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2. 伝説の裏側

俺の名はアルドリック・アイアンヴェイル。80年もの間、俺は魔物たちが恐れおののく嵐そのものだった。この大陸において、俺の名は「勝利」の代名詞だ。所持する才能は『レジェンド・オブ・ウォーリアー』。この世に存在する中で最も希少な天賦の才だ。


アカデミーでの初日を今でも覚えている。他の生徒たちがゴブリン一匹に震えていた時、俺はすでに「ゴブリンスレイヤー」の称号を手にしていた。レベルが上がるごとに必要な経験値が3倍に跳ね上がるこの世界――天へと続く階段のようなその道のりを、俺は駆け足で登り詰めた。凡人がレベル2になるのに5匹のゴブリンを要するなら、俺はたった1匹で十分だった。


そして今、俺は世界の頂点に立っている。レベル205。引退した英雄であり、ウェルウィナ・アカデミーの学長だ。


だが、そんな栄光も、たった一人の存在の前では無意味に等しい。俺の愛する孫娘、セーリアちゃんだ。


セーリアちゃんは今、遠く西のアイアンヴェイル本邸から一人でこの街に向かっている。俺と同じ『レジェンド』の才能を受け継いでいるとはいえ、老いぼれの心配性は止められない。俺はこっそり屋敷を抜け出し、彼女の安全を見守るために遠くから尾行していた。

「おっと、あの子、川の方へ曲がったな」

大きな木の影に隠れながら俺は呟いた。孫娘が水浴びを大好きなことは知っている。


「よしアルドリック、ここまでにしろ。孫を覗くようなエロじじいにはなるな。俺はこの半径内で見張りをする。アリ一匹、近づけさせんぞ!」


だがその時、鋭い俺の目が怪しい影を捉えた。一人の男が茂みに潜み、セーリアちゃんがいる川の方を卑猥な目つきで凝視しているではないか。


俺の血が沸騰した。数十年抑えていた怒りが一瞬で爆発する。


「よくも……このゴキブリ野郎が……ッ!」

警告などしない。謝る隙も与えない。

(ライトニング・ストライク!)


心の中で叫ぶ。雷を纏った拳が、男の顔面に直撃した。この技は、古代竜エンシェント・ドラゴンの鱗をも引き裂き、即死させる威力がある。孫娘の誉れを守るためなら、民間人を殺めた大罪人と呼ばれる覚悟もできていた。


ドォォォッ。

静寂。

男は吹き飛ばされない。血も流れない。まばたき一つ、していない。

(何だと……?)俺は焦り始めた。(俺が老いすぎたのか? それとも人間にはスキルが効かないのか?)

さらに俺を激怒させたのは、その視線だ。男は煩わしそうにこちらを振り返った。まるで、夏場の蚊に刺された程度にしか感じていないような顔で。


こいつ、俺を、レベル205の伝説レジェンドであるこの俺を、見下していやがる!

「死ねぇぇぇ!!」


俺は無我夢中で拳を叩き込んだ。全エネルギーを解放する。俺たちの下の地面は砕け散り、周囲の木々は衝撃波でなぎ倒された。奴の体の細胞一つひとつを、塵に変えてやるつもりだった!


だが、やはり……奴は無傷だ。80年の人生で初めて、「絶望」という名の寒気が背筋を駆け抜けた。この男……一体何者だ? アイアンヴェイルの猛攻をかすり傷一つ負わずに耐える魔物など、この世に存在するのか?


息が切れる。スタミナは底をついた。そしてその時、奴が動くのが見えた。聖剣も、古代魔法も使わない。奴はただ……地面に落ちていた乾いた小枝を一本、拾い上げた。


「じゃあな、じいさん……」

パチィィィン!

視界が、一瞬で真っ暗になった。完全なる闇。


大陸の伝説と呼ばれたこの俺が、ただの小枝一本で、気絶したのだ。


「おじい様! おじい様、起きてください!」

セーリアちゃんの声が闇を切り裂いた。ゆっくりと目を開けると、世界がまだ回っているのを感じる。目の前には、不安で顔を真っ青にしたセーリアちゃんが立っていた。


「おじい様、何があったのですか? なぜこんなところで倒れているのです? 誰と戦えば、森がこんなに無残な姿になるのですか!」

セーリアちゃんが矢継ぎ早に問いかける。


「痛たた……」

割れそうな頭を押さえながら、俺は立ち上がった。猛烈な羞恥心が押し寄せる。どうしてあの男を傷つけることができなかった? そして何より恐ろしいのは……奴の顔が思い出せない。ただ、あの猛烈なエロい気配だけが記憶に刻まれている。


「セーリア……お前、体は……体は大丈夫か?」

あの化け物男に指一本触れられていないか確認するため、俺は掠れた声で尋ねた。


「私は大丈夫ですわ」セーリアちゃんは困惑した様子で答えた。「心配なのはおじい様の方です! なぜここにいらっしゃるのですか?」

俺は即座に背筋を伸ばし、すべてが計算通りであるかのような威厳ある表情を作った。小枝で負けたなどと認めたら、学長として、そして最強の祖父としての尊厳が地に落ちる。

「はっはっは! 俺も大丈夫だ、セーリアちゃん! 心配いらんよ」


俺は呻き声に近い無理矢理な笑い声を上げた。「俺は……ここで一人で、集中的な特訓をしていただけだ。老いた英雄とはいえ、筋肉の維持は欠かせんからな!」


「気を失って、森を半分破壊するほどの特訓を?」


セーリアちゃんは疑わしげに片眉を上げた。

「いかにも! 究極の奥義を放った後の猛烈な疲労から、少しばかり……地面で昼寝をすることにしたのだ。いやぁ、実に清々しい! はっはっは!」


「そうですか……。では、街へ帰りましょう」

セーリアちゃんは俺の手を取った。「でも待ってください。私がなぜここにいるのか、おじい様は聞かないのですか?」

俺は頭の激痛をこらえながら、したり顔で微笑んだ。


「はっはっは! ここには涼しい川がある。お前、水浴びをしていたのだろう? おじい様はお前のことなら何でもお見通しだ!」

セーリアちゃんは小さく笑い、疑念は少し晴れたようだ。「おじい様には敵いませんわね」

「当然だとも!」


俺は満面の笑みで答えたが、心の中では激しい呪詛を吐き散らしていた。

(見ていろよ、あの化け物エロ男め……次に出会ったら、貴様のソーセージを切り刻んで、その目玉を抉り出してやる!)

一方、伝説の怒りとは程遠い場所で……。


ウェルウィナの小さな部屋で、ケイリーは真剣な表情で座っていた。目の前には数枚の粗末な紙。彼の手は器用に動き、真ん中にレンズのついた黒い箱のスケッチを描き上げていた。元の世界から持ち込んだ、今や彼の唯一の野望となった代物だ。


「レンズ……凸レンズが必要だ。それと遮光箱……」

ケイリーは熱っぽく呟く。「これさえ完成すれば、俺のフォトコレクションは大陸最高のものになるぞ!」


ケイリーはまだ気づいていなかった。

自分が、世界最強の男に、史上最も深刻なアイデンティティ・クライシスを味わわせたことに。

この作品をお読みいただき、誠にありがとうございます。毎週土曜日と日曜日の午前9時、そして平日の午後7時に公開いたします。重ねて御礼申し上げます。

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