確認しましょう 9
さて、ぼくがみんなと一緒に砂漠に行って、神獣クラウンラビットを封印するお手伝いをするために、光の精霊の契約者にならなければなりません。
困ったことに神獣聖獣である白銀や紫紺は精霊さんたちと仲が悪いので、ぼくのお願いを叶えてもらえなさそう。
白銀たちが張り切って光の精霊を探そうとしても、相手は白銀たちのことが嫌いだから姿を隠してしまいそうだもの。
なので、光の精霊を探すのに、白銀たちの力を借りることはできないかなぁって。
じゃあ、誰に助けてもらうの?
まずは……兄様かな。
「え? 光の精霊を探したいって?」
「あい!」
そうです。
そして、ぼくが光の精霊の契約者になっちゃうのです!
でも、兄様の反応は微妙……。
「光の上級精霊はダイアナが探してくるって話でしょう? 僕たちが勝手に探すのはどうだろう?」
眉をちょっと下げて困った顔をしていますが、この顔の兄様は絶対にぼくのお願いを聞いてくれないときのお顔です。
むうっ。
「でも、でもね。せーれーさん、わりゅいひと、つかまってりゅ」
道化師の男が精霊を捕まえて悪いことに利用しているかもって、話してたでしょう?
「可能性はあるけど……それも、ディディたちに頼んで各属性の精霊王さまに調査を頼んでいるから大丈夫だよ」
なんてこった!
兄様の働きが早すぎる!
いつの間に、精霊王さまたちに調査を依頼していたの?
これでは、精霊王さまから「精霊が悪い奴に捕まっているみたいだ。助けて」と報告があるまで、動けないじゃないか!
むむむ、最初の作戦は失敗です。
ぼくは、兄様に背中を向けてトボトボと歩き出しました。
背中に、戸惑うような声で兄様に名前を呼ばれたけど、ごめんなさい。
ぼくの作戦が兄様にバレると反対されるので、内緒です。
ちなみに父様と母様とセバスとアリスターにも内緒です。
リカちゃんはどうしようかなぁ。
あとで、こっそり教えちゃおうっと。
「あ? なんだって?」
むしゃぁと骨付き肉にかぶりついているアルバート様に光の精霊がいるかも? って場所を知らないか訊いたら、ものすごく怪しまれた。
「ひかりのせーれーしゃん、あいたいでしゅ」
それで、できれば契約者になって、みんなと一緒に封印に行きたいです!
「光の上級精霊は例の闇の上級精霊が連れてくるんじゃなかったでしたっけ?」
リンが揚げたイモを摘まみながら首を傾げる。
「そうそう。ダイアナが連れてくるんだから、大人しく待ってろ」
う~ん、やっぱりアルバート様たちは頼りにならなかったか……。
じゃあ、次は……。
「おいおい、レン。なんだその、期待してないですってスンッとした顔は?」
んゆ? ぼくってば本音が顔に出てた?
ペタペタと自分の両手で顔のあちこちを触っていたら、ギャハハハとお酒を飲んでいるミックさんが大笑い。
「そんなことしたら、アルには期待してないって白状してるつーの」
バンバンとテーブルまで叩きだしたミックさんは大丈夫だろうか? 飲み過ぎでは?
「こらこら。ミックはちょっと水でも飲んで。アルも子どもをいじめない」
ザカリーさんがムスッとしたアルバート様を嗜めてくれて、飲んでベロベロのミックさんに水の入ったコップを差し出す。
「ところで、レンはどうして光の精霊を探したいんですか?」
「んゆ?」
しまった! そこまで考えてなかった!
正直に理由を話したら……アルバート様たちも反対するよね?
ううん、困ったぞ。
「あ、まさか、道化師の男が精霊たちを捕まえているって話ですか? もしかして、レンは精霊たちを助けようって思ってます?」
「……っ、う、ううん」
ザカリーさんのとんでもない推理に、ぼくはブルブルと頭を勢いよく左右に振った。
それでも、疑う眼差しが迫ってくるので、ビューンと走って逃げだした。
アルバート様たちはぼくが神獣クラウンラビットの封印に一緒に行きたいって言っても反対はしないと思うけど、父様たちには黙っててくれないもん。
バレる前に、そら逃げろ―っ!
あのあと、セシリア先生のところにも行ったし、ユージーン様にも会ったけど、光の精霊を見つける方法も、捕まった精霊ほ助ける術もわからないままだった。
むしろ、ぼくが光の精霊についてあれこれと聞くから、みんな不思議そうな顔をしていたっけ。
このままだと、あちこちからぼくが光の精霊を探しているという情報が兄様の耳に入っちゃう!
「むむむ。おこられる」
兄様は怒らないけど、怒るときがある。
それは、ぼくを心配しているときだ。
きっと、封印するときに一緒にいたいって言い出したら、兄様は心配する。
心配するから、一緒に来ちゃダメだっていう。
でも、一緒にいたいから光の精霊を探しだして契約したい……って考えるって兄様が知ったら、ものすごく怒られる。
だから。絶対に兄様には内緒で光の精霊と契約しなきゃ!
ぎゅっと右手を握って決意を新たにしていると、騎士団の訓練場からすごい早さでこちらに走ってくる人がいる。
キラキラの金髪を風になびかせて、長い手足を動かしてこちらに来るのは……ヤバい! 兄様だ!
「レーンーッ! 今度は何をしようとしているのーっ!」
ひーっ、もうすでに、ちょっと怒ってるよーっ。
チトパタと手足を動かして、ぼくも走ります。
もちろん、兄様とは反対方向に!
「待ってー、レーン!」
ごめんなさい、待ちません。
「よいちょ、よいちょ」
うえ~ん、足が早く動いてくれないよーっ。
「レン! そんなに走ったら、転んじゃうよー!」
大丈夫だもんっとムキになったら、足と足がぶつかってグラリと体が傾ぐ。
「うわ、うわうわ」
転んじゃうーっと目を瞑ったら、ポスンと柔らかいなにかに包まれたよ?
「あらあら、レンったら、危ないわよ?」
柔らかいなにか、それは……久しぶりに会う、闇の上級精霊ダイアナさんだった。





