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04:切りすぎにはご注意を
「なぁ、相澤」
「なんだよ、倉上」
「爪は何を摂取すればすぐに伸びるんだろうか」
「……髪の毛は確かミネラルだろ」
「今は爪が短いから、攻撃力が皆無だ」
倉上がまた懲りずにそんなことを言った。
「別にお前、爪で誰かを攻撃する機会なんてないだろ」
「死因が変わるだろう」
「は?」
「というか首を絞められた時に、突き落とされそうになった時、爪がなければ防御層に格好がつかないだろう?」
おい、さらりととんでもないことを言ってないか?
呆れるばかりだった最近に比べてちょっとダークな発言だ。
「なんてな。ただ、同じ土俵で勝負するのが最善だと思っただけだ」
「同じ土俵?」
「相手はなかなかの強敵だ」
横髪がかき分けられ、露わになった右の頬には赤い三本線がくっきり。
痛々しいそれに無意識に眉がよる。
「痴情のもつれ?」
「遠からず、近からずだな」
「……相手は猫か」
「よくわかったな。なぜか俺にだけ懐かないんだ」
「おまけにお前の家の飼い猫か」
「あぁ、だから対抗するには爪が必要なんだ」
猫に嫌われる人間は性根が悪いと言うが、あながち間違っていないんじゃないか?
倉上の友人として、ぜひとも倉上の猫を応援したい。
「爪があれば拳は無理でも、語り合える気がする」
倉上の友人として、祈ることはただ一つ。
どうか、こいつの爪が伸びませんように。




