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卒業パーティー前日


「姫様」


聞き馴染みのある声に振り向くと

橙色の髪に新緑の大きな瞳の青年が

明るく笑っていた。


「まあ、ランス」


「いよいよ明日は卒業パーティーですね」


そう言って隣を歩くランスロットは

わたくしの幼馴染であり、公爵家の生まれ。

王家と深い繋がりを持つ家の出身。


いつも独りでいるわたくしを

何かと気にかけてくれる唯一の友達でもある。


「そうね」


「卒業パーティーのドレスは

もう決まったんですか?」


その質問にちょっとだけ胸が曇る。

この学園の卒業パーティーは婚約者から

ドレスを贈られるのが慣わしだ。


しかし、わたくしは縁談を

断り続けているから婚約者がいない。


「いいえ、まだよ。何着かドレスを

仕立ててもらっているから当日はそれを着るわ」


笑みを浮かべると、頬をふにゅっとつつかれた。


「嘘つき」


「え?」


「俺の前で作り笑いしないでください。

……ウィリアム様を

忘れられずにいるんでしょう?」


わたくしは制服の裾をギュッと握った。


「……」


「姫様……ウィリアム様はベルティーナ姫様と

婚約しているんですよ?」


「……そんなの、分かっているわ」


「あんなやつのどこがいいんですか。

もう何年も想い続けて……。

見てられません」


「想い続けてなんかいないわ。

期待もしてないし、婚約者だって

探しているところなんだから。

変なことを言わないで」


ランスロットを置き去りにして歩き出す。


「姫様は、やっぱり嘘つきだ」


その言葉が聞こえないふりをして。



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