確認しましょう 7
光の上級精霊が、悪い奴に囚われているかも……と気づいたぼくたちは、すぐにも救助隊を組んで出発! とはなりません。
とにかく、道化師の男が精霊の力を無理やり引き出して悪事に使っているかもという予想と、プリシラお姉さんのお父さんから預かった古い本に描かれていた魔法陣は、道化師の男が魔力を集めるために使用していた魔法陣と同一だったという事実を報告します。
……レイフさんとザカリーさんが。
ぼくたちはもっと大事なことを達成するために、移動中なの。
「もういい加減、覚悟を決めろ」
「……それは……」
アリスターがトボトボと肩を落として歩く姿なんて、ぼくは見たことないよっ!
「キャロルにお前の歌声には精霊の力を増幅する能力があるから、神獣クラウンラビットの封印の儀に立ち会えって……言いたくない」
「アリスター……。もしキャロルが真実を知らないまま、兄のお前だけが危険なところへ行っていたと知ったら……そっちのほうが大変じゃないのかな?」
兄様はアリスターを心配して助言してあげます。
でも、アリスターはそんな優しい兄様へ、ぎゅっと顰めた顔を向けます。
お口もちょっとイヤそうにひん曲がっているよ?
「ヒュー、お前って奴は、イヤなことを言うなぁ。はぁーっ、しょうがない。腹を括るか!」
「そうそう。プリシラやドロシーも一緒だし、キャロルだって自分が必要とされているって嬉しいかもしれないじゃないか」
……兄様、その発言は危険です。
ぼくたち、兄弟にはお役目がないのです。
そこは、シーッと黙っていてください。
屋敷でリリとメグにメイドのお仕事を教えてもらっていたキャロルちゃんを呼び出したアリスターは、ぼくと兄様、白銀と紫紺だけでは心配で、プリシラお姉さんまでも呼び出して同席をお願いしていた。
「……一緒にいるのはいいですけど、キャロルちゃんに大事な話ってなんですか?」
「んぐっ! そ……それは……」
アリスター、そこでぼくを見ても助けてあげられないよ?
ぼくは困った顔で、なんとなく兄様のズボンをキュッと掴む。
「はぁぁぁぁっ。さっき覚悟を決めたんじゃないのか? もういい。プリシラ、君もダイアナから精霊楽器の話のときに、楽器と同じ力を持つ歌い手がいたと聞いていたと思う」
兄様はキッと鋭い目つきでアリスターを睨みつつ、足にひしっと抱き着くぼくの頭を優しく撫でるという器用なことをしつつ、プリシラお姉さんにキャロルちゃんのことを説明した。
「まあ! キャロルちゃんの歌にそんな力が? あ……でも、確かにエメがキャロルちゃんの歌は聞いてていて気持ちいいと言っていました」
ハッと気づいたプリシラお姉さんは、目を丸くして早口で話す。
そうか……やっぱり歌い手さんはキャロルちゃんのお役目だったかぁ。
しょぼん。
ぼくの落ち込みように首を傾げる兄様だけど、問題はキャロルちゃんを待つアリスターのあり得ないほどの貧乏ゆすりである。
本人は無意識で足を小刻みに動かしているけど、膝がテーブルに当たってガコンガコンとテーブルが動きます。
おっとっと。
「アリスター、落ち着け」
「お、俺は、落ち着い、つい、つい、ついている!」
ちっとも落ち着いてません!
「やだ、兄さん。なにしてんの?」
タタタッ軽快に走って登場のキャロルちゃんは、兄であるアリスターの動揺に眉間にシワを寄せた。
「キ、キャロル……」
アリスターはもう泣きそうです。
ゲームのキャラクターだったら瀕死の状態でしょう。
「キャロル、忙しいときに悪かったな。とりあえず座ってくれ」
「はい、ヒューバート様」
キャロルちゃんは兄様にお辞儀をすると、アリスターの隣ではなく、ぼくとプリシラお姉さんの間に椅子を移動して座った。
「キャロル……」
きゅーんと子犬の悲愴な泣き声が聞こえてきそうな表情のアリスターに、キャロルちゃんはつーんと顔を背けた。
いつもは仲良し兄妹なのにね。
「アリスターは……ダメだな。もう、しょうがないから、僕から説明するぞ」
「お願いします、ヒューバート様」
しおしおとしおれるアリスターを無視して話は進みます。
白銀と紫紺は、自分たちには関係のない話とばかりに芝生にゴロリと横になっていて、気持ちよさそう。
兄様が順序立てて説明している間、アリスターはこの世の終わりみたいなヒドイ顔色だった。
ぼくとプリシラお姉さんもどうしたらいいのかわからず、むぎゅっと唇を閉じてキャロルちゃんを見守った。
「……というわけなんだ」
「……知ってましたけど?」
パチパチと瞬きする一同。
んゆ?
「知ってました。その封印? に必要な歌い手がわたしだって」
「キャロル?」
アリスターは動揺して椅子をガタンと倒して立ち上がり、あわあわしながらキャロルちゃんへ。
「だって、ドロシーから歌い手の話を聞いたセシリア先生がセバスさんに話して、わたしの歌の分析をしたんですよ? セバスさんも知ってます」
キャロルちゃんは堂々と言い切る。
「だから、わたしも正式に神獣クラウンラビットの封印に参加します!」
「キャロル~」
アリスターがキャロルちゃんに縋ってオイオイと泣き出しちゃった。
「……うん、これで問題がひとつ解決したな」
兄様? なんか、アリスターのこと面倒になってませんか?





