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10 . 緊張が高まっている



その日の朝、アイアンヴェイル邸を照らす陽光は、立ち込める重苦しい空気を温めるにはあまりに無力だった。セーリア様は応接間に立ち、顔色を青ざめさせながらも、不安を隠せない二人の来客を前に毅然とした態度を保とうとしていた。


「アドリアン・メルタディン様、オーディティア・ロバート夫人……早朝からいかがなさいましたか?」

セーリア様の声は、わずかに震えていた。


「アルドリック閣下のお見舞いに参ったのです」アドリアン様が階段を気にかけながら言った。「市場では不穏な噂が飛び交っております。閣下が本当に……倒れられたというのは真実なのですか?」


セーリア様は深く息を吐き、自らの指を固く握りしめた。「おじい様は現在……芳しくない状態でして。寝所から起き上がることすら叶わぬのです」


「左様ですか。せめて一目、お側で祈りを捧げることは……?」オーディティア夫人が探るように尋ねる。


「申し訳ありませんが、それは……」セーリア様は疲れ果てた瞳を伏せた。「おじい様は今、誰とも会いたくないと仰せです。私ですら、言葉を交わすのに苦労しているのですから」


「ふん、白々しい!」


玄関の扉が乱暴に跳ね飛ばされた。ハーランド・ローガン様が、完全武装の騎士団を引き連れて傲慢に足を踏み入れてきた。その手には、不気味な紫色の光を放つ『称号測定の水晶』が握られている。


「あの老いぼれめ、隠れているつもりか!」ハーランド様が嘲笑う。「平民一人を消し去っておきながら、監獄送りを恐れて仮病を使っているのだろう!」


「ローガン様! 言葉を慎みなさい!」セーリア様は、震える体を奮い立たせ、凛としたオーラを放った。


「セーリアお嬢様。貴女の祖父は罪を犯したのだ。私はアルドリック閣下の称号タイトルを更新しに来た」ハーランド様は卑屈な笑みを浮かべ、水晶を高く掲げた。「案ずるな。もしこの水晶が、閣下の手に触れても黒く染まらなければ……『犯罪者』として捕らえることはしない」


セーリア様は唇を噛んだ。罪悪感で精神が崩壊している今のおじい様がその水晶に触れれば、水晶は間違いなく彼を悪人と断じるだろう。「ローガン様……どうか、ご理解ください。おじい様は今、本当にお会いできる状態ではないのです」


「正義の執行を妨げるな、お嬢様!」ハーランド様が吠える。


「お願い……今だけは……」セーリア様は涙を浮かべ、必死に祖父を守ろうと懇願した。


ハーランド様はその真摯な瞳に一瞬気圧されたようだ。「よかろう。三日の猶予をやる。三日以内にアルドリック・アイアンヴェイルが自ら市役所へ出頭し、測定に応じぬならば……私自ら、情け容赦なく引きずり出してやる!」


一団が去った後、セーリア様は崩れるように椅子に座り込んだ。かつては消えてほしいと願ったケイリーだが、今や彼の死は一家を滅ぼしかねない時限爆弾となっていた。


一方、隔離された場末の宿屋では、円卓の上で蝋燭の火が踊っていた。無表情な仮面をつけた黒装束の集団が、円を描いて座っている。


「親愛なる兄弟姉妹よ、こんにちは」ラト-07が口を開いた。「アイアンヴェイル邸を覗いてきた。あの獅子は、自らの恥辱の中で死に体となっているぞ!」


不気味な歓声が部屋を満たす。


「今夜、我らは動く! 獅子はもう、吠えることすらできん!」


「ですがかしら、本隊を待たなくてよろしいのですか?」ラト-71が尋ねる。


「本隊は今夜未明に到着し、そのまま東の城壁を叩く」ラト-07は仮面の裏でニヤリと笑った。「我らの任務は、アルドリックがこの街の地下に隠した『魔界の門』を見つけ出すことだ。そして最も警備が厳重な場所こそが、市役所だ」


