08:針千本、お飲みになります?
「なぁ、相澤」
「なんだよ、倉上」
「一生のお願いとやらは人生で何回なら使用可能だ?」
「……お前はいったい人生を何回やり直せばまともになるだろうな」
「針千本を飲んだらどうなる」
倉上がまた懲りずにそんなことを言った。
「とりあえず、喉の中がハリネズミ状態だろ。というか、常識的に考えて飲む奴いないと思うぜ?」
「そんなこと言ったら警察はいらないぞ」
「いや、むしろいるだろ。実際にあったらまず大事件になるから」
「そうしたら、それは自殺、それもと事故扱いか? それとも、計画的犯行と勘ぐられるのだろうか」
わざと果たせない約束をふっかけて、針千本の約束を交わさせる。
そして、果たせなかった約束を糾弾して、針を飲ませる。
なんかすごく嫌だ。
そんな殺人には死んでも関わりたくない。
まぁ、死んだら関われないけど。
「嘘つきは泥棒の始まりだというからな。約束を違えるのは重大な犯罪に匹敵するわけだ」
「それにしても、針千本って。なじみのあるフレーズなわりに怖いよな」
「だが、口を縫い合わされるよりはよっぽどいいだろう?」
「な、針のもとはそこからきてんの!?」
「いや、なんとなくだ」
なんとなくでそんなグロいことを言う友人は嫌だ。
よし、倉上に不用意な約束は言わないようにしよう。
と、倉上が口を開く。
「あぁ、忘れるところだった。相澤、約束覚えてるか」
「は?」
「なら相澤、一生のお願いだ」
下げられた頭に嫌な予感しかしない。
「借りた初回限定版CD、壊した。許してくれ」
嫌な予感的中。
俺、貸すときに「絶対に壊すな」って言ったよな? 約束したな?
……なぁ、倉上?
針千本って百均に行けば売ってんのかな?




