024話 彼女は朝から学んでいる
誤字脱字や文章の下手さについてはご了承下さい。投稿予定時間になるべく投稿できるようにします。
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「だーかーら、はゆゆとなゆゆ。どっちが好きなのかって聞いてるの」
「そのはゆゆとかなゆゆってのがピンと来ないんだけど誰なの」
「ATuberで一番人気の二人だよ? 知らないのか!?」
「そもそもATuberが分からないよ」
あと少しで教室へ着きそうな頃、後藤が雑談を振ってくる。
最初は趣味の話だったけど、エデン以外は興味ないと答えると根掘り葉掘り質問攻めを受けた。
朝から喋り続ける元気な彼を見て、こちらはげんなりとしてしまっているというのに彼は気付いていない。
「アグメンテッド・リアリティ・ミーチューバー。投影技術でもう一人の自分を作って動画投稿してる人達のこと。結構、エデンを実況してるATuberも多いぜ? そんでその中でも一番人気なのが、はゆゆとなゆゆの二人って訳」
「要するに動画投稿者ってことね」
「まとめ過ぎだけど、まぁそういうこと」
「動画は全く見ない訳じゃないけど、勇者の公式試合とかしか見ないからな」
「信じられねぇー。見てみろよ、この二人どっちが可愛いと思う?」
肩を組んで逃げられないようにしてから、携帯の画面を無理矢理見せつけてくる。
女子の好みなんて一番苦手な話題だというのに、このまま逃がしてくれるなんてことはなさそうだ。
どうしようかと悩みながらも一応画面は確認する。
映っているのは、キラキラとしたパステルカラーの服を着た二人の女の子。
アイドルみたいに華やかな衣装と二次元特有の整った顔立ちは、一度見ただけでもかなり印象に残る。
投稿している動画も数本映っているが、どうやら本当にエデンも実況プレイしているようだ。
再生回数は平均ざっと五百万回再生。
人気というのも嘘ではないらしい。
それよりも好みと言われたら困るな。
ここだけの情報で切り取れるのは容姿ばかりで、性格や思考法までは全く。
肝心の容姿も双子がコンセプトなのか瓜二つだ。
「決めるのは難しいね、こういうのは」
「おいおい、流石にないぜ、そりゃ」
「ほら、そろそろ教室に着くから」
「露骨に話題逸らしやがって。絶対いつか女の子の趣味吐かせるからな」
最後のセリフは聞こえなかったことにして、俺は先に教室へと入った。
一番乗りかと思っていた教室の中には、先に来ているクラスメイトが一人。
窓際の席でノートと問題集を広げ、朝から熱心に勉強をしている。
時折、カーテンが揺れて差し込む光が、彼女のブロンドヘアーを輝かせていた。
彼女の名前までは覚えられていないけど、昨日の試合中出会った記憶がある。
気性の荒い銃使いがいたパーティーの僧侶。
白井に八つ裂きにされていたのをよく覚えている。
「あっ、エマリーちゃんじゃん! おはよーっす!」
後から遅れて教室に入った後藤が大声で挨拶をする。
こちらに気付かずに問題を解いていた彼女は、少し驚きながらも手を止めて挨拶を交わす。
「おはようございますデス。後藤さんと、……雨神…さん」
口に出して嫌悪感は見せないものの、表情は引き攣っている。
あまり良い噂を聞かず、更には仲間の腕をもぎ取った男だ。
楽しげに会話しろという方が無理がある。
これ以上は勉強の邪魔になるだけだと判断して、速やかに自分の席へと移動する。
後藤も空気を読んでなのか、自分の席へと向かって、荷物を下ろした。
やっと静かな時間がやって来たと思い、ゆっくり本でも読もうと鞄を漁っていると、何故か自分の席に着いたはずの後藤がこちらにやって来る。
何も言わないまま強引に腕を掴まれると、エマリーの近くへと連れて行かれた。
