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急募:ソロで勇者になる方法〜悪名高いソロプレイヤーだけど、プロゲーマー育成校で無双してます〜  作者: 風野唄


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20/25

020話 隠されたコンボ

誤字脱字や文章の下手さについてはご了承下さい。投稿予定時間になるべく投稿できるようにします。

面白いと思っていただけたら評価やコメントお待ちしております!

 先に攻撃したのは富岡(とみおか)先輩。

脳みそを使わず、パワーでゴリ押して来るタイプかと思い油断していたが、どうやらこのルールをちゃんと理解している。

一撃ポイントを狙った派手な攻撃ではなく、攻撃を避けるのが難しい胴体を狙って来た。


 瞬速の打撃に纏う殺気。

目を閉じている余裕はない。

未だかつてない反射速度で反り身になる。

目の前を彼女の拳が通り過ぎていく。


 相手は無防備な状態になった。

次の攻撃を仕掛けられる前に反撃に出る。

遠心力を使い鞘を投げ飛ばしながら、腰に携えた刀を逆手で抜く。

反り身のまま身体を捻り、その勢いを利用して腕を斬りかかる。


「面白れぇー! そう来なくっちゃな!」


 振り抜いた刀から伝わる硬い感触。

ピンポイントで展開されたバリア。

確実に決め切ったと思った一振りは、防がれてしまった。


 クラスメイトと戦った時には感じなかった緊張感。

一歩間違えれば、簡単に負ける。

その瞬間的な攻防の続く戦況で、取り乱した様子がなく落ち着き払っている富岡先輩。

これも歳と経験の功というやつか。


「先輩、中々に強いですね」

「その顔、思ってねーだろ。なんか策のある顔してやがる」

「この勝負、ルールが決まった時点で俺の勝ちですから……ねっ」


 体勢を立て直す為に牽制の足蹴りを放つ。

自信満々の俺を見て、何かがあると警戒した富岡先輩は素直に後退。

スタート時点と変わらない状態になった。


 ……と素人は思う。


「どうしたんだよ? 勝ちが決まってるなら攻めてこいよ」


 富岡先輩は攻めて来ない。

じっと待って様子を窺ってくる。

超攻撃的な性格であるはずの彼女が動きを止めた理由は単純。

初動の失敗と意味深な俺の発言が、彼女のプレースタイルを蝕んでいた。


 しかし、こちらからも攻めることはない。

侍の戦闘スタイルがカウンターであることもそうだが、今この状況で攻めるより敢えて動かない方が心理的な負担を与えられる。

何をしてくるのか、どういう構成で、何を狙っているのか。

少ない情報から必死に頭を悩ませてくれたら、こちらの思惑通りだ。


「先輩って、結構スキル構成が固定ですよね」

「ふっ……、変な揺さぶり掛けなくても、別にスキル構成なんざ隠してねぇーんだよ。寧ろ、馬鹿みたいに逐一スキル変えてる奴より練度が違う」

「One-Trick(ワントリック) Pony(ポニー)、OTPですか。ソロのOTPプレイヤーとは随分難儀な生き方を選ぶ人だ」

「はっ、お互い様だろ! 最高に楽しい人生だよな、雨神(あまがみ)ーーーーッ!!! 『俊速連撃』ッ!」


 一貫してこちらからは動かない。

そうなれば、いつか富岡先輩は痺れを切らす。

ここまでの読みはやはり外れなかった。


 カウンタースキルの居合。

一度刀を納刀して、腰を深く落とす。

柄を握りしめ深い呼吸。

迫り来る攻撃を目の前にしても、心を乱してはならない。

それが居合を成功させるコツだ。


「カウンターできるんなら、やってみやがれ」

「カウンターをお望みとあらば、『ワープ』」

「こいつッ!」


 居合の動作中、静止した状態になっていた。

時間にして一秒を優に超える。

つまり、ワープの条件を満たした。

相手の脳内で、侍がカウンターを使うものと錯覚している。

だから、共通スキルであるワープの方が刺さると判断した。


(当たり前みたいな顔して、フェイント掛けて来やがった。でも、ワープを使った後にすぐは攻撃出来ない。少しの間があれば、バリア張りながら振り返って………)


