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卒業パーティーのノクタヴィア


「ノクタヴィア」


鮮やかな薔薇達が

我を見よとばかりに咲き誇り

光と共に弧を描いていたかと思えば

荘厳な声が降り注いだ。


その瞬間、音楽は止み、

薔薇達は淑女へ、光は紳士に

本来の形を取り戻す。


「ウィリアム殿下」


隣国オスタヴィアの第二王子で

我が妹、ベルティーナの婚約者。

柔らかな薔薇色の髪に紫水晶の瞳の色合いは

彼にとてもよく似合っていた。


胸に湧き上がる気持ちをぎゅっと

握りしめて少しでも顔を覗かせないように。


「ノクタヴィア、君とは

長い付き合いになるな。卒業おめでとう」


優しく綻ぶその表情に

感情が掻き乱されないように。


「……ありがとうございます」


「そのアクアマリンのドレスも君にとても

よく似合っているよ」


優しい言葉に無邪気に喜ばないように。


わたくしは軽く頭を下げて、

本来隣にいるはずの彼女を探す。


「ああ、ベルを探しているのか。

……彼女なら『待て!!この殺人犯!!』とか

言いながら虫取り網を持って

走っていたのを見たな」


「……は?」


「私も意味が分からないのだが……

まったく、ベルはおてんばな子だ」


ため息混じりに言うウィリアム殿下が

わたくしに向けるのとは違うとろけた

表情を浮かべていた。


嫉妬心が心を覆いつくしてしまいそうで

わたくしは何も言えなかった……。


魔法を発動してピンクの雪の結晶を創りあげる。

雪の結晶の上に人差し指を回して

粉を振りかけるとまるでガラスの破片を

散りばめたかのようにキラキラと輝いた。


「……相変わらず

ノクタヴィアの魔法は美しいな」


「いえ、花姫である

ベルティーナには敵いませんわ」


花姫は全ての魔法を神から授かる奇跡の乙女。

雪の魔法しか使えないわたくしは

とてもじゃないけど歯が立たない。


「……でも一つの魔法をここまで

極めることのできる君もベルと

同じくらいすごいよ」


「殿下……」


その笑顔がベルティーナと重なって

嫉妬心など消えてしまった。


「この結晶は殿下に」


「え?」


「わたくしからの婚約祝いだと思ってください」


プイッと顔を背けると、ウィリアム様は

「ぷっ」と笑い声を漏らした。


「も、もう!何ですか

人がせっかく物を贈ったというのに」


「いや、素直じゃないのは昔から

変わってないと思ってね。

ありがとう、お姫様」


ウィリアム様が溶けない氷の結晶を

受け取って初めてわたくしは

初恋を手放せた気がした。


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