026話 あの時、彼らは考えた
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「じゃあ、ヒメのパーティーとは全く逆だね。ヒメ達は遠距離をガンガン入れようってことで、戦士と魔法使いと銃使いだったもん」
ヒメ達のパーティーの構成はよく覚えている。
まさか現環境で使用率の高い僧侶を捨てて、全員攻撃の構成に出るとは。
誰が提案したのかは分からないけれど、面白い発想ではある。
しかも、結果的に無限森林と噛み合って三位。
どんな狙いだったのかは一度聞いておきたい。
「ヒメちゃんのパーティーは、無限森林読みだったってことかよ!? エスパーか、なんか!?」
「あははー! ヒメは超絶エスパーなのです!」
おでこからビームを出すポーズをして、後藤の天然ボケに乗っかってやるヒメ。
毎回思ってたけど、誰にでもノリ良く接する人懐っこさがあるな。
「でもー、本当のことを言うとあまたんのせい? おかげ? なんだよね」
「俺? 何かしたかな?」
まさか自分の名前が挙げられるとは思っていなかった俺は、困惑しながら背筋を伸ばす。
「入学式前の試合を振り返ってね。僧侶は実力が拮抗している相手との試合なら効果的なんだけど、あまたんみたいにちょーーー強い人と戦う時は、腐る場面が多くなるって気付いたの。実際、ログとか映像見返しても、あまたんと対戦したパーティーの僧侶は明らかに回復量少なかったし」
「うわぁ、それめっちゃ分かるかも。俺達が戦った時も回復するより先に倒し切られてたわ。盗賊とかの速い系と相性悪いのかもな」
僧侶の強みは持久戦だ。
ジワジワと削って、じっくりと回復。
ヒット&アウェイでアドバンテージを稼ぐ。
戦士と合わせて採用される率が高いのもその為だ。
逆を言えば、テンポの早い戦闘は苦手とする。
盗賊や拳闘士などを相手にする時は、どれだけテンポロスさせるかで勝敗が大きく変わる。
前回の試合で俺をマークしていたなら、盗賊を警戒して僧侶を敢えて外す選択も納得だ。
それにルールはバトロワ。
宝箱から中確率で回収出来る回復薬もあるので、ある程度は回復を補える。
そもそもヒメのパーティーは三人しかいない分、火力不足が否めない。
そういった点も、僧侶を抜く要因だったのかもと勝手ながらに推測した。
「雨神さんはちょっと特殊な気がするデス」
「特殊? 確かに鬼強いけどよ、エマリーちゃんの言う特殊って?」
「他の人達は手数がもっと多いんデス」
「手数が多いのは雨神じゃなくて? なんか、スパスパ攻撃してるイメージあるけど」
後藤の問いに、エマリーが首を横に振って答えた。
「雨神さんの攻撃、僧侶が回復し切れるダメージのものがないデス。回復を複数回に分けないといけないデス。これは推測デスけど……、人よりダメージ感覚が正確なんだと思いマス」
「ほぉ、ダメージ感覚……。でもよ、あの一瞬でパッと自分のダメージ計算するのはむずくね?」
「自分のダメージだけじゃないよ。相手の防御力と回復量を想定しながら計算するのも含まれるからね」
「おまっ、ガチ?」
「あまたんなら本当にやってそうで怖いよねー」
後藤とヒメがドン引きで俺の顔を見てくる。
エデンで使う計算なんて高が知れているのだから、試合中に同時並行で計算するのは容易い。
というより、行動するには何かしらの根拠が欲しくなるので自然と脳が動く。
これをより感覚的なものに近付けるのが、今の俺の課題とも言える。
昨日の試合だけでダメージ計算していることに気付くとは、エマリーは中々良い視点を持っている。
試合中の様子を見る限りだと、パニックになっていて周りに気を配っている様子なんて見受けられなかった。
彼女の真面目な性格を考慮すると、試合映像を何度も見直した可能性が高い。
こういう影で頑張れるタイプは、成長こそ遅いけれど確実に強くなる。
「結局、僧侶は入れない方が強いってことか? うーん、難しくなってきたぜ。どう思う雨神」
「マップだけを見れば、僧侶は入れた方が安定するだろうね。あくまでもマップを先に知っている前提だけど」
「おっ、なんでなんで? 理由まで聞かせてくれよ」
「無限森林は、銃使いや弓使いが遮蔽物を活かして強く出れるから長期的な戦闘が続く。さっきも言ったけど、僧侶は長期戦には必須級だ。どのパーティーにも一人は欲しい」
「じゃあ、一人は僧侶確定だな」
「あっ、私、まとめるのするデス」
書記としてエマリーが今までの会話をまとめてノートに書き上げた。
後藤やヒメも時折、ノートを見ながら真剣に議論を続ける。
その様子を遠い目で観察していた。
発言は話を振られたり、質問を投げかけられたら答える程度に留める。
三人には申し訳ないけれど、この問いに対して真剣に考える必要はない。
この曖昧な条件であれば、どの構成でも屁理屈を並べれば説得力を持たせられる。
板里先生が見ているのは、生徒それぞれの思考の仕方や他者とのコミュニケーション能力。
それなりの協調性を見せていれば、注意を受けることもないだろう。
俺としては自分の意見で染めてしまうより、他の三人の意見を傾聴したい。
現段階でも、エマリーの意外な観察眼や後藤とヒメの空気を明るくする力を目の当たりにしている。
これだけの小さな情報でも見ていて面白い。
「よしっ、じゃあー、まとめると戦士、僧侶、銃使い二人の構成が今のところ強そうだな」
いつの間にかエマリーの横へ椅子を移動させていた後藤が、ノートを指差しながら丁寧に確認する。
途中、ヒメと白熱した議論を見せていたがどうやら上手くまとまったみたいだ。
「そろそろ全員意見がまとまってきたかー」
徘徊している板里先生が腕時計を見ながら、議論の進行度を確認する。
俺達は丁度まとめ終わったタイミング。
教室の前に掛けられた時計に視線が移る。
時刻は気付けば三十分を過ぎていた。
「だーかーらー、そうじゃねーって!」
「はぁ? 指図しないでよ!」
「まぁまぁ、君達落ち着いたら?」
もう終わりの時間が近付いているタイミングで、クラス内に響き渡る喧騒。
何事かと思い声をする方を見ると、アツトと後藤のパーティーで戦士をしていた早川が火花を散らして対立していた。
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