025話 論じるは己の学
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一限目と二限目は退屈なくらい普通の授業を受けた。
基本的にはエデンについて学んでいく為、通常の科目はかなりのスピードで進む。
今日だって入学式翌日にも関わらず、淡々と教科書を解いていく。
神場高校は、学力に関わらずエデンの成績さえ良ければ入学出来る。
つまり、中には平均以下の学力の生徒もいるということだ。
そんな生徒が今日のような授業を受ければ、付いていけなくなるのは明らか。
クラスの四分の一程度は集中を欠き、バレないような工夫をしながらサボっていた。
気持ちは分かるけど、俺は後から必死に勉強したくない。
だから、授業の時間だけでも集中して受けることで一度でちゃんと理解する。
中学の時もこれで大体七十から八十くらいの点数は取れた。
将来、勇者を目指すとはいっても、学力はあって損はない。
そのことを理解出来ている生徒がどれだけいるのか。
授業態度を見ていれば概ね見当がつく。
「三限目始めるぞー、席付けー」
少し乱暴に教室の扉を開けて入室する担任の板里。
機嫌が悪いのかと勘繰った生徒達は、機敏な動きで自分の席へと戻っていく。
「号令」
「あのー、先生。誰が号令やりますか? まだこのクラスには学級委員がいませんけど」
スズヤが申し訳なさそうに手を挙げて発言をする。
「一限目と二限目どうしてた」
「それは出席番号一番の雨神がやってくれていました」
「なら、雨神ぃー号令ー」
この調子だとしばらくは毎回俺が号令を掛けることになる。
たった数秒の挨拶に過ぎないけれど、その度に多少の注目を浴びてしまうのが億劫だ。
ただでさえ、いつも視線が痛いというのに。
号令を終えて、全員が座ると間を置いて板里先生が話を始める。
三限目からはエデンについて学ぶ特殊カリキュラム。
ついに始まる勇者への一歩に、誰もが真剣に耳を傾けていた。
「まずは四人組を六班と三人組を二班作ってもらう。班はお前達が勝手に決める訳ではない。こちらでランダムに決めさせてもらった。今から名前を読み上げていくから速やかに班ごとで集まるように」
困惑。クラス内での感情はただそれだけ。
昨日作ったパーティーとは全く関係ない人間と班を作る。
その意図が到底理解出来ていない様子。
それでも声を出す生徒はいない。
こちらの感情を一切汲み取らず、すらすらと読み上げられていく名前の数々を聞き流してはならないから。
俺の名前は比較的早く呼ばれた。
他のメンバーは、今朝話したばかりのエマリーとアツトのパーティーメンバーであるヒメ、それと後藤。
全く話したことのない生徒ばかりだったらどうしようかと思ったが、一度は話したことのあるメンバーで助かった。
しかも、後藤を除けば、エデンプレイヤーでは珍しい穏やかな性格の二人。
この時間を平穏に過ごせそうな気がする。
「今回はそれぞれの班で一つのテーマについて話し合ってもらう」
ディベートか。エデンは確実な正解がないゲーム。
ネット内でも様々な角度の議論が交わされている。
他人の思考を取り入れるという観点で見れば、導入として最適な内容と言えるだろう。
しかし、気になるのはパーティーを分ける理由だ。
ソロはソロで集まるなどすれば、なるべくパーティーを崩さずに班を作れる。
パーティー間での視点の擦り合わせにもなって、そっちの方が為になるかと思ったが、バラバラにする狙いがちゃんとあるのだろう。
「テーマは、『ルールがバトロワ、マップは無限森林にて四人パーティーの最適な職業構成は何か』だ。時間は三十分、目一杯話し合ってくれ」
「それって、昨日の試合と全く同じ条件じゃないですか」
全員が思ったことをスズヤが代表して口にする。
「だからどうした? このテーマに不満があるのか?」
「不満はありませんが……」
かなり熱の入った議論になる。
昨日の試合、どのパーティーも自分達の構成が一番だと信じて挑んだ。
だからこそ、譲れないものがある。
スズヤが心配しているのは熱が入り過ぎた先のこと。
こんな序盤からクラスの仲が悪化しないか不安で仕方ない。
「さっさと始めろ。私が定期的に回るからなー」
始めろと言われてもな。
空気的には話し合いをする雰囲気ではない。
どこの班も出方を探り合っているのか、少しも話し声が聞こえてこない。
ただ一つの班を除いて。
「えぇー、えまりんと一緒なの嬉しいー! 近くで見ると余計可愛いー!」
「私も姫崎さんと一緒嬉しいデス!」
「見ろよ、師匠。美少女と美少女。眼福だな」
テーマと全く関係ない話を楽しそうに始めた。
変に気を遣うよりはやりやすいけれど、このままでは真っ先に担任の注意を受ける。
板里先生に目を付けられるのは、今後面倒なことになりそうで怖い。
どうにかして話を進めようと後藤に視線を送るも、完全に女子へ釘付け。
こちらを見ようともしない。
呆れて大きなため息が出そうになるのを堪えて、俺から先陣を切る。
「そろそろテーマについて真剣に議論すべきじゃないかな?」
「テーマ? あー、テーマ、テーマ。あぁ、昨日の試合、何が最適だったかってやつか」
話半分で板里先生の話を聞いていたようで、ついさっき言っていたことですら何とか捻り出す。
「そもそもみんなのパーティーがどんな構成だったかを思い出すべきじゃないかな?」
「じゃあ、俺から言うわ。俺達は、侍、戦士、僧侶、付与術師の四人だったぜ。戦士と僧侶の組み合わせがマストで、俺と石ケ森は得意な侍と付与術師を選んだな」
「侍と付与術師に深い意図は無かったと?」
「そういうこと。まぁ、強いて言うなら、フレンドリーファイアを恐れて遠距離系はなしって話になったな」
遠距離攻撃は考えることが多く、慣れていないプレイヤーは高確率で味方を撃つ。
対人戦なら尚更だ。
逆手に取られて形勢逆転なんてなった日には笑えないだろう。
無限森林での編成だったらと考えると、明らかにそぐわないと分かるけど、昨日の試合自体はランダムマップ。
試合が始まるまではどこのマップになるか分からないので、後藤のパーティーは運が悪かったと言える。
本人もそれは理解している為、参考にはならないと笑いながら他の人へと話を振った。
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