3 . 王室のトイレに潜む厄介者
俺の名はケイリー。現在、運命のいたずらによってウェルウィナ・アカデミーの清掃員を甘んじて受けている。崇高な仕事かって? まあな。だが真の目的は、美少女生徒たちを拝むという純粋な献身……ゲフン、失礼。食い扶持とカメラの材料を稼ぐためだ。背に腹は代えられない、どんな仕事でもこなしてやるさ!
「ちょっと、ケイリー! そこで何してるのさ!」
エミおばさんの甲高い声が響き、俺は飛び上がった。階段の下で一心不乱に床を磨き上げている俺のところに、彼女がドカドカと歩み寄ってくる。「ハエが止まろうとして滑るくらいピカピカじゃないか! さっさと別の場所をやりな!」
ちっ、エミおばさんめ! 俺の編み出した奥義『鏡面床』の真髄がわかっていないな。この床を鏡のように磨き上げれば、完璧な反射によって……いや、その、清掃技術の極致として称賛を浴びるための努力なんだ。
「はいはい、わかりましたよ……」
俺は諦めて返事をした。ここでは彼女がボスだ、従うしかない。
「ちょ、どこへ行くんだい?」俺が歩き出すと、世話焼きなエミおばさんがまた口を挟んできた。
「トイレの掃除ですよ」と、俺は気だるげに答える。
「待ちおくれ! そっちは女子寮のトイレだよ!」エミおばさんが逆方向を指差して叫ぶ。「男子トイレはあっちだ! さっさと行きな!」
「ちぇっ……」俺は落胆の溜息をついた。エミおばさんはいつも俺の忍道を邪魔してくる。男子トイレだと? 汗臭い野郎どもの匂いと、一生拝みたくないような光景が広がっているに決まっている。だが仕方ない、俺は重い足取りで中に入った。
ドアを開けた瞬間――。
「うわっ……なんだこれ!」
一ヶ月間放置されたドラゴンの死骸のような悪臭が鼻を突く! 高貴な貴族の子息たちが集まる場所だと聞いていたが、あいつらのマナーは下水道のゴキブリ以下だ。吐き気を催して逃げ出そうとしたその時。
バタンッ!
「おい……こっちへ来い!」
柄の悪い生徒の集団が、一人の哀れな生徒を引きずり込んできた。その中の一人が俺を鋭く睨みつける。
「おい、掃除屋! 出て行け! 覗くんじゃねえぞ!」
ほう、これは明らかな隠蔽……いや、いじめだな。平和主義者(というか面倒ごとは御免)な俺は、素直に従って外に出た。俺が出るなり、扉は内側から鍵をかけられた。
ドカッ! バキッ! 殴打の音が響き始める。
「あんた、なんで外にいるんだい?」
またしてもエミおばさんが幽霊のように現れた。「掃除は終わったのかい?」
「それが……生徒たちが中に入ってきて、追い出されたんですよ」
俺は薄笑いを浮かべて答えた。エミおばさんがなんとかしてくれるのを期待して。
「何言ってるんだい、仕事は仕事だよ! サボるんじゃないよ! さっさと中に入りな!」エミおばさんが厳しく命じる。
「だったら、おばさんが開けるように言ってくださいよ。俺はただの平民ですからね、恐れ多くて」
俺は、エミおばさんが貴族のガキ相手にどれだけ強気に出られるか試してみることにした。
エミおばさんはドアを激しく叩いた。「ちょっと! 中にいるあんたたち! さっさと開けな! 掃除の人が通るんだよ!」
ドアがゆっくりと開いた。豪華なローブを纏った高位貴族の息子、ヘンドリック・ローガン様が威圧的な視線で現れた。
「私の邪魔をするとは、何者だ?」
「あ……え……ヘ、ヘンドリック坊ちゃん……」
エミおばさんの声が急に縮こまった。彼女の体は激しく震えている。「申し訳ございません……どうぞ、そのまま続けてくださいまし……」
「いや、もう終わった」
ヘンドリック様は冷淡に言い放った。彼は四人の取り巻きを連れ、顔中アザだらけで服をボロボロにされたアルヴィンという名の生徒を引きずりながら出てきた。
「は、はい……お気をつけて、ヘンドリック坊ちゃん」
