07:タバコ、ダメ、ゼッタイ!
「なぁ、相澤」
「なんだよ、倉上」
「タバコが格好いいに認定されたのはホームズからか?」
「……ホームズはタバコじゃなくて、パイプだけどな」
「タバコは孤高の俺様を演出するのにぴったりだな」
倉上がまた懲りずにそんなことを言った。
「なんだよ、孤高の俺様って」
「自分が一匹狼だと世間に知らしめたい奴のことだ」
「よくわかんねぇよ。もっと分かりやすい説明は?」
「俗に言う、俺に触ると火傷するぜ。的なものに近い」
うん。とりあえず可哀想な奴の総称か。
というか、お前はまず全国の喫煙者のみなさんに謝れ。
「タバコは喫煙車本人より、周囲の人間の方が害を被るだろう」
「あぁ、確か副流煙だろ?」
「つまり、喫煙とは俺に近づくな。という遠回りな警告なわけだ」
いや、それ深読みしすぎだろ。
そもそも喫煙者がみんなそんな考えとか、日本の精神年齢が一気に若返るから。
「そう考察すると、一昔前の番長みたいだな。全く時代錯誤も甚だしい」
「……お前、好き勝手言い過ぎだろ」
「実は身内に喫煙者がいて困っている」
倉上が深いため息をこぼす。
なんだ、ってことは説得するための文句を考えてただけか。
納得しかければ、倉上が再度ため息をついた。
「最近、兄の近寄るなオーラが半端ではなくてな。とりあえずタバコを止めさせれば、それも直るだろうと思ったんだ」
……いや、倉上。
俺の勘違いでないなら、お兄さんの近寄るなオーラの原因はタバコではない。
というか、完璧にお前自身がなんかして怒らせただけだろ!
後日、わかったことによればお兄さんのゲームのデータ(300時間分)に新しいデータ(34分)を上書きしたらしい。
倉上はお兄さんの肺ガンの心配より、ストレス胃炎を心配したほうがいいと俺は思う。