最後の精霊楽器 3
光の森へ精霊楽器を探しに行くことになりました。
ダイアナさんは入り口までは連れていってくれるけど、森の中はぼくたちだけで行動しなきゃダメみたいです。
「アンタ、なんか企んでるんじゃないでしょうね?」
紫紺が牙をキランとさせてダイアナさんににじり寄るけど、ダイアナさんはニヤリと笑って消えてしまった。
どうやら、転移で王都へ帰っていってしまったようだ。
「はああっ、結局、光の精霊とその契約者の情報は何も聞けなかった」
兄様がガックリと肩を落とすと、セバスが転がっているアルバート様をゲシッと蹴った。
「アルバート様が闇の上級精霊様に喧嘩を売るからですよ。……弱いのに」
ボソッとセバスが酷いことを言う。
「今度の楽器はなんだろうな?」
とっても強い白銀は未知の場所など関係ないと余裕の表情で、興味を精霊楽器に移した。
「そうだな……。そもそも見たこともない形の楽器もあったから、想像がつかないね」
兄様が楽器と聞いて思い浮かべた楽器は、ピアノとかヴァイオリンとか優美な楽器だと思います。
たぶんシエル様のことだから、自分が見慣れた楽器を作ったんだと思うよ?
ということは……精霊楽器って日本の楽器なのかな?
えっと……笛が二つあって、鈴でしょ? 琴とギターの大きくて丸いやつ。
日本の楽器ってあとなんだろう?
腕を組んで首を傾げてウンウンと唸っていると、兄様がひょいとぼくの体を抱き上げた。
「とにかく、父様に報告してこよう。光の森なんて聞いたこともない精霊の森に行くって……許してくれないだろうなぁ」
「んゆ?」
でも、神獣クラウンラビットの封印に必要なことでしょ?
だったら大丈夫だよ!
むふんと自信溢れる鼻息をもらし、兄様と一緒に父様へ報告に行って……めちゃくちゃ反対されました。
父様に反対されて怒られて泣かれて、ようやく光の森へ行くことを許してもらいました。
今回は父様やセバス、騎士団のみんなと一緒に行くことはできないから、心配されてしまったのです。
だって、父様は精霊と契約してないでしょ?
光の森に入って、うっかり迷子になったら妖精に生まれ変わってしまうんだよ?
ダメです! とっても危険です。
でも、ぼくたちは大丈夫!
精霊と契約してるも~ん。
……チルとチロは妖精だけど、ダイアナさんは何も言ってなかったから、たぶんセーフ。
白銀たちも創造神様がお創りになられたから、大丈夫。
危険なのは父様たちです。
なので、お留守番決定です。
光の森に行って楽器を探すのは、ぼくと兄様と白銀たちとアリスター!
あと、父様が血の涙を流してお願いしてきたから、アルバート様も一緒てす。
今回はリンたちはお留守番なので、兄様はアルバート様の冒険者仲間であるミックさんやザカリーさんから、アルバート様が暴走しないように見張っておくよう注意を受けてました。
リリとメグにお出かけの用意を頼まなきゃ!
ルンルンとスキップをしながら、自分の部屋へと向かいました。
僕は火の中級精霊を胸に抱いているアリスターへ目配せをして、レンとは別の方向へ足を向けた。
使われていない小部屋に入ると、しっかりと扉を閉める。
「どうしたんだ、ヒュー」
「……ちょっとね。ところで、このままだと神獣の封印に僕が同行できないことに気づいてる?」
そう、アリスターは精霊の契約者として役目があり、本人の意思は無視して神獣の封印に協力することが決まっている。
他にも、プリシラやドロシーが協力することになってしまったし、アルバート叔父様は……まぁ、しょうがない。
ウィル殿下もダイアナの契約者として協力するだろう。
正しくはウィル殿下とダイアナの間に契約は成されていないが。
「ヒューが同行しないって、お前……怖気づいたか?」
アリスターが懐疑的な目でこちらを見てくるが、そんな訳ないだろう。
不愉快な気持ちを表すべく、アリスターの足を踵で思いっきり踏んでおく。
「イテーッ!」
「バカか。僕は水妖精のチロと契約しているが、精霊の契約者ではない。……父様にお前たちの護衛の騎士として同行を許可してもらえるよう頼むが……難しいだろうなぁ」
父様が騎士団の団長という重職に就いているわりに、僕たちには過保護で困ってしまう。
正式な騎士だったら無理も言えるけど、僕はまだ騎士見習いの立場だ。
「そうか……。精霊の契約者じゃないと厳しいな。それだったらレンと同じで白銀様たちと一緒に来ればいいじゃん」
腕を頭の後ろで組んで軽く言う親友に、僕は冷たい一瞥をくれてやった。
「レンだって留守番に決まっている。どんなに頼んでも、今回ばかりは白銀たちだって連れて行かないよ。それだけ危険なことなんだから」
特に、神獣クラウンラビットが再封印の前に目覚めてしまったら、神獣聖獣同士の闘いになる。
レンを守る余裕などないから、連れていくことはできないと考えていると思う。
これが、瑠璃か琥珀がレンを守るために一緒にいれば別だけど、両名とも世界の平和のため、今回は見守るだけにすると決めている。
「……で、何を考えている?」
僕のことがわかってきている相棒は、やや悪い顔で尋ねてきた。
「光の森は精霊の森。なら……僕が精霊と契約することも可能だと思う」
そう……僕も精霊と契約して、プリシラかドロシーと交代してしまおうと画策しているのだ。
他の精霊と契約することに渋い顔をするチロはすでに説得済みだ。
必ず、光の森で精霊と契約し、神獣クラウンラビットの封印に参加するんだ!





