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選んだ未来




翌日からレイは、ユラを迎えに行く準備に奔走した。


――彼女との約束を、現実にするために。




王太子妃に異世界の女性を迎えるなど前代未聞だ。

国の重臣達を納得させる必要があった。


何度も会議を重ね、そのたびに反論を受けながらも――

レイは、一つずつ言葉を積み上げていった。




「すまないが……この資料をまとめておいてくれるか」


「はい!お任せください!」


側近達を頼ることも増えた。


雑務を増やして申し訳ないと思いつつも、

彼らはどこか嬉しそうに見えた。


一瞬驚いた顔を見せる者もいたが、

すぐにいつもの調子で仕事に取りかかる。


頼られることを、誇りに思っているようだった。




彼女から教わったことは、レイの中で形になり始めていた。






高い天井の会議室。

長い机の周りには、王と重臣たちが座っている。


その中央に、レイは立っていた。


机の上には、分厚い資料の束。


大臣たちはページをめくりながら、静かに目を通している。


そこに書かれているのは、

この国の未来の一端だった。




やがて、一人が顔を上げる。


「殿下。これらは……」


「ユラから聞いた、国の制度をまとめたものです」


レイは静かに答えた。




「例えば――すべての子供が学べる学校制度や、

民の声を反映する議会の仕組みです」


「また、街には随所に警らの拠点が設けられ、

日常の中で治安を維持する仕組みがあると聞いています」


「どれも、我が国で応用可能です」



わずかなざわめきが広がる。


「……本気で、異世界の人間を、王太子妃として迎えるおつもりですか?」


「はい」




レイは、迷わず頷いた。




「これは、私のわがままだと承知しています」


静かな声だった。


「ですが――私は、彼女と共に生きたい」




視線が集まる。


重臣の一人が口を開く。


「前例がありません」

「異世界の女性を、民が受け入れるとは……」


「承知しています」


レイはその言葉を遮らずに頷いた。




そして、机上の資料に手を置く。




「私は、彼女と出会わなければ――」


一拍置く。


「これを、ここへ持ってくることはありませんでした」




会議室が、静まる。




「彼女は、この国の人間ではありません」


「ですが――」


視線をまっすぐ前に向ける。




「彼女が私にもたらしたものは、

この国にとっても、無意味ではないはずです」




言葉は多くない。


それでも、確かな重みがあった。




しばらくして。


年嵩の宰相が、ぽつりと呟く。




「……最近の殿下は、変わられましたな」




別の者が、小さく息をついた。


「以前より……人間味がおありだ」




誰も、すぐには否定しなかった。




それは――


もはや、一人の王子の我がままではなかった。






会議室の視線が、ゆっくりと王へ向く。


王は椅子に深く腰掛けたまま、腕を組んでいた。




長い沈黙。




やがて、王の口元がわずかに動く。




それだけだった。




だが、その場にいた者たちは理解していた。


この国の王は、何も言わない時ほど多くを語る。




もう――


誰も、この話を軽く扱ってはいなかった。




会議は、それで終わった。




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