表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/17

8 . 森を抜けた


俺の名はケイリー。今、この呪われていると噂の森の真ん中で、己の運命を呪っているところだ。問題はただ一つ。セーリア様がいなくなっちまったんだ!


さっきまで、あんなに可愛い顔をして果物をおねだりしてたっていうのに。俺の心臓はディスコ状態だったんだぜ。俺の脳内シミュレーションじゃ、二人で遭難して、森の中に愛の小屋を建てて、森の支配者ファミリーとして末永く爆発する予定だった。なのに現実はどうだ? 戻ってみたら、地面に飲み込まれたみたいに影も形もありゃしない。


ガサッ……ボキッ……。……た、助けてくれ……。

「なんだ、今の音?」俺は警戒して振り返った。何かがモンスターに咀嚼されてるような音だ。正直、生まれてこの方本物のモンスターなんて見たことないし、恐怖より好奇心が勝っちまった。


学園の裏山は凶悪な魔獣の巣窟だって聞いてたけど、妙なことに、さっきから牙のある生き物なんて一匹も見かけない。「モンスター共、有給休暇中か?」なんて独り言を言いながら、音のした方へ忍び寄った。


茂みから覗き込むと、そこにあったのは……なんともアンティークな光景だった。モンスターはいない。森の真んで巨大な鉄の檻があり、その中には見覚えのある男が閉じ込められていた。


「助けてくれ……誰でもいい、ここから出してくれ!」檻の中からヘンドリック・ローガン様が叫んでいた。


「おや……これはこれは、高貴なるヘンドリック若様じゃないですか。出荷待ちの鶏のシミュレーション中ですか、若様?」周囲に危険がないことを確認して、俺は近づきながら声をかけた。


「貴様……あのゴキブリ野郎! なぜこんな所に!?」ヘンドリック様は、その惨めな状態でも相変わらず傲慢だった。「早く出せ! モンスター共が戻ってくる前に!」


「正直に言うと、道に迷いましてね」俺は恥も外聞もなく答えた。「でも残念ながらヘンドリック様、出すわけにはいきません。森の芸術的なオブジェだと思って諦めてください。どうせアルドリック様からのお仕置きでしょう?」


「誰が仕置きだと言った!」ヘンドリック様がパニックで叫ぶ。「黒装束の奴らに誘拐されたんだ! だが、俺の凄まじい威圧感のおかげで、檻を噛もうとしたモンスター共は尻尾を巻いて逃げ出したんだぞ!」


「モンスター!? どこに!?」俺はキョロキョロと周囲を見渡した。初めてのモンスターとの対面にワクワクが止まらない。


「え、ええい……貴様がビビるのも無理はないが、安心しろ! この偉大なるヘンドリックがいる限り、モンスター共は近づけまい!」ヘンドリック様は顔を紙のように白くして言い張った。


「でもさっき、鼻水を垂らしながら泣いて助けを求めてましたよね。バッチリ聞こえましたよ」高慢な奴を助ける義理はない。「そんなに凄いなら、自力で出ればいいじゃないですか。じゃあ俺は行きますね、あばよ!」


「待て! 置いていくな!」ヘンドリック様がヒステリックに悲鳴を上げた。「貴様、迷子なんだろ? 俺はこの森の出口を知っている! 地図が頭に入っているんだ!」


「本当ですか? 早く言ってくださいよ!」俺は渋々、檻の鍵を開けた。


外に出るなり、あいつの本性がぶり返した。「フン、下民め! ここでさらばだ。ついてくるなよ、さもなきゃぶっ飛ばしてやる!」


ヘンドリック様は猛スピードで走り去った。俺は呆れてため息をついた。「情緒不安定な貴族様だぜ」だが、俺も馬鹿じゃない。十分な距離を置いてから、こっそり後をつけた。あいつのおかげで、ようやく無事に森を抜けることができた。


魔獣の森だなんて、どの口が言ったんだ? 結局、一匹も拝めなかったじゃないか。「洞窟の中で作戦会議でもしてたんかな」なんて気楽に考えながら、夕暮れ時、俺は家路についた。


家に着いた瞬間、俺の心はバキバキに折れた。俺の藁の城(あばら家)がめちゃくちゃに荒らされている! 誰がこんな酷いことを? 一番の宝物なんて、寝床の藁の山くらいしかないっていうのに。


「おやおや……どこのどいつが、そんな冴えない面して帰ってきたんだい?」

不快な声がした。宿敵(自称)のジョネンだ。


「今度は何の自慢だ、ジョネン?」俺はうんざりして聞いた。あいつは「戦士ウォリアー」の才能に目覚めてからというもの、俺を馬鹿にすることに命をかけている。


「これが見えるか?」ジョネンは一輪の薔薇と、強い香水の香りがする手紙を見せびらかした。「ウィンダからの招待状だ。今夜、彼女の部屋に来てくれってよ。ははは!」

「ウィンダ!? 嘘だろ!」世界が崩壊する音がした。ウィンダはこの村一番の美少女で、俺たちがずっと奪い合ってきた相手だ。「悪夢だ、これは悪夢に違いない!」


「ははは! また俺の勝ちだ、ケイリー! 今夜はゴキブリ共とせいぜい仲良くするんだな、万年独身野郎! さらばだ!」ジョネンは傲慢な足取りで、ウィンダの家へと向かっていった。


希望が潰えた。カメラが完成したら、風呂上がりのウィンダを……コホン、彼女の美しさをドキュメンタリーとして記録したかったのに。この世界じゃ、女の部屋に招待されるってことは、翌日には祭壇に直行するって意味なんだ。


「……まあいい、俺にはセーリア様がいる。あっちの方が千倍美人だしな」

俺は自分を慰めた。そういえば、お嬢様は無事に家に着いたんだろうか。聞きに行きたいが、貴族街は遠すぎる。


……おや? あれはアルドリック様じゃないか? 伝説の英雄が、なぜこんな平民の居住区に?

俺は伝説のじいさんを見つけ、最高に愛想の良い、礼儀正しい笑顔を作った。孫娘さんの情報をくれるかもしれない。


「あ、アルドリック様! こんにちは!」俺は元気に手を振りながら近づいた。「こんな所で何をされて――」

ドォォォォォォンッ!!


突然、視界がひっくり返った。天地が逆転し、腹部に凄まじい衝撃を感じた。次の瞬間、俺の目の前には雲が迫っていた。


(え? 俺、飛んでる?)

大砲の弾のように空を切り裂く自分の体に、俺は困惑した。(硬い所に落ちたらヤバいよな……)


地上では、アルドリック様が電光を帯びた拳を突き出したまま立っていた。彼から見れば、ケイリーは「罪深きニヤケ面」を浮かべて近づいてくる大罪人だ。問答無用。彼は城壁をも崩落させる渾身の一撃を叩き込んだのだ!


市場にいた人々は口をあんぐりと開け、呆然と空を見上げた。一人の青年が伝説の英雄の前から一瞬で消え去り、その衝撃波で周囲の屋台が数軒吹き飛んでいた。


「あの世で責任を取るがいい、このドブネズミ野郎めが!」


アルドリック様は、ケイリーが空中で塵になったと確信し、怒りに満ちた声で吠えた。

ケイリーは、ウェルウィナ史上初の「人間大砲」となった! 果たして、彼はどこに墜落するのか!?

Terima kasih banyak telah membaca karya ini. Bab-bab baru akan diterbitkan setiap hari Sabtu dan Minggu pukul 09.00, dan pada hari kerja pukul 19.00. Terima kasih sekali lagi.

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