エミおばさんは震えながら何度も頭を下げて見送る。
だが、ヘンドリック様は俺の前で足を止めた。彼は蔑むような目線で俺を見る。
「ん? お前、あの有名な奴じゃないか。ええと……『ゴキブリ・スレイヤー』、害虫駆除の専門家だったか? ハハハ!」
なんだこいつ? 敵を作るのが趣味なのか? 俺は黙って、持ちうる限りの穏やかな笑みを返した。
「便所掃除とは、お前のような下層階級には実にお似合いの仕事だな」
ヘンドリック様は近づいてくると、まるでペットを扱うかのように俺の頬を無礼にペチペチと叩いた。
「失礼ながら、ヘンドリック様」俺は礼儀正しく、かつ毅然と言った。「その聖なるお手を、私の汚れた体から離していただけませんか? 手にアンモニアの臭いが移ってしまいますよ」
「何だと!? 平民の分際で私に指図するのか!」
ヘンドリック様は止めるどころか、さらに激しく――というか、もはや平手打ちに近い強さで――俺の頬を何度も叩き始めた。
「いえ、そういう意味では――」
「ヘンドリック! いい加減にしたらどう?」
その凛とした声が、言葉を遮った。セーリア様の登場だ! 彼女は鋭い眼光を向けて歩み寄り、その気圧にヘンドリック様の取り巻きたちは怯んだ。
「セーリア様……。なぜ人の楽しみを邪魔なさるのです?」ヘンドリック様は、下卑た視線で彼女の体をなめるように見た。「私との婚約の話、受ける準備はできましたかな?」
「あなたのような方と婚約など、死んでも御免ですわ」セーリア様は嫌悪感を露わにして答えた。「また他の生徒を殴ったと、おじい様に報告させていただきます!」
「私がいつ生徒を殴ったと?」ヘンドリック様は白々しい顔で否定した。「お前たち、私がこの男を殴るのを見たか?」
取り巻きたちは一斉に「いいえ!」と答え、エミおばさんまでもが恐怖のあまり首を横に振った。
「それに、アルヴィン・ロバート君本人に聞けばいい。私に殴られたのか、とな」ヘンドリック様がガタガタ震えるアルヴィンを指差した。
「アルヴィン君、正直に言いなさい。誰に殴られたの?」セーリア様が優しく問いかけた。
その時、俺はセーリア様をまじまじと観察してしまった。その髪、その声……。
(クソッ! 昨日の川の女じゃないか! やばい、もし俺が『森の覗き魔』だとバレたら人生終了だ!)
俺は今すぐこっそり逃げ出そうとした。
だが、一歩踏み出す前に。
「こいつが犯人です!」
アルヴィンが震える指で、真っ直ぐ俺を指差した。「ヘンドリック様は、この狂った掃除屋の暴挙から僕を救ってくださったんです!」
ヘンドリック様は満足げに微笑み、取り巻きたちは嘲笑した。
「えぇっ……何を言ってるんだ!?」
俺は呆然とした。なんだそのデタラメな罪状は?
「明らかに目の前の高慢ちきな野郎が、あんたをボコボコにしたんだろ!」
俺は感情的にヘンドリック様を指差した。
「ほう、今度は私を逆恨みで告発するか、ゴキブリ・スレイヤーよ?」
ヘンドリック様が俺を殴ろうと手を振り上げたが、セーリア様が素早くそれを制止した。
「もう十分です!」
セーリア様が喝破した。彼女は俺を冷たい目で射抜いた――あの川での表情とは全く違う、蔑みの視線。
「あなた、今すぐおじい様の執務室へ来なさい。そこでじっくり尋問しますわ!」
セーリア様は俺の腕を力強く掴むと、そのまま学長室へと引きずっていった。俺はただ口を開けて固まるしかなかった。俺が何をしたっていうんだ? エミおばさんも助けようとせず黙り込んでいる。これが階級の差ってやつか?
ああ、不公平なんて大嫌いだ!
この作品をお読みいただき、誠にありがとうございます。毎週土曜日と日曜日の午前9時、そして平日の午後7時に公開いたします。重ねて御礼申し上げます。そして特に今日は、午前9時50分に新たな章が始まります。