「……なんだよ、その構え」


 背後に回った俺が握っている刀は、富岡先輩の方ではなく、背後に刃が向けられていた。

まともに攻撃が出来るとは思えない。

ふざけているのかとすら、富岡先輩は思っているだろう。


「『縮地』」


 侍限定のブリンクスキル。

範囲は体が向いている正面三メートル以内。

共通スキルのワープと違って、移動後の体の向きは固定だし、一直線にしか進めないデメリットもある。

だから、準備を整えた。

振り返らずとも、力一杯に背後へと刀を押し出すだけで良い。


[GAME SET winner 雨神人利(ひとり)]



「だぁーー!!! クソッ! 二連続ブリンクとか聞いてねぇーよ!」


 ゲームを終えると真っ先に耳へ入る富岡先輩の悔しそうな声。

負けた苛立ちも含まれたその声に、こちらから声を掛けるべきか判断に迷う。

リアルファイトに持ち込まれたら、枕元に置かれている金属バットで頭をかち割られる未来が見える。


「ったく、噂じゃ卑怯だなんだって言われてるけど、そんなレベルの話じゃねーぞ」


 富岡先輩が頭を掻きながら、体を起こす。

いつ起き上がろうかと悩んでいた俺も合わせて体を起こした。


「雨神の方から仕掛けなかったのはカウンターを強く意識させる為か?」

「そうです、近接系の職業は総じてカウンターを苦手としますからね。侍を見たら居合警戒は当たり前だと思ってました」

「普段からカウンター対策の見切りを入れてるから、尚更意識しちまったぜ」


 そこまで知ってましたよ。とは、口が裂けても言えなかった。

事前に調べた彼女の構成は、拳闘士の見切り(10pt)、渾身一撃(30pt)、俊速連撃(30pt)、衝撃(インパクト)(30pt)、バリア(10pt)、サーチ(10pt)。

これが一番多い。

衝撃(インパクト)とサーチは、偶に変わっている記録もあるけれど、今回はサーチを削ってステータスに振る事以外、変わらないと予想していた。


 最大限警戒すべきスキルは回避系の見切り。

カウンターとして発動した居合も攻撃判定はあるので、見切りを使って躱される可能性は高い。

幾度となく使って来たであろう富岡先輩であれば余計に。


 だからこそ、二連続でのブリンクが有効だと判断した。

ブリンクスキルの中でもスキル自体には攻撃判定のあるモーションが含まれないのはワープと縮地だけ。

この二つを組み合わせることで見切りの発動を防ぐ。


 カウンター対策の見切りの、更に対策として侍を専門とする者の間では一時期話題になっていた。

それこそ、勇者(プロ)ではテクニックの一つとして使用する選手も一定数存在する。

明確な弱点も存在するけれど、緊迫感のある勝負の最中に思い出せるプレイヤーは少ない。

いや、そもそも知っている人もごく少数だ。


 結局、ゲームの勝敗は手札の多さで決まる。

ありとあらゆる情報を蓄え、ゲームプランを練る頭脳。

そして、思い描いたそれを実現するための技術。

その二つが掛け合わさって、手札の総量となる。

この頭脳と技術の割合が、人によって全く異なるから戦闘では個性が生まれる。


 富岡先輩で当て嵌めてみると、タイプ的には信号機組の上位互換。

緻密なプランで相手を追い詰めるよりも、フィジカルで全てをカバーするスタイル。

調子によって波が出やすい点を除けば、際限なく非常に厄介だったりもする。


「対戦ありがとうございました。勉強になることも多いので、またいつでも対戦お待ちしてます」


 社交辞令を述べておく。

富岡先輩の強さは確かに低くない。

それどころかソロプレイヤーで良くやっている方だと思う。

ただ、スキル構成が変わらないプレイヤーと何度も対戦してもな。

得られるものが限定的すぎる。


「なら、もう一戦だ! もう一戦!」

「それは勘弁してくださいよ。流石に荷解きとかもあるし、休みたいんですけど」

「男に二言はないよな」


 目が笑ってない笑顔。

どうやら、俺は言葉のチョイスを間違えたらしい。

チラッと見えた先輩の手には、こっそりと金属バットが握られている。

深いため息を吐いた後、大人しくヘッドギアを付け直した。


ご覧いただきありがとうございました。

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