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うちの王子に、夜な夜な異界の女が通って来る 〜だいたい俺のおかげ〜  作者: ダレモール
8章 覚悟の王子と約束の月
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帰って寝よ。




紫の光と共に、レイがユラを抱えて現れる。


その瞬間、


鏡の縁に嵌め込まれていた月光石が、ひび割れる。


小さな音を立てて、砕け散った。


弾かれるように、エリオンは杖を取り落とした。


床に乾いた音が響く。


そのまま、力が抜けたようにその場に座り込む。


「……はあ」


砕けた月光石の欠片が、床に散らばる。


エリオンは、静かな目でそれを見つめた。


その瞳には、かすかな安堵が滲んでいた。





ユラが目を開くと、見覚えのあるレイの部屋だった。


レイは、ユラをそっと下ろして、床に膝をつく。


「えっ、レイ、大丈夫?!」


「ああ……少し眩暈がするだけ」


「大丈夫じゃないやつ!」



すると、端の方で黒いローブが動いた。


「おー、ユラちゃん……相変わらずだな……」


「エリオン?!どうしたの?!」


エリオンは、力なく片手をひらひらと振った。


「ちょっとな」


そして、だるそうに座り込んだまま、ユラとレイを見ると、口元を緩ませた。



「……良かった」


小さく、息を吐くように。



レイも微笑んだ。


「エリオンのおかげだ」

「ユラの元まで、道を繋げてくれた」



「え、そうなの?……二人とも、大丈夫?」



ユラは、まだ状況が飲み込めていなかった。



エリオンは魔術杖を頼りに立ち上がると、ふらふらとドアへ向かう。



「あーー疲れた。帰って寝よ」

軽く手を振る。

「じゃーな」


「え……あ、お大事にね……?」


そして、珍しく徒歩で帰って行った。




「……徒歩で帰ったよ?ほんとに、大丈夫なの?」


「魔力切れは、休めば治る。……エリオンのことだから、すぐに良くなるよ」


「そうなの……?」




レイはふらつきながらも、ユラのそばに立った。


「レイも、休んだ方がいいんじゃない?」


ユラは一瞬ためらってから、続ける。

「……着替えたら?」


ちょっと、名残惜しいけど。



「そうだね。……着替えてくるよ。でも、その前に」


「……ユラの部屋のことなんだけど」


レイは一瞬、視線を巡らせた。


「あ、うん」


ユラが彼を見上げると、綺麗な笑顔が返ってきた。


その目が、少しだけいたずらに細められる。


「まだ、準備が終わってないんだよね。

だから……今夜は、僕と同じ寝室で我慢してくれる?」




な……んだって???


完璧王子が、そんなうっかりする?!




ユラの心は、その後も落ち着く暇がなく。


異世界で初めての、終わらない夜が過ぎていった。




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