「市役所の職員に潜り込んだのは、そのためでしたか……」


「障害はただ一つ、レヴァン・ド・アルビノ様だ。あの街主は人類最強100位以内に数えられる手練れ。だが案ずるな。東の強襲に気を取られている隙に、我らが門を開く!」


その頃、はるか東の村では、暖かい藁の山に太陽が照りつけていた。


「おい! 起きろ! もう昼だぞ、この怠け者!」


リリアちゃんという名の小柄な少女が、忌々しげに藁の山を蹴り上げた。ケイリー君はゆっくりと目を開け、目の前の少女のシルエットに困惑した。


「ふぁ~……。なんで俺の部屋に子供が入ってきてるんだ?」


「部屋だと!? よく見なさい、ここは私の畑よ!」リリアちゃんはケイリーを地面まで突き飛ばした。「さっさと行きなさい、この浮浪者!」


「え? ここ、どこだ?」ケイリー君は頭を掻いた。アルドリックの拳が腹にめり込んだ感覚を思い出す。「ああ、そうだ……。昨日、空を飛んだんだったな」


「飛んだ? あんた、酔っ払ってるの!?」リリアちゃんはさらに激昂した。


「わかった、わかったよ、おチビちゃん。すぐ行くから」ケイリー君が立ち上がる。


「誰がチビよ!? 私はもう大人なんだから!」リリアちゃんがささやかな胸を張った。


ケイリー君はリリアちゃんを頭の先から足の先まで無表情で見つめ、淡々と言い放った。


「いや、どう見ても子供だろ。背は低いし、胸は洗濯板みたいに平らだし、尻は……まあ、紙みたいに薄い。まさに極小ミニマムだ」


「な、なんですってぇぇ!?」リリアちゃんの顔が茹でダコのように真っ赤に染まった。「ブチ殺してやるぅぅ!」


リリアちゃんはピッチフォークを掴み、猛然とケイリーを追い回した。ケイリー君はそれをひらりと避けながら、さらに煽り立てる。「ほら、子供が怒ると本当に怖いな!」


「やめなさい、リリア!」パーカーさんという老人が仲裁に入った。「若者よ、孫の無礼を許してくれ」


「ケイリーと言います、おじいさん。いえ、俺の方が悪かったんです」ケイリー君が礼儀正しく答えると、パーカーさんは微笑んだ。


「礼儀を知る若者は好きだよ。どうだ、家で茶でも飲んでいかないか?」


「茶は嫌いです、おじいさん」ケイリー君がフィルターを通さず答えた。「でも、肉があるならめちゃくちゃありがたいです。遠くから飛んできたんで、腹ペコなんですよ。へへへ」


リリアちゃんは呆然とした。「あんた……本当に羞恥心ってものがないのね!?」


「いいんだよ、リリア」パーカーさんは貴重な肉の蓄えを思い出し、力なくため息をついた。「ケイリー君と言ったか。家には少しだけ肉がある、それで良ければ……」


「おっ、マジですか! さあ、案内してくださいよ、パーカーじいさん!」


ケイリー君は一家の経済状況など露ほども気にせず、陽気に声を上げた。


突如、パーカーさんの表情がフラットになった。仏の顔も三度までである。


「……ならば、立ち去れええ! この図々しい男め! 空気を読めんのか貴様は!」


パーカーさんは驚異的な老人パワーでケイリーを突き飛ばし、ケイリー君は青ざめた顔で逃げ出した。


「おじいちゃん、見直したわ!」リリアちゃんが祖父の背中を叩く。「やっとあんな寄生虫の本性に気づいたのね!」


ケイリー君は再び東の村を彷徨い歩くことになった。だが、そのわずか数キロ先には、「ラト」の本隊が迫っているのだ! 果たしてケイリーは敵軍の「前菜」となってしまうのか? そしてセーリアは三日以内におじい様を救えるのか!?



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