驚いて俺の名前を呼ぶけど、初対面の筈なのにどうして知ってるんだ?
(まさかアイリスも転生してきた人なのか!?)
「リリア様のお噂はかねがね聞いております
グロロッサ男爵家のアイリスと申します」
(あっそう言えば、今俺って有名人だったわ)
焦ったぁと思いながらアイリスを立たせて、一応こちらも自己紹介する。
「恐縮ですアイリス様、サルヴィーニ伯爵家のリリアです
お怪我はされてませんか?」
「そんなリリア様!私は男爵家ですので敬称も敬語も必要ございません」
確かに伯爵家の方が爵位は上だけど、いきなり呼び捨てで良いのかな?
でも本人が言ってるしなぁ。
そうな事を考えてると、立ち上がらせたのとは逆の手首が赤く腫れてるのに気付いてギョッとする。
「アイリス!? こっちの手って痛くないの?」
俺に指摘されたアイリスが困ったように手首を擦る。
「さっき転んでしまった時に手を突いてしまって、でもこのぐらいなら大丈夫です」
「いえ腫れてるのなら大丈夫じゃないわ!保健室に行かないと」
こっちよと、アイリスを誘導しながら保健室を目指す。
「リリア様!? 何かご用事があったのでは?私は一人でも大丈夫ですので」
「怪我をした人をそのまま置いては行けないわ、暇を持て余していただけだから気にしないで?」
「あっありがとうございます!」
頭をペコペコする度にポニテもぴょこぴょこするのが、めっちゃ可愛い!!
(流石は攻略対象の一人、怪我は心配たけど会えたのは嬉しい!)
いやリリアも可愛いんだけどね、でも俺自身だし…。
仲良くなれたらいいなと思いながら、アイリスを連れて保健室に向かった。
いつも読んで頂きありがとうございます!
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話数が2桁になりました〜!そしてリリア以外の攻略対象の登場です。




