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06:シュガーレスでお願いします
「なぁ、相澤」
「なんだよ、倉上」
「ケーキは中央からフォークをさして食べたくならないか?」
「……そこはせめて、イチゴから食えよ」
「隅からきれいに食べていくのはケーキに失礼だ」
倉上がまた懲りずにそんなことを言った。
「失礼の定義はなんだよ」
「飾りたてたものを暴かないで、上品に食べるなんてケーキに対する冒涜だ」
「お前、それ本心なわけ?」
「もちろん、いま思いついたはったりだ」
「だよな」
倉上は気まぐれでミーハーで、そして正直な馬鹿だ。
だから救いようがあるのかないのか、毎回俺は判断に苦しむ。
「ミルフィーユは倒したほうが食べやすいって、このに前知り合いが言ってたけど、普通のケーキはやっぱり端からだろ」
「それは面白味に欠ける」
「ケーキを食うのに面白味もあるか」
「人生はどう楽しめるかにかかっているだろう」
どうして倉上は最もなことをこんな時にしか言えないのか。
頭は悪くないのに、何が悪いやら。
「ショートケーキは特にそう思う」
「破壊衝動か。はたまた深層心理的には嫌いなのかもな」
何気なく口にした言葉に倉上が目を瞬く。
「確かに甘いものは嫌いだが?」
……こいつと俺との会話の噛みあわなさ。
もう壊滅的だと思うのは俺だけか?




