確認しましょう 8
ドロシーちゃんはセシリア先生に土の中級精霊チャドのことと、神獣クラウンラビットの封印に精霊の契約者として自分が砂漠に行くことをちゃんと報告していた。
自分が不在のときのセシリア先生が心配で、今からセシリア先生にドジを踏まないように教育しようと思ったらしい。
そうなったら、協力者はセシリア先生と結婚したセバスしかいない! とドロシーちゃんはセバスにも自分が神獣クラウンラビットの封印に行くことになったことを報告した。
セバスはその報告の中にあった、力を増幅する歌い手にピンとくるものがあったらしく、春花祭の事件で歌で子どもたちを誘導していたキャロルちゃんに声をかけた。
レイフさんと母様の協力のもと、キャロルちゃんは魔力をのせて歌うと、その歌声にある種の魔法効果がかかることが判明したのだった。
「……そんな報告は僕は受けてないけど?」
若干、兄様が不満そうに呟き、キャロルちゃんが歌い手さんだと確定してしまったことを嘆くアリスターは、まだ落ち込んでいる。
その歌い手さんの役目、ぼくが代わりたいなぁ。
「セバスさんは旦那様に報告してますし……わたしの歌声を調べるときには奥様も同席していましたので……」
キャロルちゃんが、ちょっと困った顔で兄様に答える。
「ああ、キャロルを責めてはいないよ? たぶん、こんな小細工をするのは父様だとわかっている。精霊の契約者ならともかく、僕を神獣クラウンラビットの封印に参加させないつもりなんだ」
なんだってーっ! 兄様ったら、自分にお役目がないことに気づいてたーっ!
たいへんだーっ! たいへんだーっ!
ぼくと兄様がおいてけぼりになっちゃうよーっ。
「に……、にいたま?」
ぼくと兄様も一緒に神獣クラウンラビットの封印に行きますよね?
そんな切実な願いを目に込めて兄様へ訴えれば、兄様はニコーッと天使のような黒い笑顔を浮かべた。
んゆ?
天使なのに黒い笑顔ってなんだろう?
「父様がどんなに反対しても無駄なのに。例え精霊の契約者として参加できなくても、その契約者たちを守る護衛として参加できるしね」
フフフと不適に笑う兄様に、アリスターは潤んだ瞳を半眼にして兄様を見ている。
兄様? それだとぼくが参加できないんだけど?
「精霊の契約者たちが精霊楽器を奏でるときは無防備になるから、護衛は必要だし。父様が反対してもマイルズ副団長の推薦があれば、選出されることは間違いない」
「……ヒュー。まぁ、俺もお前が一緒だと心強いが……。団長とはちゃんと話し合えよ? 団長だってお前のこと心配して……」
「兄さんが人のこと言えないでしょ? わたしがその歌い手だって気づいていたのに、黙ってたんだから」
「ぐっ……」
いつもなら兄様の暴走を止めるアリスターなのに、今日はキャロルちゃんにバシッとやられてます。
「しろがね? しこん?」
「どうした?」
「ぼく……ふういん、いける?」
兄様は精霊の契約者たちの護衛という役目を力技でもぎ取るつもりです。
じゃあ、ぼくは?
ぼくは、どうしたら一緒に行けるのかな?
「レンは俺たちが守るから一緒に行けばいいじゃねぇか」
「……」
「しこん?」
白銀は一緒に行こうって言ってくれたのに、紫紺は暗い目をして黙ってしまった。
ぼくを守っていると、神獣クラウンラビットが目覚めて暴れてしまったときに、手が足りなくなっちゃう?
今回の封印には、瑠璃と琥珀は参加できない。
流石に神獣と聖獣が衝突するかもしれない場に、最高戦力の二人が混じったら世界が終わっちゃうらしい。
「儂は手を出さずにいられると……高を括っていたが、レンに万が一のことがあったら手を出してしまうかもしれん」
瑠璃は神獣クラウンラビットがぼくを攻撃してきたら、全力で迎撃してしまう自信があるとのことで不参加です。
もし、瑠璃が全力だしちゃうと、海の水がザッパーンって砂漠に降り注ぐらしいよ?
それで、海が干上がるんだって……オウ! たいへんだ。
琥珀はそもそも力の加減ができないから、最初から不参加が本人の意思を無視して決まった。
その気もないのに、ちょっと翼を動かして砂漠の砂を吹き飛ばしてしまうかもって……怖いよ。
砂漠が一瞬で荒野に変わるかも……って聞いたら、琥珀はお留守番決定で、ぼくが持ち歩いている土人形に意識を入れるのもダメです。
「ぼくも、いきたい」
ぼくも参加するには……あ、そうだ!
ダイアナさんが探している光の上級精霊の契約者になればいいのでは?
残りの精霊楽器も見つけて、プリシラお姉さんたちみたいに、ぼくも封印のときに楽器を奏でることにしたら、みんなと一緒に行けるよね?
「くふふ、みんな、いっちょ」
よし! そうとなったら、どうしよう?
あ、道化師の男に囚われているかもしれない光の上級精霊を探しに行こう!
「どうした、紫紺?」
「白銀。レンは絶対に神獣クラウンラビットに会わせてはいけないわ」
「ん? ああ、またお友達って言って契約すると思ってんのか?」
「違うわよっ。もし精霊たちだけであの子の瘴気が浄化できなかったら……」
「できなかったら?」
「レンが自分の力で浄化してしまうかもしれないわ」
「まさか」
「もし、もしそうなったら……。レンはまだ力を封印されている状態なのよ? なのに無理やり浄化の力を使ったら、今度こそ生命力が尽きてしまうかも」
「それは……」
「……レンは、生命力を代替として浄化の力を発揮しているんですもの」





