二人の精霊王 1
どうしても神獣クラウンラビットの封印の場に、みんなと一緒に行きたいぼくは、光の森に現れたであろう光の上級精霊さんとお友達になってしまおうと企む……じゃなくて、お友達になってくださいとお願いするために、兄様とダイアナさん、光の上級精霊がいる方へ白銀にダッシュしてもらった。
ぼくが走ったら遅くなるので、白銀の背中に跨って走ってもらいます。
安全のため、紫紺の魔法でシートベルトみたいな黒い紐を作ってもらい、ぼくと白銀の体をグルグルと縛りつけたから大丈夫!
「俺……なんかイヤな予感がする」
「ちょっと、やめてよ。アンタの勘って当たるのよーっ」
大丈夫! あそこにいるのはぼくの優しい兄様と、ぼくとお友達になる予定の光の上級精霊さんです。
ぱあぁぁっと明るい森へ向かって、レッツゴー!
んゆ?
白銀の超高速タクシーで向かった明るい場所には、確かに兄様とダイアナさんと知らないお兄さんがいましたが……兄様が虐められている?
「アンタたち、ヒューになにしてんのよっ!」
ぼくと白銀があり得ない状況にポカンとしている間に、紫紺は素早く風の魔法を繰り出し、ダイアナさんと知らないお兄さんを兄様の上から吹っ飛ばした。
なんで……ダイアナさんと知らないお兄さんが倒れた兄様の上に乗って顔がくっ付くほど近づいていたの?
はっ! そんなことはあとで聞くとして、いまは倒れている兄様の安全確保が大事です!
「にいたまぁ~」
てとてとと全速力で走るぼくの横を、颯爽と走っていったのは白銀。
紫紺は四肢に力を入れて、ダイアナさんと知らないお兄さんを睨みつけています。
「大丈夫か、ヒュー?」
ぺろりと兄様の頬を白銀が舐めると、瞑られていた兄様の瞼がピクピクと動きました。
「にいたま!」
どうして、こんなところで寝っ転がって、ダイアナさんと知らないお兄さんに襲われていたのかわからないけど、大丈夫? ケガしてない?
「……っ、あぁ、だ……大丈夫」
二、三度瞬きした兄様は、ノロノロとした動きで立ち上がる。
「ヒュー、ダイアナたちと何があった? ありゃ、光の精霊か?」
「う、うん。そうだよ。光の上級精霊ソールだ。なんか、よくわからないんだけど……ダイアナは僕とウィル殿下の中に、彼らの主である精霊王がいるって言うんだ。しかも、その眠りを覚ますって僕を襲ってきた」
ぼくたちに話しているうちに頭の中の整理ができたのか、兄様の瞳の光がしっかりとしてきて、ちょっと怒った顔になりました。
んゆ?
兄様とウィル殿下の中に、精霊王さまが眠っている?
その精霊王さまを起こすために、ダイアナさんと光の上級精霊ソールさんが兄様を襲った……襲わないと起きられないの?
「ええーっ! お前たちの中に眠ってんのか? 精霊王の依代ってお前たちのことだったのかー? あ、イテ」
バシン! と紫紺が尻尾で白銀のお尻を叩きました。
「前に話したでしょう? 気が付かなかったの? このバカ犬! それにしても、ヒューの中の精霊王を起こすのに、そんな乱暴な手段を取るとは思わなかったわ」
ズザザーッと走って滑り込んできた紫紺が、白銀への攻撃と同時に感想も述べるという器用なことをした。
「にいたまのなか、せーれーおーさま、ちってた?」
「ええ。ダイアナが誰かの中で精霊王を眠らせて、回復を早めるって話をしていたわ。あいつはその器としてウィルに近づいたのよ」
ウィル殿下はエルフの先祖返りで魔力が多く、王族の血は精霊たちにとっても馴染みがいいそうだ。
「えっと……。ひかりとやみの、せーれーおーさま」
水、火、土、風の精霊王さまとは会ったから、あとは光と闇の精霊王さまだけ。
んっと、ダイアナはウィル殿下にべったりと一緒にいたから、闇の精霊王さまはウィル殿下の中で眠っているのかな?
「はっ! しょうだ! ウィルさまくろいかみ、やみのせーれーおーさま!」
ウィル殿下はブリリアント王族でも珍しい黒髪なんだ。
きっと、闇の精霊王さまと馴染みやすいんだ!
だったら、兄様はキラキラの金髪だから、光の精霊王さまが兄様の中で眠っているのかな?
「痛いわね、紫紺! 何してくれんのよ!」
あ……紫紺の風魔法で遠くに飛ばされたダイアナさんと光の上級精霊ソールさんが戻ってきた。
当たり前だけど、ダイアナさんはものすごく怒っている。
「アンタたちがヒューに馬乗りになってるからでしょ。ヒューの中に光の精霊王がいるなら、もっと丁寧に扱いなさいよ」
フンッと紫紺が顔を二人から背けると、ダイアナさんはニヤァとイヤな笑い方をした。
「あら、ヒューの中にいるのが光の精霊王だって、誰が言ったの?」
え? だって……兄様の髪はキラキラの金髪だし、兄様の魔法属性の中に光属性があったし……。
ぼくは、パチパチと瞬きをして、こてんと首を傾げた。
「あれれ? ずいぶんとかわいい子がいるね? ぼく、お名前は?」
ぼくの前に光の精霊ソールさんがしゃがんで、ツンツンと人差し指でぼくの頬を突いた。
「ふみゅ。や……やめてーっ」
ツンツンツンツンツンと連続で突かれて、ぼくは兄様の背中に隠れる。
「弟に何をする」
バッと両腕を広げてぼくを守ってくれる兄様、かっこいい。
「……僕にはあなたの命令はききませんよ? だって僕は光の上級精霊ソール! ぼくが忠誠を誓うのは光の精霊王さまお一人! そんなことは、貴方も重々御存知のはずですよね、闇の精霊王さま?」
へ? 兄様の中にいるのが闇の精霊王さまなの? なんで?





