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うちの王子に、夜な夜な異界の女が通って来る 〜だいたい俺のおかげ〜  作者: ダレモール
8章 覚悟の王子と約束の月
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俺のおかげ④




夜空には、ひときわ大きな満月が浮かんでいた。


レイの部屋。


鏡の前に、二人の男が立っていた。


床には魔法陣の描かれた布が広げられ、

その中央にエリオンがいる。


手には、普段は使わない長い魔術杖。

耳には、魔力増強のピアスが揺れている。


レイは白と銀を基調とした正装に身を包んでいた。

王家の紋章が織り込まれた外套が、静かに揺れる。


レイはエリオンを見て言う。

「……重装備だな。一人で繋ぐのか?」



「俺にも未知の領域だ。人増やしても邪魔なだけだ」



「よし」


エリオンが軽く言う。


「いつでもいいぞ」





レイは、小さく息を吐いた。


「エリオン、本当にありがとう」



「礼を言うのは早いだろ」



「問題ないと思う」


レイは静かに言う。


「あの時……昼に転移した時も、倒れることはなかった」


一瞬だけ視線を落とす。

そのまま、エリオンへわずかに目を向けた。


「今回はエリオンの道標もある。

僕自身の魔力でも、あの距離は越えられる」


顔を上げる。


「二人で――戻ってくる」



エリオンは肩をすくめた。


「心配いらなかったな」


にやりと笑う。


「お前は“やり遂げる”」


 


レイも、わずかに笑う。


 


エリオンは顎で鏡を指した。


「さあ」


「行ってこい」


足元の魔法陣が、静かに光を放ち始める。

 


レイは目を閉じる。


意識を集中させる。


 


エリオンは、色を失った月光石に魔力を流し込む。


異世界へ続く見えない道を、強引に繋ぐ。


刺すような白い光が、月光石から迸る。


レイは静かに魔力を解き放つ。



その姿は、もうそこにはなかった。


 


 

ーー部屋には、エリオン一人。


 


「意地でも繋いでやる……」


道が途切れないように、魔力を流し続ける。


 


杖を握りしめる。


額には、うっすらと汗が滲んでいた。


 


(絶対、帰ってこい)



その手には、白くなるほど力がこもっていた。




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