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その名は…
いつしか、王都では“異世界恋愛”なるジャンルの物語が流行り始めていた。
無名の小説家が突如発表したその物語は、
ある日突然、異世界からやってきた少女と、その国の王子が恋に落ち、紆余曲折の末に国を幸せへ導く――というものらしい。
奇想天外な展開は人々の心を掴み、やがて貴族子女の間にも広がっていった。
気がつけば、空前の大ヒットとなり、
ついには舞台劇まで作られるほどの人気となっていた。
城の廊下を並んで歩きながら、エリオンが言った。
「無事にじーさん達の理解も得られて――」
肩をすくめる。
「あとは月を待つだけだな」
レイは小さく頷く。
「うん……」
少し間があく。
「……あのさ、エリオン」
「ん?」
「最近、王都で変な小説が流行ってるって聞いたんだけど」
エリオンの口元に、わずかに笑みが浮かんだ。
「ああ」
「『うちの王子に夜な夜な異界の女が通ってくる』だろ?」
レイは足を止めた。
「……」
エリオンは何食わぬ顔で続ける。
「結構面白いぞ」
レイはしばらく無言でエリオンを見た。
(……絶対お前だろ)
エリオンは何も言わなかった。
ただ、楽しそうに笑っていた。