彼なりの優しさとして、クラスに馴染めるよう配慮しているのかも知れないが正直気まずい。
今の時間は他に誰もいないことを良いことにエマリーの前の席に座る後藤。
その横の席の椅子を無理矢理引っ張り出して、俺へ座るよう促す。
「それ何の勉強してるの? 朝からめっちゃ偉いね」
「これは日本語の勉強デス。私はまだ日本来たばかりデス。なので、早く上手く日本語を話せるように勉強してるデス」
「まじか!? 日本語ペラペラなのにまだ勉強するの?」
「一年もしない内に後藤くんより日本語上手くなるかもね」
「私、そのつもりで頑張るデス!」
ふんすと鼻息を荒くするエマリー。
後藤を挟んで会話をしているからか、最初の様に怯えている様子はない。
「二人はどうしてこんな早くに? まだホームルームまでには時間あるデスよ?」
「あぁ、それはさ。俺が夜中にコンボを思い付いてさー。それで師匠に聞いてもらおうと思って」
「師匠!?」
「そうそう。色々教えてもらおうと思って、雨神に頼んだんだよ」
エマリーが困惑した表情で後藤を見た。
その驚きの中には、相手は悪名高い雨神なのに良いのかというニュアンスが含まれている。
同時に、ソロプレイヤーである俺が弟子を取るという行動にも疑問が浮かんでいるはず。
口を滑らせた後藤は俺の方を見て、何でこんなに驚いているのかと視線を送る。
彼は本気で忘れているのだろうか。
昨日までは後藤もエマリーと同じ立場だったのだと言ってやりたい。
「エマリーさんも色々と噂を聞いたんだと思うよ。そんな奴が、好き好んで人と関わるのが不思議なんでしょ」
「い、いやいや、そんなことないデス。あのー、その、あ、アハハ」
「あぁー! そうだった! 雨神って、めっちゃ評判悪いの忘れてたわ」
納得した様子で、手を一度ポンと叩く。
本人を前にしてよくも隠すことなく言えるものだ。
普通ならエマリーのように気を遣って言葉を濁すものなんだけどな。
その点は後藤よりもエマリーの方が日本人らしいと言える。
「エマリーちゃん、誤解だぜそれ。確かに戦い方はあれだけど。強いってことは、真剣にエデンを取り組んでいる証拠だろ? しかも、話してみれば意外と面白い奴だし」
「んー、確かに噂よりは優しそうかもデス。でもでも、雰囲気がちょっと怪しいデス」
「あはは! 言われてやんの!」
大声で笑う後藤を見て、エマリーは慌てふためく。
首を振って貶す意図はないと必死に伝えて来る。
俺としては怪しいという言葉くらいでは気にしない。
今までにもっと酷い言葉を浴びて来た。
そんな中で比べれば可愛いものだ。
「気にしてないから大丈夫だよ」
「そうそう、雨神はこんくらいじゃあ気にしないよな」
「ほ、本当デスか? 私、信じるデスよ?」
何度も気にしていないか確かめるエマリー。
どんな噂を聞けばここまで怯えることが出来るのか。
今までは噂の内容なんて考えもしていなかったが、一度ちゃんと調べる必要がありそうだ。
「ごめんね、勉強中に邪魔して。俺達はあっち戻るから続き頑張ってね」
「えぇー、もうちょい話してこーぜ師匠」
「良いから行くよ、ほら」
意地でも退こうとしない後藤を強引に引き摺り出して、エマリーの席から離れる。
こんな朝早くから教室へ来るくらいだから、きっと静かな空間が好きなはず。
最初の会話としては十分喋れたので、このくらいで引き下がった方が良い。
エマリーと話した後は、後藤に必要以上に絡まれたが、それも人が多くなるまでの話。
徐々に生徒が入室すると空気を読んで自分の席へと戻って行く。
長らく人といることが多かった俺は、やっと一息付いて携帯を弄り始めた。
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