011話 集う強者
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「ちょっと待って! ストップ!」
攻撃を続けていた魔法使いが、味方の銃使いへ視線を移してしまったのを雨神は見逃さない。
魔法を防いでいるバリアの横から、持っていた短剣を投げ付ける。
「勝手なことを! 火、壁成りて、……ぐっ、……しまった」
スキルを発動中だった魔法使いの足に突き刺さり、スキルがキャンセルされてしまう。
銃使いの動きを止めたくても、自分のHPの減りが早過ぎてそれどころではない。
「エマリー! こっちの回復をお願い!」
「津曲ちゃんはどうするデス?」
「雨神との近距離戦で勝てるはずがない! 見捨てよう!」
自衛の為に引いた位置で戦闘を見守っていた僧侶が、ようやく自分の出番だと言わんばかりに魔法使いへと近付く。
腕を鳴らして回復を始めようとした途端、背後からの攻撃に気付きバリアを発動する。
僧侶とは思えない反射神経で、バリアの展開には成功するも簡単に破られてしまいHPが半分削れてしまう。
背中に伝わるじんわりとした痛み。
複数箇所がダメージを受けたのを感じる。
姿の見えない攻撃に怯えながらも、優先すべきはHPの回復だとエリアヒールを発動させた。
追撃されることはなかったので、生存したものの安心は出来ない。
誰の攻撃か探る為に、先程の攻撃元を凝視する。
遠くからこちらに近付いて来る人影は、徐々に輪郭をあらわす。
三者三様の髪色。
クラスで放っていた圧倒的な人気。
雨神に次ぐ有名人達は、一目見ればそれが誰であるかを分からせる。
「おいおい、先に始まってんじゃねーかよ!」
「おっ、あまたん、はっけーん!」
「二人ともちゃんと手筈通りにね」
夏円パーティーの襲来。
本来であれば、協力して雨神を倒せると喜ぶべきなのだが、あの先制攻撃を思い出す。
狙われたのは確実に自分達だった。
ここから共闘出来るビジョンが全く思い浮かばない。
HPが最大まで回復したのを確認すると息を殺しながら、二人で少しずつ後退する。
戦士はダウン、銃使いも倒されるまで秒読み。
雨神がフリーになってしまう前に絶対脱出したい。
「三……、二……」
一は自分の心の中で数える。
このカウントダウンが何を意味するか、僧侶のエマリーには伝えなかった。
いちいち説明している暇はないし、他のクラスメイトに勘付かれても厄介だ。
三と二を口に出してカウントしただけで察してくれと願うばかり。
ゼロのタイミングで二人同時に走り出す。
草木に上手く身を隠せば、残った二組で睨み合いが発生して簡単には追って来れない。
安全に時間を稼げて、最終制限までの生存確率をグッと引き上げる。
(あと少し、あと少しで自分達の安全が確保される。頼むから届いてくれ……!)
「いたっ! いたたぁー! ダーリン、なんか変なのにぶつかった!」
「大丈夫? ハニー! これは、これは。どこの誰かな? ハニーにぶつかっておいて、謝罪も出来ない子は」
魔法使いが目の前に現れた少女とぶつかってしまい、その彼氏がよろけた彼女の肩を支える。
二人とも同じ白黒のツートンカラーの髪。
彼氏が黒で、彼女が白のカラーリングのスキン。
何より試合中でありながら、手を繋いだまま移動するいちゃつき具合。
黒崎と白井の白黒カップルもここへ合流する。
雨神に並ぶ実力者。
夏円パーティーと雨神、そして白黒カップルまでもが居合わせてしまえば勝ち目は薄い。
絶望の中、それでももがくように再度草木の奥へと走り出す。
「まだ謝罪を聞いていないけど、君はどこへ行くのかな?」
すれ違う瞬間、黒崎の蹴りが腹部に直撃。
そして、顔を掴まれ地面に押し付けられる。
土が顔に当たる感触が不快で堪らない。
不甲斐ない悔しさや屈辱をグッと抑え叫ぶ。
「逃げろ! エマリー!」
精一杯の抵抗で口にしたのは、エマリーだけでも逃げてくれと願うこと。
たったそれだけで良かった。
「エマ……リー?」
返ってこない返事。嫌な予感。
どうなっているのかを確認しようにも、顔を抑えられていて動かせない。
「君は見ない方が良い。君と同じパーティーの女の子は、ハニーが切り裂いた後だからね」
「嘘だ、嘘だ嘘だ」
「ナイストライ。次はきっと良い試合になるさ」
擬似体のせいで、涙も溢れ落ちない。
思い描いた華々しい高校生活の始まりは、同じ学年に生まれた化け物達の手によっていとも容易く打ち崩された。
ジワジワと減り続けるHP。
何も出来ずに最後を迎えた。
───
「これは結構、まずいことになったなー」
信号機組とあの強い二人組が同時に会した。
信号機組は大した問題じゃない。
職業編成を変えて、銃使い、魔法使い、戦士。
僧侶を捨てて、遠距離二枚構成を選んだらしい。
バトロワは、マップの中にある宝箱から回復アイテムなどが出る。
僧侶無しでも、十分長期戦へ挑めると判断したのだろう。
概ね、前回見た時と変わらない編成。
しかし、一人職業が変わればチームとしての動きは異なる。
その差に苦戦するはずだ。
「ねぇー、ダーリン。なんか雨神にジロジロ見られてるんだけど」
「仕方ないよ、ハニー。それくらい君が魅力的だからね」
こっちの職業は男が拳闘士、女が盗賊。
どちらもスピード重視の軽量系の前衛だ。
二人の連携力で相手に何もさせないまま倒し切る戦略かもしれない。
白黒のカップルは、俺の観察する視線をものともせずお構いなしにいちゃつく。
頬を人差し指でつついたり、恋人繋ぎをしてみたり、まるで他には誰もいないみたいに。
殺伐とした空間で起こる異様な光景を見て、俺も信号機組も言葉を失っている。
「何イチャコラしてんだ? ぶっ飛ばすぞ」
最初に耐えられなくなったのはアツトだった。
いつもより三割り増しで眉間に皺を寄せ、恐れることなく白黒のカップルに近付く。
「ねぇねぇ、ダーリン。なんか近付いてくるんですけど」
「おっと、ハニー。それは困ったね。僕がちゃんと対処するから安心してくれ」
黒スキンの男がアツトの前に立つ。
「僕のハニーに何か用かな?」
「お前らに文句があんだよ。試合中に変なことしてんじゃねーよ」
「変なこと? 君は想像力が豊かだね。仲睦まじい僕達を見て、興奮したのかい?」
身体が小刻みに震え出し、遂には怒りを抑え切れなくなったアツト。
かなり接近した距離で攻撃を仕掛ける。
合わせて、スズヤとヒメもスキルを発動。
身勝手なアツトを援護する方向に舵を切ったようだ。
攻撃範囲の広い水属性のアクアランスと、フルオートで弾の限り撃ち続ける銃。
目の前のアツトの攻撃も相手にしながら完全に防ぎ切れるのか。
自分の目で実力を把握する為、気配を消して傍観者に徹することにした。
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