016話 弟子入り志願者
誤字脱字や文章の下手さについてはご了承下さい。投稿予定時間になるべく投稿できるようにします。
面白いと思っていただけたら評価やコメントお待ちしております!
廊下へ出ると俺の部屋の前で木刀を床に突き立て、胡座をかいて鎮座している男が目に入る。
想定外の事態に体が硬直したものの、早々に関係ないと結論付け立ち去ろうとする。
「待ってくれ」
閉じていた目をかっぴらき、渋めの声で静止を促す。
いつもの俺なら耳を傾けず、何事もなかったかのように逃げるのだけど、今回はそうもいかない。
目の前にいる木刀男のことを俺は知っているのだから。
「えぇーっと、……さっきの試合お疲れ様。敵にいた侍の子だよね」
名前までは覚えられていないけれど、正真正銘彼はクラスメイトだ。
ハーフアップの髪型が特徴的だったので、顔をなんとなく覚えている。
至近距離で桜花六連撃をぶっ放してきたあの子。
まさか負けた腹いせに復讐しに来たか。
今まではネット越しで暴言を吐かれるのが関の山。
しかし、遂にリア凸される日が来るとは。
同じ敷地内で生活する以上、一度や二度の覚悟はあった。
自分のプレースタイルが、相手を必要以上に刺激しているのは自覚していたから。
それでも一日目からは予測出来なかった。
「自己紹介……あー、そういやしてなかったな。後藤風助。雨神に何も出来ず、味方を倒された奴だよ」
立ち上がり、申し訳程度の自己紹介をする後藤。
自嘲気味に笑うその姿が、全てを投げ捨てようとしている人間に見えて怖い。
手に持っている木刀がいつ襲い掛かってくることか。
「よろしくね、後藤くん。それで俺に何か用かな?」
「それは……」
用件を聞いただけで言い淀む感じが非常に怖い。
「頼む! 俺を弟子にしてくれ!」
唐突に下げられた頭。
一瞬、木刀を振りかざしたのかと思った。
暴力沙汰にならなくて良かったと胸を撫で下ろしていると、彼の言葉が遅れて脳に届く。
今……弟子と言ったのか?
状況が全く飲み込めない。
怒るならまだしも、弟子にしてくれ?
どこをどう見て、弟子入りを願い出たのだろう。
あの試合を勝ったという浅はかな理由なら、もっと他にも弟子入りの候補はある。
ましてや、今日はまだ一日目。
今後、大勢の人間と出会うと考えれば尚更だ。
「どうして俺に頼むのかな? それこそ、この学校はプロ候補が頼むにしても他にいたんじゃない?」
「お前、本気で言ってるのか?」
「……? 至って真面目に聞いているけど? どう考えても、俺ではない感があるというか」
「はぁ……、口にするのは情けない話だけど、雨神は明らかに周りの奴らよりレベルが高い。そりゃー、噂ではヤバいとか、酷いとか聞くけどよ。少なくともエデンを真剣に取り組んでなければ、あんなに強くならねーだろ」
悔しさに満ちた表情。
自分のプライドを捨ててまで、同級生に頭を下げて頼み込むのは計り知れない屈辱がある。
俺もプレイスタイルは外道だが、ゲーム以外では基本的に普通の人間だ。
ここまで頭を下げられたら了承したくなる。
ただし、今の条件だと弟子にするには不十分。
何せメリットがない。
時間と労力の代わりに得られる物を提示してくれないと困る。
無償で施しをする慈善団体とは違うのだから、多少なりとも利益を求めるのは当たり前。
話を聞かずに突っ撥ねないだけ、優しさがあると言って良い。
「褒めてくれるのは嬉しいけどメリットは?」
「ある。これはどうしようもないくらい雨神に必須のメリット」
後藤が絶対的な自信を胸に答えた。
「この学校、エデンのことだけじゃなくて、高卒認定の為に普通の授業もやってるだろ? その時にペア活動があってもおかしくないじゃんか。だから、俺が絶対ペアになって一人にさせないと約束する!」
リアクションに困る提案だ。
ペア活動は確かに面倒だけど、結局は待っていれば教師が勝手に割り振る。
その時間を恥ずかしいと思う段階はとっくに過ぎているので、結論から言えば必要はない。
「今、俺達のパーティーには同学年どころかクラスの上位勢にすら張り合える実力者がいねぇ。だったら、俺がなるしかねぇーだろ! 頼む! 都合の良い話をしてるのも分かったんだ。その上で、俺を弟子にしてくれ」
実に滑稽で、無様で、愚直。
それでいて、格好良いとさえ思えた。
意地でも這い上がりたいと願う熱い気持ち。
嫌いじゃない。
変にスカしているのが格好良いとされる昨今、情熱的に生きるのは評価出来る。
「……良いよ、俺で良ければエデンについて教えてあげる」
「本当か!? ありがとう!」
了承した瞬間、分かりやすく表情が明るくなった後藤。
「ただし、条件がある」
「俺に出来ることだったら何でもする覚悟だ」
「一週間以内にランクの順位を500位上げること。その間は、当然出来る限りのコーチングする。もしも、一週間後までに上がってなければ、そこで弟子入りの話は無しにしよう」
「500位……。俺達のパーティーのランキングが32000位くらいだから……。……よしっ、気合い入れっか」
無理難題というレベルの条件ではない。
一週間の短い期間で、パーティーメンバーと合わせて稼働出来る時間、俺に指導してもらう時間、その両方をどれだけ捻出出来るかの勝負だと思って良い。
学校がある都合上、どちらも放課後行う必要がある。
入学したばかりの一週間を捨てるのは、中々勇気のいる選択だ。
交友関係の構築に勤しむ期間といっても過言ではない。
しかし、自身のスキルアップと天秤に掛けて後者を選んだ。
あくまでも本気で勇者へ。
その気持ちに応えてあげよう。
「んで、今日は何時から教えてくれんだ? 一週間なんてあっという間だぞ。この瞬間も無駄に出来ねーんだ」
鼻息を荒くして興奮気味に問いかけてくる。
その様子は必死そのもの。
「待って、待って。今日は流石に疲れたし、荷解きもあるでしょ? 約束の一週間はちゃんと明日からカウントするから、今日は無しにしよう」
「ん? あぁ、そうか。まぁ、雨神がそう言うなら仕方ないか。じゃあ、改めて明日からよろしくな師匠」
「師匠!? おっ、ちょっと待って!」
後藤は、静止も聞かずにどこかへと走り去って行った。
最後の師匠という呼び方を、学内でされてしまうのだけは何とかして避けたい。
色々と面倒なことになりそうだ。
連絡先も交換しなかったので、口止めする方法がない。
想像するだけで今から億劫になる。
明日も今日と同じく大変な一日になりそうだ。
ご覧いただきありがとうございました。
よければ評価、ブックマーク、いいねお願いいたします。めっちゃモチベーションに繋がりますのでどうか、どうか!!!




