最後の精霊楽器 2
ダイアナさんが告げた「光の森」は、白銀たち神獣たちも知らない秘密の森みたいです。
わああぁぁっ、秘密の森なんてワクワクするよね!
その森のことも知りたいけど、ここでダイアナさんへ質問タイムが始まりました。
精霊と契約していても、実際、過去の封印に参加したのはダイアナさんと会ったことのない光の精霊さんのみ。
んゆ? 光の精霊さんは参加していたのかな?
「つまり、あなたたちの質問に答えればいいのね? 答えられるものは教えてあげるわ」
クイッと顎を上げて足を組んだダイアナさんは、ニッコリと笑いました。
ゾゾゾ……なんか、怖いような?
「まず、俺からだな。この精霊楽器……演奏者によって形が変わると聞いたが、変わらないんだけど?」
アリスターが小さいウクレレを片手に、胡乱げな目つきでなぜかぼくを見る。
「あら、それは簡単よ。ここにある精霊楽器は、レンが触れてしまって少し変質したの。つまり……精霊楽器にレンの魔力が入って固定してしまったのよ。だから、レンが触って形を変えなければそのままね」
……ぼくのせい?
アリスターが口の端をヒクヒクとさせて、ぼくにウクレレを押し付けてきます。
や~め~て~。
「アリスター、やめろ。大人げない。いいじゃないか、魔力を込める魔道具だとでも思えば、形なんてどうでも」
「……この楽器を鳴らす俺の姿を見て笑っている奴が言うな!」
ぼくにはちょうどいい大きさでも、アリスターが持つと玩具みたいだもんね。
「レンまで笑うな!」
「ご、ごめんなしゃい」
びゃあっ、怒られた!
「ふざけないで。次は誰かしら?」
ダイアナさんの睨みにぼくたちは口を噤んで体を縮こませた。
「あの……封印された神獣様の場所までの移動は?」
プリシラお姉さんとドロシーちゃんが不安そうな顔で質問した。
「移動は転移ですぐよ。私とレオノワールでかなりの人数を移動させることができるわ」
「できるけど、桜花にも協力してもらえば、騎士団も移動できるわよ?」
紫紺が苦々しい顔で提案する。
なんで、そんな顔をしているの?
……ダイアナさんに協力するのがイヤなのかな?
もう、仲良くしないとダメだよ。
「ホーリーサーペントね。いいわ。ところで、封印の前にレオノワールとホーリーサーペントは私の転移で砂漠に連れていくわよ?」
「……しょうがないわ」
もしかして紫紺、ダイアナさんと二人でおでかけするのが気まずくて桜花も誘うことにしたのかな?
「それで、期間はどれぐらい?」
ドロシーちゃんが恐る恐る尋ねると、ダイアナさんの片方の眉がピクリと上がった。
「それは、こっちの神獣と聖獣に聞いてちょーだい」
フンッと顔を背けてしまうダイアナさんに、質問したドロシーちゃんの顔色がサァーッと悪くなっていく。
違う、ちがうよ、ダイアナさん。
ドロシーちゃんは自分がいない間、セシリア先生が何かしでかさないか、不安なだけなんだよ。
「最後は俺だな。おい、闇の上級精霊さんよ、お前の親玉はどこにいるんだよ」
ダンッとお行儀悪くテーブルの上に足を乗せて、アルバート様が攻撃的にダイアナさんへ凄んで見せたけど……。
「何をやっているんですか」
ビシッとセバスの手刀で後頭部を叩かれていました。
……セバスの前ではマナーを守らないとお仕置きされるよ?
「そうねぇ、そろそろ話すべきかしら? でも今日はウィルを連れてきてないのよねぇ。だから、その答えはあ・と・で」
ダイアナさんはパチンとアルバート様にウィンクをしました。
が、その途端、藻掻きだしたアルバート様はコロリと椅子から転げ落ち、ゴロゴロと転がり続けます。
はわわわ、どうしたの?
「ダイアナ!」
「すぐに治まるわよ。我が君に対する不敬で少し懲らしめただけよ」
クスッと笑うとダイアナさんは、白銀たちを視線で呼び寄せた。
「なんだよ」
「……光の森には、人だけでは辿り着くことができないわ。今回は私が道を開くけど、森の中では神獣聖獣であるあなたたちが守らないと……最悪、人としての命は終わってしまうわ」
んゆ? 人としての命?
「それって、光の森は精霊の森。つまり、精霊以外は禁足地ってこと?」
紫紺が思わずテーブルの上に飛び乗って、ダイアナさんと向き合う。
「ええ。私たち精霊、妖精はいいけど、人はダメよ。かろうじて神に創られたあなたたちは大丈夫。人としての命が終わるけど、妖精として生まれ変わることはできるわよ? 生まれ変わった姿はそこの水妖精みたいになるわ」
ぼくと兄様は兄様の肩に乗り、ずっとダイアナさんを威嚇していた水の妖精チロを見る。
ちなみにぼくの友達である水の妖精チルは、今日もどこかへお出かけ中です。
「精霊の契約者は、契約した精霊を連れていれば大丈夫よ。だから、アリスターは同行できるわね」
「……もちろんです。俺はヒューバート様の従者です」
キリッとした顔でアリスターが言い切り、それを聞いた兄様のお顔がちょっと嬉しそうに見えた。
「はい! はい! ぼくもいく!」
ここでもちゃんと主張しておきます。
じゃないと、置いていかれるので!
「ええ、レンは必ず光の森へ来てちょうだい」
ニコリと優しく笑うダイアナさんが、今日一番怖く感じるのはなんでだろう?





