↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
21/34

俺のおかげ③




転移した先は、城の一角。

魔術師の部屋。


執務机の前で、エリオンは頬杖をついていた。

机には、乱雑に書類が積まれている。


エリオンはレイの姿を見ると、わずかに口の端を上げた。


まるで、最初から分かっていたかのように。


「……来たか」



 


レイはまっすぐ彼を見た。


「エリオン」


短く息を吸う。


「力を借りたい」


 


エリオンはレイをじっと見つめる。


一瞬だけ、沈黙。


ほんのわずかに、目を細める。


そして軽く首を傾げた。


「で?」


口元に、いつものニヤリ。


「お前は、どうするんだ」


 


レイは迷わなかった。


「迎えに行く」


 


「……いいのか?」

「じーさん――宰相達が聞いたら、ひっくり返るぞ?」


 


レイは強い眼差しのまま言う。


「説得するよ」


静かな声だった。


「……ユラに気持ちを伝えた時から、そうするつもりだった。でも、僕が選べば、多くのものを巻き込む。

……決心がつかなかった」


 


エリオンは少しだけ肩をすくめる。


「……まあ、そうだよな」


「今まで積み上げてきたもの、壊すのは簡単じゃない」

「お前の場合は特にな」





「でも、決めたんなら」

「お前はやり遂げるよ」


口元に、いたずらっぽい笑みが浮かぶ。


「――“完璧王子”だからな」


 


レイは、声を出して笑った。





「エリオン」


「お?」


「……ありがとう」


「なんだ突然」


「ずっと僕に言っていただろ。そのままでいいのかって」


「……やっと、わかった気がする。君は、僕の“意思”で生きろって、伝えたかったんだろ?」


 


エリオンは、少しだけ目を細めた。


「おせーよ」


 


 




「で、本題だが。実はもう調べてある」


エリオンは机の上に広げられた星図を指差す。


「二ヶ月先の満月だ」


「星の並びが一番いい。月の力を借りて繋ぐなら、そこしかない」


 


レイは静かに笑った。


「さすがだな」


エリオンは肩をすくめる。


「まあ、調べたのは俺じゃなくてルシアだけどな」


「君の副官か」


「そ。優秀だろ」


 



エリオンに促され、二人はレイの部屋へ向かった。


窓から差し込む月明かりが、静かに鏡を照らしていた。

 

エリオンは、灰色になった月光石を眺める。


「……魔力が尽きたんだな」


 


もう、世界を繋げる力はない。


レイは、わずかに息を詰めた。


 


「ユラの家の鏡にも、これと似た石がついていると言っていた」


「それはラッキーだ」


 


エリオンは、月光石を軽く指で弾く。


「おそらくこいつが、片割れを覚えてる」


レイがわずかに眉をひそめる。


「……どういうことだ?」



エリオンは肩をすくめた。


「一度繋いだ相手の気配は、石に残る」


「何度も行き来してるなら、向こうの位置はもう掴んでるはずだ」



(最初に結んだの、俺だけどな)


「俺がユラちゃんの世界まで道を繋ぐ。

お前はその道を辿って、向こうの石に転移しろ」



そこでエリオンは、レイを見た。


「そんで、ユラちゃん連れて戻ってこい」



肩をすくめる。


「と言っても……帰りは二人分の転移だ。

どれだけの魔力を食うかもわからない。王太子がやるには危ない橋すぎる。

……それでもやるか?」


 


「当然だ」



その答えに、もう迷いはなかった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。